パニック?外国メディアの誇張した福島事故報道(中)

2013年12月24日 13:30
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ジャーナリスト・ノンフィクション作家(米ワシントン・ポスト紙 元東京特派員)

12月3日放送の言論アリーナ「米国ジャーナリストの見る福島、原発事故対策」に、出演した米国のジャーナリスト、ポール・ブルースタイン氏が、番組中で使った資料を紹介する。(全3回)

)より続く。

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こうした批判を、かつて同じ職業であったジャーナリストに向けることは、私にとって心苦しいものである。

私の経歴の中で、もっとも印象に残ったのは、東京を拠点にしたワシントンポストでの1990年代の5年に渡る特派員活動であった。当時の日本の金融危機をめぐる広範囲な問題を報道する中で、複雑かつ、急速に拡大する災害を報道することが難しいことを知っている。

1995年の阪神大震災を報道する時に、私たち特派員は「補給」問題に直面した。そして東北の自身は、もっと大変であろうことは疑いない。

また私は、津波によって引き起こされた惨状において、印象的な多くの物語があることを知った。

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27年におよぶ主要な新聞での活動で、福島事故のような状況に陥った時に、間違った状況に導かれやすい競争によるプレッシャーがあることも、理解している。

▼ 編集者は、衝撃性を持った話しをつくることを、記者に強く駆り立ててしまう。
▼ 記者は、経歴や報酬に影響を与える、編集者を失望させたくないと常に考える。
▼ 他のメディアでショッキングな報道がされると、記者も編集者も、それに見合う報道をしようとプレッシャーを感じてしまう。
▼ ジャーナリストは大きな誤りを避けたいと思う。しかし同時に、第一面に、放送ならトップニュースに、ウェブサイトならホームページのトップに、自分の記事を掲載したいと願う。

こうした要素が重なることで、外国メディアの報道が、福島原発事故のような状況では、適切さを欠いたと、私は考えている。

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同時に、東北の津波災害の結果、悲劇的な出来事を私たちは目撃した。人々は弔いをし、家を失い、凍え、愛する人を探していた。原子力災害のが、人々に恐怖やストレスを与えたとしても、こうした人々の苦しみを増やすべきことにはならない。

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そこで私は、ワシントンポストに2011年3月18日に、「なぜ私は日本から離れないのか」
Why I’m not fleeing Japan
という記事を寄稿した。日本は、震災が起こっても、原子力発電所の非常に近く意外はとても安全な国である。しかし放射能をめぐるヒステリーが物質的、経済的な損害を生みかねないと指摘した。

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ところが事故からほぼ1年が経過した2012年の2月27日、ニューヨーク・タイムズの一面に次の記事が掲載された。同社の東京支局長の記事だ。

「原子力危機で東京からの避難を検討–日本政府」

「福島第一原発事故で、日本政府は最悪のシナリオに基づき、日本政府首脳は東京からの全面避難の可能性について検討していた」と記事は報じた。日本再生機構の福島事故独立調査委員会の調査で明らかになったとしている。

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ニューヨーク・タイムズ2012年2月27日報道の引用。

枝野氏(当時内閣官房長官)は語る。「福島第2原発、東海原発を制御できなくなれば、東京がなくなるということだった」。

このニューヨーク・タイムズの記事は、私のように東京近郊に住んでいた人にとって、奇妙なものだった。

「悪魔の連鎖」という枝野氏が使った言葉は、すばやく世界中に広がった。NYタイムズに加え、ウォール・ストリート・ジャーナル、オーストラリアン、ロイター、ロサンゼルスタイムズ、ナショナルポスト(カナダ)などが報道した。

これは科学に基づいたシナリオではなく、単に枝野氏の抱いた、恐怖感に基づいた考えだ。
私のように首都圏にいた人間が、大きなリスクに直面したと、この記事は示している。しかし、この記事の主張することはかなり奇妙なものだ。これは東京が放射線に大量に放出され、連鎖災害に直面したことを意味するが、そのようなことはなかった。

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東京からの避難が検討されたという報道の2週間ほど後に、米国の外交専門誌「フォーリン・アフェアズ・2012年3月号」に「福島事故でのホワイトハウスの内幕」という記事が掲載された。筆者は事故当時に、米国の国家安全保障会議の東アジア部の上級担当官だったジェフリー・バーダーだ。

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この記事は東京が危機に直面しているかという政権から問いに、どのような対応が行われたかを書いてある。

記事によればポイントは以下の通りだ。

▼ 3・11以降一週間経過し、米軍、特に海軍から、横須賀海軍基地、横田空軍基地に、人体に悪影響がある高線量の放射線が到達する可能性があるとして、米国人の退避を求める勧告があった。
▼ オバマ政権内では、激しい議論があった。外交官らはアメリカ人の退避、特に軍人の退避が国家安全保障に影響をもたらすことを怖れた。
▼ 大きな問題は、放射線の線量が、米国政府の基準を上回るかどうかだった。そのため、政府の環境委員会が招集された。
▼ オバマ政権の主席科学顧問であるジョン・ホールデン博士が軍の使っている測定モデルに疑問を示した。彼は最悪の状況を想定でき、それが軍基地内において米国の放射線安全基準を超過するかを検証する、もっと適切な方法を検討するべきだと述べた。

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記事の結論は、東京はリスクにさらされていないというものだった。

同記事引用「国立ローレンスリバモア研究所(GEPR編集部注、米国の原子力の研究所)との作業で、ホールデン博士はいくつかのモデルをつくり、いくつかの起こりえる「最悪のシナリオ」を検証した。その結果が示したことは、EPA(米国環境保護庁)の設定する放射性安全基準を上回るほどの放射性物質が、東京から75マイルから100マイルに届く可能性はほとんどない。つまり東京、横須賀、横田の空間放射線量は危険な状況にはならないだろうということだ。」

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フォーリン・アフェアズに掲載された情報は東京が危険に直面したという話とは対照的だ。こうした2つの情報をどのように扱うべきだったか。

例えばニューヨーク・タイムズは、第一面に書くべきだったか。

科学面に書くべきだったか。

ビジネス面に書くべきだったか。

私の考えでは、答えはこの中にはない。ニューヨーク・タイムズにはバーダーの記事の情報「最悪のシナリオでもたいしたことはない」という情報を掲載しなかった。他のメディアでも、同じ状況になっていた。例外的に地方紙に記事を配信する日本の共同通信がこの情報を伝えていた。

「悪魔の連鎖」という言葉に過剰に反応したことに比べて、この重要な情報を意図的に黙殺したことは明らかなメディアの偏向の証明であろう。

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アメリカ政府が自らの分析は、政府が他所から受けた情報より役に立つものだった。

私はこの問題について記事を書く際に、疑問を解決した。重要なやくホールデンの補佐官だった、スティーブ・フェッター氏にインタビューをした。

国立大気汚染調査センター(National Atmospheric Release Advisory Center(NARAC))は危険な大気汚染物質の影響を調査するために、気象パターンや地形について、最新の手法による計測を行う。

また私は、情報公開法に基づき、行政府のメモ、メールなどの文章を精査した。

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私はまた日本政府のつくったワーストケース・シナリオ「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」を調べた。

日本の原子力委員会委員長の近藤俊介博士の支持で作られた素描である。このシナリオはメディアが大きく伝えられており、東京からの避難が起こったかもしれない根拠とされている。

しかし私の調べた限り、近藤先生のシナリオはそのようなことは言っていない。その経緯は複雑なので、これはスレート誌の記事「Fukushima’s Worst-Case Scenarios」を参照いただきたい。

ともかくこのシナリオは、ローレンスリバモア研究所が示したような、詳細に検討されたものではなかった。

(下)に続く。2014年1月14日掲載予定。

(2012年12月24日)

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ジャーナリスト・ノンフィクション作家(米ワシントン・ポスト紙 元東京特派員)

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