今週のアップデート — 米国のエネルギー独立の可能性(2013年5月27日)
今週のアップデート
世界のエネルギーの変革を起こしているシェールガス革命。その中で重要なのがアメリカのガスとオイルの生産が増加し、アメリカのエネルギー輸入が減ると予想されている点です。GEPRもその情報を伝えてきました。「エネルギー独立」は米国の政治で繰り返された目標ですが、達成の期待が高まります。
しかしエネルギーコンサルタントの小野章昌さんはそれに疑問を示します。各種統計によれば、増産が進んでいないとのことです。
何が正しいかは不明ですが、この情報を踏まえ、さまざまな可能性を見極めながら、シェールガス革命の行く末を観察すべきでしょう。
偉大な英国の首相のマーガレット・サッチャーさんが亡くなりました。英国では気候変動への対策が政治の重要な争点です。サッチャーさんは、世界で最初に気候変動問題、オゾン層破壊問題に警鐘を鳴らしました。しかし晩年は、費用と効果の見えない欧州の気候変動問題への対策に懐疑的であったようです。日本貿易振興機構ロンドン事務所長で経産省の気候変動交渉の担当の長かった、有馬純さんの寄稿です。提携する国際環境経済研究所(IEEI)のサイトからの転載です。
今週のリンク
産経新聞5月25日記事。日本原子力開発機構の実験施設で放射能漏れ事故が起こりました。被ばくは健康に影響がない程度ですが、報告が遅れました。同機構は高速増殖炉もんじゅの点検漏れが起こり、鈴木篤之理事長が引責辞任したばかりです。組織の弛緩が調査されるべきでしょう。
日本経済新聞5月24日記事。日本原電の発表した2013年3月期決算では、営業利益が前期比89.5%減の9億円でした。保有する原子力発電所全てが停止中で発電量はゼロだが、販売先の電力会社から受け取る「基本料金」で収益を確保しました。しかし敦賀原発2号機の下に活断層があると原子力規制委員会が認定。同社の経営の先行きに不透明感が増しています。
3) 日本における再生可能エネルギー普及制度による追加費用及び買取総額の推計
電力中央研究所研究報告。日本の再生可能エネルギーの支援についての総額の推計です。買取制度に加えて、既存の制度もまだ残っているために、2012年度の追加費用は巨額になったとの見込みとの試算です。国民の電力料金負担が増えました。政策の検証が経産省では行われていません。
4) 原子力協定「進展を期待」 あす訪日、インド首相会見 電力不足、日本の技術に魅力
朝日新聞5月26日記事。インドがエネルギー分野での日本との協力を検討しているという記事です。日本のエネルギー体制が混乱し、ビジネスの先行きが見えない中で、期待を抱かせる動きです。また原子力協定は原子力の技術協力をうながすものです。インドの核武装強化の懸念があり、慎重な対応が必要でしょう。
ニューヨークタイムズ5月22日記事。元原稿は「Iran Is Seen Advancing Nuclear Bid」。IAEAの査察官、米国当局への取材です。内容のポイントは、原爆の材料の濃縮機器の設置は進むものの、まだウランの量産、そして核兵器の大量配備には至っていないというものです。イランの核問題は戦争に発展して、日本のエネルギー供給を止めてしまうかもしれません。
関連記事
-
政府は電力改革、並びに温暖化対策の一環として、電力小売事業者に対して2030年の電力非化石化率44%という目標を設定している。これに対応するため、政府は電力小売り事業者が「非化石価値取引市場」から非化石電源証書(原子力、
-
東日本大震災とそれに伴う福島の原発事故の後で、日本ではスマートグリッド、またこれを実現するスマートメーターへの関心が高まっている。この現状を分析し、私見をまとめてみる。
-
2025年4月28日にスペインで発生した大規模停電は、再生可能エネルギーの急速な導入がもたらすリスクを象徴する出来事であった。太陽光や風力などの直流発電からインバーターを介して交流に変換する電源の比率が高まる中、電力系統
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 前回の論点⑳に続いて「政策決定者向け要約」の続き。前回と
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。 1)ウランは充分あるか? エネルギー・コンサルタントの小野章昌氏の論考です。現在、ウランの可能利用量について、さまざまな議論が出て
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 北極振動によって日本に異常気象が発生することはよく知られ
-
西浦モデルの想定にもとづいた緊急事態宣言はほとんど効果がなかったが、その経済的コストは膨大だった、というと「ワーストケース・シナリオとしては42万人死ぬ西浦モデルは必要だった」という人が多い。特に医師が、そういう反論をし
-
温暖化問題は米国では党派問題で、国の半分を占める共和党は温暖化対策を支持しない。これは以前からそうだったが、バイデン新政権が誕生したいま、ますます民主党との隔絶が際立っている。 Ekaterina_Simonova/iS
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















