溶けていく自民党:政治空白よりも深刻な事態

2025年08月02日 06:35
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東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

oasis2me/iStock

「ございません・・・」

28日の両院議員懇談会を終えても、石破首相の口から出てくるのは〝(続投の意思に変わりは)「ございません」〟の一点張りである。

選挙3連敗、意固地な石破氏の元に自民党はその中核部分からどんどんじわじわ溶けていく・・・ジェラシーが強く、執念深い石破さんがどんな事態があっても一旦総理の座に付けば、なかなかその玉座を降りないことは初めから分かっていたことで、既定路線である。

首相就任前後には〝石破色豊かな〟様々舌禍のごとき言い草もはびこっていたが、参院選前後のあたりからはなんとなーくおとなしくなってきて、幹事長と口裏を合わせたような妙な物議を醸さない、むしろ平穏な物言いに変わってきている。

その裏には〝続投〟に向けてすでに党内上層部の合意が得られているような雰囲気さえ感じさせるものがある。

総裁選の決選投票前に〝高市以外〟の指示を出した岸田元首相は、今や〝この時期に仮に首相をすげ替えても、秋の臨時国会で野党筋から「不信任案」が提出されて通ればそれでおしまいになる〟よいう旨のことを周囲に漏らしているらしい。これは極めて消極的でありながらも石破続投を支援している。

石破氏は続投の意思を寸分も変えてはおらず、その理由としているのは「政治的空白を作ってはならない」ということだが、これはちゃんちゃらおかしい。〝政治的空白を生まないための意固地な続投〟によって国民が得るものは寡ない。今やバラマキの2万円さえも怪しい。政治的空白を生まないとしてもそれは外形的なものだけで、政策は進まずむしろ後退するばかりである。

その間にも、自民党への信頼感はどんどん薄れて溶解していく・・・気がついた頃には核心は空洞化していく。否すでに相当部分が溶けてしまっている。そうやって、国民は国内的には重税に苦しみ、対外的には米国トランプディールの罠に苦しめられることになる。

〝石野前連合〟による融解構造から「#石破やめるな」へ

私はすでに〝石野前連合〟について論じたが、近年の選挙結果の推移を見れば、結果的にではあるが石破自民ー野田立民ー前原維新の選挙結果における退潮傾向が見事に一致している。

https://agora-web.jp/archives/250701073617.html

この33党(に加えて公明党)は、選挙を経るごとに順調に票を失っていっている。

自民党の心ある人々は、かつての強い安倍政権時代への郷愁よろしく今や石破おろしに向かっているようであるが、構造的な矛盾を抱えているように見える。

その一方で野党筋から〝#石破やめるな〟というムーブメントが沸き起こっている。実に奇異な動きである。まあこれは安倍政権時代にシールズなどを生み出した安保法制反対のうねりの興奮の再来の萌芽ようにも見える。#石破やめるな運動を牽引しているキーパーソンの一人が社民党の福島瑞穂氏ということである。

しかしこういった野党勢力が後押しする保守政治の領袖って一体どういうことなのか?それで保守政治がホントに牽引できるのだろうか。

強かった安倍政治への失望・・・行き場を失ってしまった保守

宗教まみれ、裏金まみれであった安倍政治の復活を誰が望んでいるのか。

安倍さん自身は魅力的な人だったかもしれない。アベノミックスは雇用を強くした面はあるかもしれない。しかしまあ、アベノミクスは失敗である。安倍さんのトランプ外交は見かけ上成功したようだが、対ロシア外交とりわけ北方四島の問題は無残な大失敗であった、それのみならず戦後保守政治の失敗の本質、すなわち主権の不在を露わにした。プーチン曰く、真の主権国家は核を保有しそれを運用管理できる国のことをいうという。

〝安倍さんが実行していた本当の意味での保守政治〟の化けの皮はとっくに剥がれてしまっている。そのことに気がつかない、あるいはそのことを刷新できない政治家が未来をつかむことはできない。

強かった安倍政治への失望が参政等への票を伸ばしたようだが、本質的ではない。一時的な退避にすぎない・・・行き場がなくたまたま漂着しただけである。

参政党の核に対する認識の一端が参院選の渦中で垣間見え論議を呼んだ。しかしその認識と論議の中身はまさに稚拙というほかない。科学技術的そして制度的な認識の甘さが露呈しているのみならず、全くもって構成的(constitusional)でないではないか。

非核4原則ともいわれ、核については〝考えてもいけない〟という第4原則が戦後80年間にわたって日本人の脳みそを溶かしてしましたかのようである。

カネまみれでない真の保守政治、しかも構成的な思考と論議ができる保守政治が生まれない限り、わが国の保守票は海図のない大洋を彷徨い続けて都度どこかに漂着するのが関の山なのかもしれない。

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