大外れだった2020年の地球温暖化予測集
「2020年までに地球温暖化で甚大な悪影響が起きる」とした不吉な予測は多くなされたが、大外れだらけだった。以下、米国でトランプ政権に仕えたスティーブ・ミロイが集めたランキング(平易な解説はこちら。但し、いずれも英文)から、幾つか紹介しよう。
念のため書いておくと、過去の不吉な予測が外れたからといって、未来の予測も外れるとは限らない。けれども、莫大な経済負担を伴う温暖化対策をするというなら、予測を鵜呑みにするのではなく、よくよくその信憑性を確認した方がよい。
なお以下の全ての情報について、原文では詳細に引用元へのリンクを張ってあるので、ご自分で内容を確認されたい方は、そちらを参照願いたい。
1 地球温暖化が3度に達する
1987年、カナダの新聞スターフェニックスは、NASAのハンセンを取材し、「2020年までに、地球の平均気温が約3度上昇する」と書いた。
しかし、アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、実際の気温上昇は0.5度程度だった。
2 CO2濃度が倍増する
1978年、 カナダの新聞バンクーバーサンは、学術誌「サイエンス」に掲載されたワシントン大学のスツーバーの論文を引用し、大気中のCO2濃度は2020年までに2倍になる、とした。
しかしアメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、実際の濃度上昇は23%に過ぎなかった。
3 キリマンジャロから雪が消える
2001年、カナダの新聞バンクーバーサンは、「キリマンジャロの雪は2020年までに消滅する」と書いた。オハイオ州立大学の地質学者であるロニー・トンプソンは、「これはおそらく控えめな見積もりだ」と述べた。アル・ゴアの2006年のドキュメンタリー 『不都合な真実』でも、2020年にはキリマンジャロには雪が降らない、とした。
しかし、いまでもキリマンジャロに雪はある。タイムズはこれを2020年2月に報道している。
4 海面上昇が60センチに達する
1986年、「米国環境保護庁のタイタスは、フロリダ周辺の海面が2020年までに60センチ上昇すると予測している」、と米国紙マイアミヘラルドは書いた。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、実際の海面は9センチだった。
5 イギリスから雪が消える
2000年、イギリスのイースト・アングリア大学の気候研究ユニットの上席研究科学者ヴァイナーは、「英国では降雪は非常に稀になり、子供たちは雪が何であるかをバーチャルでしか知らなくなる」「20年後には英国人は雪に不慣れになり、ひとたび雪が降ると大混乱になる」と述べた旨、英国紙インディペンデントは報じた。
だが今でも雪は降っているし珍しくもない。スコットランドでは幾つかの箇所で2020年12月初旬までに約10センチの雪が降った。除雪車は毎年活躍している。
6 太平洋諸島の経済が破綻する
2000年10月、グリーンピースの報告は、地球温暖化が「今後20年間で少なくとも13の太平洋小島嶼国で大規模な経済的衰退を引き起こす可能性がある」と予測した、とオーストラリア紙The Ageが報じた。同記事では「地球温暖化は太平洋のサンゴ礁のほとんどを荒廃させ、小さな太平洋諸国の観光産業と漁業を壊滅させる」「中でも最も脆弱な太平洋諸国はツバルとキリバス」と書かれた。
だが2019年、ツバルは前例のない6年連続の経済成長を享受した。キリバスも過去5年間、健全なGDP成長を遂げた。何れも漁業権収入が重要な経済の柱だった。
7 氷河が消える
2009年3月、ロサンゼルスタイムズは、「米国地質調査所のファグレがモンタナ州のグレイシャー国立公園の氷河は2020年までに消滅すると予測」したと報じた。
2010年になると、グレイシャー国立公園では、「この氷河は2020年までに無くなります」という看板が立てられた。
2020年になっても氷河は存在していた。撤去されたのは看板の方だった。
関連記事
-
英国のリシ・スナク首相が英国の脱炭素政策(ネットゼロという)には誤りがあったので方針を転換すると演説して反響を呼んでいる。 日本国内の報道では、ガソリン自動車・ディーゼル車などの内燃機関自動車の販売禁止期限を2030年か
-
実は、この事前承認条項は、旧日米原子力協定(1988年まで存続)にもあったものだ。そして、この条項のため、36年前の1977年夏、日米では「原子力戦争」と言われるほどの激しい外交交渉が行われたのである。
-
福島における原発事故の発生以来、世界中で原発の是非についての議論が盛んになっている。その中で、実は「原発と金融セクターとの関係性」についても活発に議論がなされているのだが、我が国では紹介される機会は少ない。
-
スマートジャパン 3月3日記事。原子力発電によって生まれる高レベルの放射性廃棄物は数万年かけてリスクを低減させなくてならない。現在のところ地下300メートルよりも深い地層の中に閉じ込める方法が有力で、日本でも候補地の選定に向けた作業が進んでいる。要件と基準は固まってきたが、最終決定は20年以上も先になる。
-
キマイラ大学 もしかするとそういう名称になるかもしれない。しかしそれだけはやめといたほうが良いと思ってきた。東京科学大学のことである。東京工業医科歯科大学の方がよほどマシではないか。 そもそもが生い立ちの異なる大学を無理
-
脱原発が叫ばれます。福島の原発事故を受けて、原子力発電を新しいエネルギー源に転換することについて、大半の日本国民は同意しています。しかし、その実現可能な道のりを考え、具体的な行動に移さなければ、机上の空論になります。東北芸術工科大学教授で建築家の竹内昌義さんに、「エコハウスの広がりが「脱原発」への第一歩」を寄稿いただきました。竹内さんは、日本では家の断熱効率をこれまで深く考えてこなかったと指摘しています。ヨーロッパ並みの効率を使うことで、エネルギーをより少なく使う社会に変える必要があると、主張しています。
-
早野睦彦 (GEPR編集部より)GEPRはさまざまな立場の意見を集めています。もんじゅを肯定的に見る意見ですが、参考として掲載します。 高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市) (本文) もんじゅの存在意義の問いかけ 「政府
-
本年1月に発表された「2030年に向けたエネルギー気候変動政策パッケージ案パッケージ案」について考えるには、昨年3月に発表された「2030年のエネルギー・気候変動政策に関するグリーンペーパー」まで遡る必要がある。これは2030年に向けたパッケージの方向性を決めるためのコンサルテーションペーパーであるが、そこで提起された問題に欧州の抱えるジレンマがすでに反映されているからである。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間