ジャニーズ問題と脱炭素の共通点

2023年09月21日 06:50

Maks_Lab/iStock

なんとなく知っていたり噂はあったけど、ファンもメディアもスポンサー企業も皆が見ないふりをしていたことでここまで被害が拡大してしまったという構図が、昨今の脱炭素や太陽光発電などを取り巻く状況とよく似ています。

産業界でも担当者レベルで話してみると、日本がCO2排出量をゼロにしても世界全体で3%しかないのに意味があるのか、この10年で停電のリスクが増えていないか、太陽光パネルは強制労働の疑いがあるらしい、米国では輸入禁止になったらしい、山や森林を切り崩して環境を破壊している、土砂災害や土壌汚染につながっていないか、といったあたりを気にしている人が結構おられます。

でも・・・、国が言っているし自治体が言っているし経団連が言っているし会社の方針だし他社が取り組んでいるしメディアが言っているし取引先や金融機関から言われるし・・・ということで黙っている。不都合な部分は見ないふりをしている。

構図としてはそっくりです。

さて、ジャニーズ問題に対する産業界や企業側の対応に関する報道を一部抜粋します。

同友会・新浪氏、ジャニーズは「真摯に反省か疑問」

経済同友会の新浪剛史代表幹事は12日の定例記者会見で、ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川元社長による性加害問題に関連し、同事務所の対応を「真摯に反省しているのか大いに疑問だ」と批判した。企業が広告起用を見直す動きについて「毅然とした態度を示す必要がある」と述べた。

新浪氏が社長を務めるサントリーホールディングスは、同事務所と新たな契約を結ばない方針だ。

アサヒ社長「ジャニーズ起用継続は人権侵害」 問われるTV局の対応

勝木社長は「マーケティングに影響がないとはいえないが、代替策を考える。人権を損なってまで必要な売り上げは1円たりともありません」とはっきりと言っています。

【独自】《ジャニーズCM打ち切り問題》元ネスレ社長独占告白! 看板商品のCMに退所後の香取慎吾さんを起用…「タレントには罪がない」という理由

ジャニー氏の性癖については、単なる噂とはいえ昔から耳にしていました。グローバルの常識では、噂の段階でもNGです。

“今回の件について「(ジャニー氏の)性加害が本当かどうかわからなかったので起用していました」と弁明している企業もありますが、言い訳にならないと思います。

このような経営判断を表明することは大変に立派なことですし筆者も大いに賛同いたします。

一方で、上記の企業をはじめジャニーズ事務所との契約を見直すと表明した企業のウェブサイトでは、SDGsやサステナビリティの取り組みとして再エネ電力の購入や自家発太陽光発電の導入が紹介されています。

しかしながら、CO2削減のために契約を切り替えた再エネメニューの元になるメガソーラーや、自社の敷地に設置した太陽光パネルはほとんどが中国製のはずです。言うまでもなく、中国製太陽光パネルは新疆ウイグル自治区における人権侵害が疑われており、世界ウイグル会議のドルクン・エイサ総裁は「中国製のパネルであればジェノサイド(民族大量虐殺)に加担することになる」と訴えています。

大手企業であれば必ず自社の行動指針を策定し環境や人権に対する取り組み方針を公表しています。ジェノサイドに加担したり森林破壊の上に成り立っているビジネスから得られる売り上げは1円たりともあってはなりません。噂の段階でもNGだし、本当かどうかわからなかったという言い訳はできないはずです。

今回のジャニーズ問題をきっかけにして、脱炭素における人権についても再考されることを願います。

『「脱炭素」が世界を救うの大嘘』

『メガソーラーが日本を救うの大嘘』

『SDGsの不都合な真実』

This page as PDF

関連記事

  • 処理水の放出は、いろいろな意味で福島第一原発の事故処理の一つの区切りだった。それは廃炉という大事業の第1段階にすぎないが、そこで10年も空費したことは、今後の廃炉作業の見通しに大きな影響を与える。 本丸は「デブリの取り出
  • 広島、長崎の被爆者の医療調査は、各国の医療、放射能対策の政策に利用されている。これは50年にわたり約28万人の調査を行った。ここまで大規模な放射線についての医療調査は類例がない。オックスフォード大学名誉教授のW・アリソン氏の著書「放射能と理性」[1]、また放射線影響研究所(広島市)の論文[2]を参考に、原爆の生存者の間では低線量の被曝による健康被害がほぼ観察されていないという事実を紹介する。
  • 東京都が「東京都離島振興計画」の素案を公表した。 伊豆大島に洋上風力 東京都、離島振興計画の素案公表 島を愛する私にとっては、とんでもない環境破壊の話だ! さてこの計画、いまE-MAILや郵送でのパブコメを募集している。
  • 厚生労働省は原発事故後の食品中の放射性物質に係る基準値の設定案を定め、現在意見公募中である。原発事故後に定めたセシウム(134と137の合計値)の暫定基準値は500Bq/kgであった。これを生涯内部被曝線量を100mSv以下にすることを目的として、それぞれ食品により100Bq/kgあるいはそれ以下に下げるという基準を厳格にした案である。私は以下の理由で、これに反対する意見を提出した。
  • IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 正直言ってこれまでの報告とあまり変わり映えのしない今回の
  • アゴラ研究所の運営するエネルギー・環境問題のバーチャルシンクタンクであるGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
  • 厄介な気候変動の問題 かつてアーリは「気候変動」について次の4点を総括したことがある(アーリ、2016=2019:201-202)。 気候変動は、複数の未来を予測し、それによって悲惨な結末を回避するための介入を可能にする
  • 読売新聞
    6月25日記事。バイデン副大統領が、米国でのインタビューで、習近平中国国家主席に、このような警告をしたと発言した。もちろん本音は中国への牽制だろうが、米国の警戒感もうかがえる。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑