今週のアップデート — 政府の構想「30年代に原発ゼロ」の矛盾(2012年9月18日)
今週のアップデート
1)内閣府のエネルギー・環境会議は9月18日、「革新的エネルギー・環境戦略」を決定する予定です。2030年代までに原発ゼロを目指すなど、長期のエネルギー政策の方針を決めました。これについては実現可能性などの点で批判が広がっています。
GEPRを運営するアゴラ研究所の池田信夫所長は、「支離滅裂な「革新的エネルギー・環境戦略」」というコラムを寄稿しました。原発ゼロにするための戦略が皆無、内容が矛盾だらけになっていることを指摘しています。そして文章の目的を「選挙目当てのポピュリズム」と喝破しています。
2)池田氏のコラムに関連して、GEPR編集部は「「30年代に原発ゼロ」を決めた「革新的エネルギー・環境戦略」の要旨」を提供します。上記「革新的エネルギー・環境戦略」の要旨をまとめたものです。
3)「反原発デモ、広がる波紋−結末見えない行進の先にあるものは?」。アゴラ研究所フェローの石井孝明は、反原発デモの状況をルポしました。全国に広がるデモについて、未来を考えていないことへの戸惑いを示しています。
今週のリンク
1)「福島第一原子力発電所における原子力事故から得た教訓」。日本原子力技術協会が和訳した、米原子力発電運転協会(INPO)の福島第一原発事故についてのレポートです。
東京電力関係者へのインタビューで、福島の2つの原発の事故を分析。混乱の中で、東京電力の対応が最悪の事態に至らなかったことを評価する一方で、緊急時での複数の対策、事前訓練の必要性を訴えています。
2)「革新的エネルギー・環境戦略」内閣府・エネルギー環境会議がまとめ、9月18日に閣議決定される長期のエネルギービジョンを示した文章です。
3)エネルギー選択 「原発ゼロ」は戦略に値しない(9月15日・読売新聞社説)
国益損なう「原発ゼロ」には異議がある(9月15日・日経新聞社説)
原発ゼロ政策 即時撤回して「25%超」に 世界で孤立し責任果たせぬ(9月15日・産経新聞社説)
いずれも政府のエネルギー政策を批判。一方で、朝日、毎日、東京中日の各紙の社説は原発ゼロを肯定的に受け止めています。
4)経済団体はそろって、政府の「原発ゼロ」計画を批判しています。
産経新聞 9月14日記事「「民主党はちょっとおかしい」経済3団体が批判」
5)米紙ワシントンポスト9月17日社説「Japan’s zero-nuclear dream」(日本の原発ゼロの夢)。
米紙ワシントンポストは、日本政府の掲げた「30年代までに原発ゼロにする」というエネルギー政策の目標を「夢」と指摘。気候変動や廃炉の道筋が明確ではなく、その実現可能性に疑問を示しています。GEPRはまもなく翻訳を提供します。

関連記事
-
1.メディアの報道特集で完全欠落している「1ミリシーベルトの呪縛」への反省 事故から10年を迎え、メディアでは様々な事故関連特集記事や報道を流している。その中で、様々な反省や将来に語り継ぐべき事柄が語られているが、一つ、
-
過去の気温上昇について、気候モデルは観測に比べて過大評価していることは何回か以前に書いた(例えば拙著をご覧頂きたい)。 今回は、じつは海水温も、気候モデルでは熱くなりすぎていることを紹介する。 海水温は、気候システムに余
-
スペイン政府の初動説明:停電の概要と初期分析 2025年4月28日に発生したスペインおよびポルトガルにおける広域停電から2週間が経過し、スペインのサラ・アーゲセン環境移行大臣が初めて公に説明を行いました。発表内容は以下の
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
太陽光発電業界は新たな曲がり角を迎えています。 そこで一つの節目として、2012年7月に固定価格買取制度が導入されて以降の4年半を簡単に振り返ってみたいと思います。
-
今回も嘆かわしい報道をいくつか取り上げる。 いずれも、筆者から見ると、科学・技術の基本法則を無視した「おとぎ話」としか受け取れない。 1. 排ガスは資源 CO2から化学原料を直接合成、実証めざす 排ガスは資源 CO2か
-
きのうの日本記者クラブの討論会は、意外に話が噛み合っていた。議論の焦点は本命とされる河野太郎氏の政策だった。 第一は彼の提案した最低保障年金が民主党政権の時代に葬られたものだという点だが、これについての岸田氏の突っ込みは
-
アメリカでは地球温暖化も党派問題になっている。民主党系は「温暖化は深刻な脅威で、2050年CO2ゼロといった極端な温暖化対策が必要だ」とする。対して共和党系は「それほど深刻な問題ではなく、極端な対策は必要ない」とする。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間