新型コロナ「第3波」は来たのか
久しぶりにマスコミが、コロナで活気づいている。「新規感染者数が初めて2000人を超えて第3波が来た」とか「東京都で初めて500人を超えた」と騒いでいるが、これは正確にいうとPCR検査の新規陽性者数で、サンプルが一定でないと統計的な意味がない。
図1は厚労省の発表を東洋経済がGitHubで共有したデータだが、6月から始まった陽性者数の「第2波」は、PCR検査人数が増えたことが最大の原因だろう。PCR検査のCt値の設定が40ときびしくなったことも、陽性が多く出た原因といわれる。あまり厳格に設定すると、ウイルスの死骸を陽性として検出する結果になる。
感染の実態を正確に示すのは、新規死者数のデータである。これでみると7月にほぼゼロになった死者が、8月から増えた。これは7月22日に始まったGoToトラベルで、大都市から地方に感染が拡大したことが一つの原因と思われる。とはいえ死者は毎日10人程度。人口100万人あたり0.08人で、図2のように先進国では群を抜いて少ない。
他方でヨーロッパの死者数は4月のピークを超え、図3のように毎日4180人。明らかに「第2波」が来ている。死亡率10人以上の国は東欧に片寄っており、秋からヨーロッパで起こっている感染爆発は、ウイルスが夏に変異したためともいわれている。
このようにヨーロッパのコロナ死者は危機的だが、日本の死亡率はそれより2桁少なく、今のところ警戒すべき水準とは思われない。東アジアの死亡率もほとんど0.1人以下なので、これは医療や生活習慣といった後天的な要因ではなく、自然免疫などの「ファクターX」があるものと思われる。
検査陽性者数のピークと死者のピークは図1のように2週間ぐらいずれるので、これから12月にかけて死者が増えるおそれがあるが、それでも死者は累計で約2000人。毎年3000人~1万人死ぬインフルエンザよりましだ。
インフルでは「感染者数」という統計はとったことがないが、患者数は毎年1000万人以上とコロナ(12万人)よりはるかに多い。コロナ系の流行する年はインフルが流行しないといわれ、今のところ患者は100人あまりだ。
今後、日本で注意が必要なのは輸入感染である。4月のピークの原因もヨーロッパからの輸入感染だと思われ、これは入国禁止で止まった。今後もヨーロッパからの入国者の検疫は厳格にやるべきだが、国内の自粛強化は必要ないだろう。
【追記】毎日新聞の記事のグラフでは左軸に新規陽性者数をとり、右軸に累計重症者数をとって、あたかも陽性者数と重症者数がパラレルに動いているようにみせているが、きのうの新規重症者数は4人。累計では280人だが、ベッドは東京都だけでも2600以上あいている。「感染拡大で医療体制が逼迫しつつある」というのは誤報である。
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