米国の温暖化関連情報を正確に知るために必要なこと

2021年03月01日 14:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

地球温暖化は米国では党派問題である。民主党支持者は「気候危機だ、今すぐ大規模な対策が必要」とするが、共和党支持者は「たいした脅威ではなく、極端な対策は不要」とする。このことは以前述べた。

さて米国では大手メディアも党派で分断されている。民主党側はCNNテレビやニューヨークタイムズなどで、共和党側はFOX Newsテレビ、ウォール・ストリート・ジャーナルなどだ。

ここで困るのは、日本のメディアで米国情報というと、大抵は、民主党側のメディアの二番煎じになっていることだ。

belterz/iStock

けれどもこれは、本当に正確な情報なのだろうか?

メディアが正確に情報を伝えているかどうか、ギャラップがアンケート調査をした。

その結果、民主党支持者では、

  •  大手メディアは概ね正確だが、FOX Newsとブライトバートは不正確

となった(図1)。 図中では、メディアごとに、「正確」と答えた人の割合から、「不正確」と答えた人の割合を引いて、パーセントで表している。青は「正確」と答えた人が多いという意味で、赤は「不正確」と答えた人が多いという意味である。

 

図1 民主党支持者の回答

他方で、共和党支持者に同じ質問をすると、

  •  FOX Newsは正確。ウォールストリートジャーナルとブライトバートもまあ正確。その他の大手メディアはみな不正確で、特にCNNが最悪。

という結果になった(図2)。

このように、共和党と民主党で、大手メディアに対する評価が全く逆転することが分かる。

図2 共和党支持者の回答

さて以上はアンケートの結果に過ぎないので、本当の所どれが正確な情報なのかは、これだけでは何とも言えない。

けれどもはっきりしていることは、米国の意見のバランスを知りたければ、CNNなどの民主党側のメディアだけでなく、Fox News、ウォールストリートジャーナル、ブライトバートなどの共和党側のメディアからも情報を取る必要がある、ということだ。

筆者の感覚では、こと温暖化の科学に関しては、ブライトバート等の共和党系のメディアの方が、観測事実に基づいて正確に情報を伝えている。これに対して、民主党系のメディアは、(NHKなどの日本のメディアもそうだが)「災害が激甚化」など観測データに反することを報道し、いたずらに「気候危機」を煽る傾向にあり、科学的には不正確なものが多い。

ぜひ共和党側のメディアからも情報を得るようにしよう。

「地球温暖化のファクトフルネス」 電子版:99円 印刷版:2228円

image.png

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • ドイツでは各政党にシンボルカラーがあり、昨年11月までの政府は、社民党=赤、自民党=黄、緑の党=緑の三党連立だったので、「アンペル(信号)」と呼ばれた。しかし、今は黄色が抜けて、「レッド・グリーン(rot/grün)」政
  • 2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、様々な面で世界を一変させる衝撃をもたらしているが、その中の一つに、気候変動対策の世界的な取り組みを規定するパリ協定への悪影響への懸念がある。 人類が抱える長期の課題である
  • 昨年夏からこの春にかけて、IPCCの第6次報告が出そろった(第1部会:気候の科学、第2部会:環境影響、第3部会:排出削減)。 何度かに分けて、気になった論点をまとめていこう。 今回は、環境影響(impact)を取り扱って
  • 関西電力をめぐる事件の最大の謎は、問題の森山栄治元助役に関電の経営陣が頭が上がらなかったのはなぜかということだ。彼が高浜町役場を定年退職したのは1987年。それから30年たっても、金品を拒否できないというのは異常である。
  • 経済産業省で11月18日に再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会(以下単に「委員会」)が開催された。 同委員会では例によってポストFITの制度のあり方について幅広い論点が議論されたわけだが、今回は実務に大きな影響を
  • GEPRを運営するアゴラ研究所は映像コンテンツ「アゴラチャンネル」を放送しています。5月17日には国際エネルギー機関(IEA)の前事務局長であった田中伸男氏を招き、池田信夫所長と「エネルギー政策、転換を今こそ--シェール革命が日本を救う?」をテーマにした対談を放送しました。
  • 2015年2月3日に、福島県伊達市霊山町のりょうぜん里山がっこうにて、第2回地域シンポジウム「」を開催したのでこの詳細を報告する。その前に第2回地域シンポジウムに対して頂いた率直な意見の例である。『食べる楽しみや、郷土の食文化を失ってしまった地元民の悲しみや憤りは察してあまりある。しかし、その気持ちにつけこんで、わざわざシンポジウムで、子供に汚染食品を食べるように仕向ける意図は何なのか?』
  • 先週、3年半ぶりに福島第一原発を視察した。以前、視察したときは、まだ膨大な地下水を処理するのに精一杯で、作業員もピリピリした感じだったが、今回はほとんどの作業員が防護服をつけないで作業しており、雰囲気も明るくなっていた。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑