石破の3000円公約は白米化、進次郎のコメ政策は空念仏

2025年08月30日 06:50
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東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

今年の新米が出回り始めた。

JAの提示した令和7年度産米の概算金は、例えば1等米60kgあたりで銘柄米のコシヒカリで2万5200円などと、軒並み昨年度の1.6倍以上になっている。

ちなみに、これだと5kgあたり2100円なので、消費者に届く頃には5000円以上、6000円台になんなんとしかねない勢いである。

〝(5キロで)3000円台にならなければならない〟(石破首相、5月21日党首討論)ーーーよく言ったもんだ。

ついでにいうなら、〝(3000円台にならなければ)責任をとっていかなければならない〟とも明言している。

溶け始めた自民党のなかでただひとり威勢のよかった進次郎コメ大臣もこの価格高騰にはうつてもない。進次郎くんのコメ政策も容赦なく溶けまくっている。

カルローズ

日米関税交渉のさなか、トランプ大統領は日本に米国産米をもっと買えとせまっている…

先日出張から帰ってきたら、うちにもカルローズ米がいらっしゃっていた。息子が安さに惹かれて買ってきたようである。

カルローズとはカリフォルニア・ローズのこと。福島県からの日系移民が品種改良して、乾燥したカリフォルニアの地の乾田でもうまい米ができるようになった。勤勉で粘り強い日系移民農家の賜である。國寶ローズがとりわけ有名。

このカルローズーーー食ってみると結構旨いではないか。。。

そこで思い出した。30有余年前、南ドイツの研究所に勤めていた頃に、オヤジが来独した。近所の韓国雑貨屋で普段は手が出せない高級米『國寶ローズ』を買って振る舞った。当時の日本はコメ鎖国であったので、オヤジは興味津々だった。一口食って「この米はうまいでっ!なんじゃこれ」と目を剥いた。

乾田でいってみれば粗雑に育てた米国米が、日本の水田で大事に田植えした米よりもむしろうまい…オヤジにはとてもショックだったようだ。米国米に負けた。

あやしいパールライス

パールライスといえばJAのフラッグシップ米である。

わたしは8月24日にちかくの東急ストア都立大学店で実にあやしいパールライスを購入した。この頃はちょうど九州四国の早場米(令和7年度新米)が店頭に並び始めていた。なにが怪しいかといえば、5kgが2980円と異様に安い。更に怪しいのは、国内産/複数原料米と記載があるだけで、産年の欄は記載なしの空欄である。

進次郎米は古古米や古古古米を逆手にとって妙なブランド化をおこなっていたが、この米は出処不明である。進次郎くんの前のコメ大臣のときに大量にJAに卸された古い米たちのミックスかと思われた。

さっそく興味津々炊いて食ってみた。結果は、まあまあ食えるがそうそう旨いものではない。

パールというには、ツヤ無し、味無し、香り無しである。さきのカルローズ米に明らかに劣るかの如き食味であった。

パールライス < カリフォルニアローズライス

勝負あったり!

JAが悪いわけではない。ましてや東急ストアが悪いわけでもさらさらない。コメ政策が悪いのである。パール(真珠)というブランドイメージの失墜とまではいわないが、なんだか寂しい。打ち負かされたような侘しさを感じた。

パールライス

東京ローズ

第二次世界大戦中、日本から米軍に向けたプロパガンダ放送(ラジオ)があった。そのプロパガンダ(謀略)放送は「ゼロ・アワー」という番組名だった。このゼロ・アワーの女性アナウンサーにつけられたニックネームが〝東京ローズ〟だった。

東京ローズは7人いたとされている。この番組は東京ローズのMCも活きてミッドウエー海戦のころから沖縄戦にかけて、米兵とくに若い兵士に人気があったという。

東京ローズのひとりであるアイバ・戸栗・ダキノさん(GHQの取調べ中)
Wikipediaより

東京ローズをめぐる歴史の奇譚

東京大空襲(1945年3月9日[東京時間]夜)で実際にB29の爆撃兵団を率いたのがトーマス・S・パワーという准将だった。東京大空襲の前夜8日に各機の機長と無線士が招集されたブリーフィングにおいて、パワーは次のように宣告したという。

「作戦中、無線士は敵軍のプロパガンダ放送に周波数を合わせておくように。明日の夜はタイトルに、煙(smoke)または炎(fire)という言葉が入った曲が流れ続けるはずである。これは日本が迎撃してこず安全に爆撃を遂行できるという暗号である」

そして9日の夜、謀略放送ゼロ・アワーでは、〝Smoke Gets in Your Eyes(煙が目に染みる)〟や〝I Don’t Want to Set World on Fire(世界を火に包まないで)〟などの曲が東京ローズのMCの間に流されたという。どちらの曲も非常にゆったりとしたバラードである。

その後8月の原爆投下にあっても、同様のことがあったとも。

この経緯をいったいどう捉えればいいのだろうか…日本のプロパガンダ放送と米軍はツーツーだった!? プロパガンダ放送局はNHK内にあった。

東京大空襲では、徹底的な爆撃で東京の下町は焼け野原になり工場も焼き尽くされ重機などの金属類はとろとろに溶けたーーーその遺物が墨田の公園の片隅に遺っている。

日米関税交渉。

担当大臣はまたしても渡米したという。まるで頻繁足繁く通う朝貢外交のようである。コメに限らず、またしても日本は米国に打ち負かされ徹底的に溶かされるのであろうか。

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東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

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