お前はもう死んでいる:フジテレビが沈む日

Carlos Pascual/iStock
漢気(おとこぎ)か? 最期っ屁か?
一連の報道を見て思う。フジテレビの経営首脳陣は、本当に「真の髄から腐っている」と言わざるを得ない。
顔ぶれを見れば、ほとんどが高齢の男性ばかり。ダイバーシティの欠片もなく、女性は不在。そして、全員が生え抜きの社員ばかりで、まるで日枝天皇の寵児たちだ。
現在、フジテレビは中居くんの一件で揺れに揺れている。これは相当ヤバいのではないか? というか、すでに「お前はもう死んでいる」状態なのだ。中居くんに潰されたわけではなく、自ら自滅したのだ。
そもそもの発端は、1月17日の港社長による「記者会見らしきもの」。評判はすこぶる悪い。ガバナンスや説明責任の観点から見ても、不合格どころか逆効果しかなかった。そんなことすら予測できなかった時点で、すでにアウトだ。
それにしても、民放各局がここぞとばかりにこの問題を情報番組で取り上げているのは、果たして大丈夫なのだろうか。民放なんて、どこも金太郎飴みたいなものだ。見た目も、中身も、そして企画力も。結局、「他山の石」などと言っていられるうちは良いが、いつか自分たちに降りかかるかもしれない。
それにしても、フジテレビはなぜあれほど中居くんに入れ込んでしまったのか? 初回の「まつもとtoなかい」という変わったタイトルの番組を見ていたが、全くインパクトがない。中居くんは司会やMC、そしてダンスが上手いと言われているが、あまり面白さを感じなかった。
これは、「面白くなければTVじゃない」という、30年以上前のバブル期の腐ったドグマの成れの果てではないだろうか。そのドグマにしがみついて、30年もの間院政を敷いてきた男が最後に漢気※)を見せない限り、この事態は収まるはずもない。
※)ここでいう漢気とは、自己犠牲の精神、思いやり、社会的な価値や規範を守る勇気を指す
それとも、最後っ屁もできずにこのまま霞んで消え去るのか。いずれにしても、このままではフジテレビは駿河湾の深海に沈んでいくだろう。
ダンス上手!?
中居くんに対して、私が唯一「スバラシイ出来」と驚嘆したのは、sma劇場の昭和爺爺爺ダンスだ。
しかし、よく見ると彼のダンスパフォーマンスはキレも悪く、腰も全然回っていない。それは体の硬い老人を演じる設定ゆえか。少女時代をパロディ化したメイクと振り付けは見事だが、そこを差し引けば、貧相なパフォーマンスに過ぎない。何のメッセージ性もなく、薄ら寒く感じる。
また、最近の生スポーツ中継での場違いなコメントも同様だ。何をしに来たのかわからない質問やコメントをニヤニヤとする彼の姿には、同じような寒々しさを感じる。
フジテレビと私のデジャブ
現在、フジテレビの主要スポンサーが次々と撤退している。1月20日時点で75社以上が降りたと報じられているが、その中に大手石鹸メーカーの名前を見つけて、私は果てしないデジャブを感じた。
私は2011年3月11日の東日本大震災・福島第一原子力発電所事故直後の3月12日、早朝から深夜まで、フジテレビの報道局に詰めていた。最初は安藤優子さんがキャスターをつとめる特番だった。
この頃コマーシャルはすべて「ACジャパン」に差し替えられ、朝から晩まで〝AC ジャパン〜〜🎶〟の爽やかなコーラスが流れていた。
今次の中居・フジスキャンダルから、ACまみれのフジテレビを見て、あーデジャブやなあと感慨した。
3.11のAC嵐は、危機のピークが去っていくように見えるにつれて、やがて時間が経てば、通常コマーシャルが徐々に戻ってきた・・・記憶は定かでないが、月をまたいで4月になればほぼ通常モードになていたような気がする。
その後もフジテレビに私は出続けていたが、その頻度は福島第一原子力発電所事故の話題性の減少とともに減って行った。
一連のフジテレビ出演の最後は、2011年5月17日のFNNスーパーニュース(16:53〜19:00)だった。
安藤さんがメインキャスターで、コメント側には私と木村太郎さん(キム爺)がいた。
その日の原発関連話題は、余震によって燃料貯蔵プールから外にピチャピチャっと水が漏れた———安全性に問題ないのか?だった。私はその程度は微量の放射能しか含んでいないので問題ないと断じた。すると、間髪置かずに木村氏が、
「澤田さんはこれまでも安全だ、問題ないと言ってきたが、現実はさにあらず。多くの人が避難し、関連死があり、故郷は放射能で汚染され人々は帰還できない・・・。全然違うじゃないか・・・」
というようなことを言い始めた。
私は内心『おっ!?どうしたんだキム爺。さっきまでニヤニヤしていたのに、いきなり切込隊長のようになりやがって』と思って、抗弁しようとしたが聞く耳はなし。
すぐに判じたが、要するに〝You are fired!(お前はもうお払い箱だ!)〟ということだ。局の上の方の編成方針にしたがって、キム爺が切り込み役をやらされたんだろうなあぁと。
私は誇り高きキム爺を案じた。この人もNHKを全うできずに、業界内アマクダリのごとき身のやつし方をして禄を食む一介のコメンテーターに過ぎないのか——と。
さて、その筋から後日伝わってきた話だが、私は当時相変わらず視聴率が取れていたので、局としてはそのまま使い続けていたかったらしい。朝とか午後から夕方は主婦層がチャンネルを握っているので。
ところが、私は反原発・脱原発からは目の敵にされていたので、彼らはなんとかしてあのマヌケな原発安全・推進派のサワダをTV画面から消さねばならないと。そのことは別日別TVのたけしのTVタックルで、共産党の小池晃と出所不明の物理学者を名乗るガクシャと〝ガチ対決〟を組まれたことからも明らかである。
まあそういう人たちの行動様式としては、まずTV局にあいつを出すなと抗議の電話・ファックス・メールなどを雨あられと降らせる・・・ところが拉致があかない。その挙句たどり着くのが、『不買運動』圧であった。
フジの大手のスポンサー(特に石鹸系を軸にと聞いている)に〝サワダを降ろさせないとオタクの製品の不買運動を始めるぞ〟と。しかも組織的にである。組織とは、なんたらキョウドウクミアイとかのそっち系である。政党が絡んでいる。
かなり昔、市川房枝が市民運動をバックにして絶頂期だった頃、東京電力への不買運動(電気料金不払い)への動きをみせただけで、東電が震え上がったことがあった・・・後生ですからそれだけはどうかご勘弁を———
スポンサーフィー → 会社運営 → 構成員の給与
なので、スポンサー止めは生殺与奪の権。あな恐ろしや。
まあ、逆に言えば、TV運営(に限らないが)はそんな薄っぺらな〝金次第〟の世界である。コンテンツは視聴率さえ取れればよし。コンプラ、ガバナンスは二の次どころかどこ吹く風。テキトーにごまかしていればいい。TV画面に踊る末端のやつらは、いざとなれば切れるやつは切って切って切って・・・代わりはいくらでもいる。
まあ、結局中居くんも局からすれば、そういった役回りにすぎなかったのかもしれない。
彼のファンクラブ〝ヅラ〟の方達からすればいたたまれない。持ち上げるだけ持ち上げといて、いざという時はいとも簡単にお払い箱。組織vs.個人みたいなもんだからなあ、のんびりなかいにしたところで個人屋台みたいなもんだから。
あぁ〜、デジャブゥ〜〜!
日枝久というオトコ
私は、日枝久氏に一回だけ会わせてもらったことがある。
3.11後のフジTVに出ずっぱりだった期間のことで、視聴率的にも絶好調だった頃である。担当の専務が、日枝さんに面通しすると、奥の院に導かれた。
初めてお会いした日枝さんは僭越ながらリーダーとしての風格に満ちていた(と思う)。その特徴は、①体格恰幅良く、②どこからでもなんでも受け止めますよと言わんばかりの微笑みをたたえている。文字通りのジェントルマンなのであった。
面談時、日枝さんは、今各国の要人に日本をこの危機から救って欲しいとメッセージを送っていますとの説明があった。私もこの機会にTV画面を通じて精一杯心身を尽くして状況を説明し、伝えていくよう努力しますというようなことを言った。まあ、10分程度の面会だった。
各界のリーダーで相応の歳をとった方々は、多かれ少なかれ日枝さんに共通した特徴があるように思える・・・
私の脳裏にはある人が浮かんだ。鉄道系の経営者で誰もが知るあの方。
国鉄改革3人組のおひとり。この方は、豪放磊落、意が通じれば比較的たやすく肝胆相照らすこともできそうな雰囲気があった。一方、物事にあたって、その正邪を判断するに早く鋭く、ダメなものは理由をもって明言し断じて寄せ付けないところがあった。
国鉄改革の際の、労組ボスとのやりとりなど結構機微な話もあけすけと話すところがあった。それは、それだけ何事においても自信と自負があったという証左だろう。
実践に基づいた経験知識と胆力ある実行力に富んだ漢気の方とみた。僭越ながら・・・
日枝久氏が、これから一体何を発言し、どのような行動をとるのか。
胆力をもって漢気を世に示す時がきた。
そして、「再会見」が始まる…
さて、これからフジテレビ〝再会見〟が始まる模様(2025年1月27日16時)。
あーっ!
こりゃあ失敗だあ。失敗の上塗りだ。大失敗。
日枝氏の姿なし。
辞任は会長・社長だけ——新社長は内部昇格。
お詫びと言ってるが、そんな雰囲気が全くしない——相変わらず自覚なし。
フジテレビよ…
「お前はもう死んでいる」

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