気候は危機だと「言わせる」国連アンケート。ギャラップもデータ操作
国連はアンケートの結果として、「3人に2人が世界は気候危機にあると答えた」と報告した。だがこれは最悪のレポートだ、と米国ブレークスルー研究所のカービーが批判している。紹介しよう。

kodda/iStock
国連開発計画は「ThePeople’sClimateVote」というレポートを発表した。そして「64%の人が気候変動は危機的だと答えた」ことを以て、「気候が危機に瀕しているという幅広い認識がある」と結論した。
ではどんな質問をしたのか、見てみよう。
「第1問:気候変動は地球の危機ですか? A) YES B) NO 」
オイちょっと待て。二択かい!「気候変動は起きているが、危機では無い」とか「わからない」とか選択肢は無いのか?これだと、3人に2人はA)と答えてしまうのではないか?

「第2問:もしYESなら、世界はどうすべきですか?」
この答えを見ると、「必要なことは急いで何でもやる」は59%で、あとの41%は「学習しつつゆっくり行動」「もう既に十分やっている」「何もしない」となっている。

オイオイ、つまり「気候が危機」にYESと言った内で、41%はぜんぜん危機らしい行動を取れとは言っていないではないの。
つまり世界の「気候が危機」にあって「必要なことは急いで何でもやる」べきだと答えた人は64%×59%=38%に留まる。過半数にもなっていない。
このアンケート、他にも問題が幾つも指摘されているが、それはカービーの記事に譲る。
ちなみにこれは120万人を対象にした史上最大のアンケートだ、というのが自慢のようだが、いったいお金は幾ら掛かったんだ?
ところで、インチキなアンケートという点では最も有名な調査会社であるギャラップも負けていない。
ギャラップのホームページに「アメリカではこれまでになく地球温暖化を心配するようになっている」というアンケート結果の記事がある

確かにこれを見ると「温暖化は人為的なものだ」など、
けれども、よく見ると一番左は「2001-2014(平均)」となっている。ここをバラすと、実は温暖化への心配は上がったり下がったりを繰り返してきたことが分かる。一貫して心配が増してきた訳では無い。

天下のギャラップも酷いデータの操作をするものだ。
確かに最近はピークがやや高くなっているけれども、これには、前回見たように、気候変動問題が政治化し、民主党・共和党の支持者の間で大きく分極化した影響も入っている。つまり、民主党支持者がますます強く心配するようになった、ということではないか。アメリカ全体が一丸となって温暖化問題を心配するようになった訳では無さそうだ。
■
「地球温暖化のファクトフルネス」 電子版:99円 印刷版:2228円
関連記事
-
CO2排出を2050年までに「ネットゼロ」にするという日本政府の「グリーン成長戦略」には、まったくコストが書いてない。書けないのだ。まともに計算すると、毎年数十兆円のコストがかかり、企業は採算がとれない。それを実施するに
-
アゴラ研究所の運営するエネルギー・環境問題のバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
12月22日に開催された政府の地球温暖化対策推進本部の会合で、本部長を務める安倍晋三首相が来春までの温対計画策定を指示しました。環境省の中央環境審議会と、経済産業省の産業構造審議会の合同会合で議論が始まっています。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 以前、IPCC報告の論点㉙:縄文時代の北極海に氷はあった
-
トヨタ自動車が、ようやく電気自動車(EV)に本腰を入れ始めた。今までも試作車はつくっており、技術は十分あるが、「トヨタ車として十分な品質が保証できない」という理由で消極的だった。それが今年の東京モーターショーでは次世代の
-
11月23日、英国財務省は2017年秋期予算を発表したが、その中で再エネ、太陽光、原子力等の非化石予算を支援するために消費者、産業界が負担しているコストは年間90億ポンド(約1.36兆円)に拡大することが予想され、消費者
-
アゴラ研究所では、NHNジャパン、ニコニコ生放送を運営するドワンゴとともに第一線の専門家、政策担当者を集めてシンポジウム「エネルギー政策・新政権への提言」を2日間かけて行います。
-
青山繁晴氏は安全保障問題の専門家であり、日本の自立と覚醒を訴える現実に根ざした評論活動で知られていた。本人によれば「人生を一度壊す選択」をして今夏の参議院選挙に自民党から出馬、当選した。 政治家への転身の理由は「やらね
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間















