環境金融の大司教、マーク・カーニーが改宗して化石燃料を推進する
前回紹介したビル・ゲイツ氏の変節は日本国内でもよく知られています。他方、実はゲイツ氏よりも世界中の産業界における脱炭素・ESG推進に対して多大な影響を及ぼしてきた代表格である人物も変節したのでご紹介します。

マーク・カーニー加首相
公式HPより
カナダのマーク・カーニー首相です。
Mark Carney’s Shift From Climate-Change Warrior to Fossil-Fuel Cheerleader
3月に就任して以来、カーニーは前任者のジャスティン・トルドーが導入した多くの環境政策を廃止した。不評だった消費者向け炭素税を廃止し、2035年までの電気自動車義務化を一時停止し、石油パイプラインなどのインフラプロジェクトに関する環境規制を内閣が覆す権限を与える法律を制定した。
(中略)
世界第4位の石油輸出国、第5位の天然ガス輸出国であるカナダは、化石燃料への依存をさらに強め、トランプ大統領の関税戦争による経済的打撃を相殺するため、高額な気候変動対策を撤回している。
(中略)
カナダは炭素排出削減の公約を後退させている。非営利団体カナダ気候研究所によれば、同国は2030年までに排出量を2005年比40%削減するという目標をほぼ確実に達成できない見込みだ。これにより、2050年までにネットゼロ排出を達成するというカナダの国際公約が危ぶまれる状況となっている。
(中略)
イングランド銀行総裁在任中、カーニーは気候変動対策の世界的な顔となった。彼は、地球温暖化の長期的な脅威に対する対策を講じる代わりに、短期的な考え方に固執する政府や企業のリーダーたちを厳しく非難した。彼は後に国連気候変動特使となり、ネットゼロ達成のためのグラスゴー金融連合(GFANZ)を共同設立した。これは銀行、投資家、保険会社からなる連合体で、融資や投資の決定において炭素排出量を考慮することを約束した。しかしこの連合は、金融機関によってその後ほぼ放棄されている。
マーク・カーニー現カナダ首相は、日本企業の脱炭素政策に対して直接・間接を問わず多大な影響を与えてきたあのGFANZ(筆者がたびたび指摘している気候カルテルのひとつ)の設立者なのです。
ネスレが気候カルテルを離脱:米国から欧州へと広まる気候カルテル崩壊
2024年6月に米国下院司法委員会がGFANZ、NZBAなど金融機関による脱炭素連合を「気候カルテル」「独禁法違反」と指摘して以来、わずか1年でほとんどの組織が瓦解しました。
この方、とても不思議な経歴の持ち主です。日本語Wikipediaによれば、ゴールドマンサックスから2003年にカナダ中央銀行の副総裁となり(たぶん38歳!)、2004年にカナダ財務省の上級副大臣に就任しています。
続いて第8代カナダ銀行総裁(2008年2月1日~2013年6月30日)、第120代イングランド銀行総裁(2013年7月1日~2020年3月15日)を歴任したそうです。この時、カナダ銀行総裁の任期を2年残して退任し、なんと翌日に300年の歴史を持つイングランド銀行史上初の外国人総裁となっています。その後、2025年3月14日からカナダ首相です。すさまじいエリート…。
Geminiに聞いてみたところ、各国中央銀行の総裁はその国の国籍を持つ人が務めるのが一般的であり、外国人総裁はほとんど例がないそうです。
また、氏の英語Wikipediaによれば、国連気候変動対策特使だった2020年9月、ボランタリー炭素クレジット市場の信頼性向上を目的とした「Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Markets(TS-VCM)」を設立しました。
TS-VCMは2021年秋に活動を終了し、現在の「Integrity Council for the Voluntary Carbon Markets(IC-VCM)」へと引き継がれています。このIC-VCMも筆者が以前からグリーンウォッシュだと指摘しているイニシアチブです。
Gemini:具体的には、国際的なイニシアチブである IC-VCM (Integrity Council for the Voluntary Carbon Market) が策定した Core Carbon Principles (CCPs) が、高品質クレジットの要件を明確にしています。これは、ボランタリーカーボン市場の信頼性を高めることを目的としています。
(中略)
筆者:IC-VCMのCCPsは理想論であって非現実的ですね。高品質炭素クレジットが詐欺だったとして逮捕者が出る事例が後を絶ちません。
(中略)
Gemini: IC-VCMのCCPsが掲げる理想と、現在の炭素クレジット市場の厳しい現実との間に大きな乖離があること、そして高品質と謳われながらも問題が多発している現状について、深く共感いたします。高品質クレジットに関する詐欺や問題事例は、炭素クレジット市場の信頼性を大きく揺るがす深刻な問題であり、CCPsのような理想論がなぜ「非現実的」に見えるのかを裏付けています。
そして2021年11月にグラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、カーニー氏は「ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟(Glasgow Financial Alliance for Net Zero、GFANZ)」を立ち上げました。
GFANZの傘下組織としてつくられたNZBA、NZAMIなどにこぞって日本の金融機関が参画し、融資先である日本企業にもネットゼロが強制されたのです。その後、2024年6月に米国から気候カルテルと指定され2025年11月現在多くの組織が壊滅しました。
国際金融資本において観念的なESG投資、気候ファイナンス、サステナビリティを布教してきた大司教のような人物が、一国の首相になるや国内の産業界、そして国民生活のために炭素税、EV化、化石燃料規制といったグリーン政策をすべて撤回し化石燃料推進に転換したのです。
ビル・ゲイツ氏、マーク・カーニー氏から直接・間接を問わず多大な影響を受けてネットゼロに取り組まされてきた日本政府や産業界も現実路線に転換すべきタイミングが来ているのではないでしょうか。
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