今週のアップデート — 原子力規制委員会の政策の誤り(2013年4月22日)
今週のアップデート
1)総合的リスク低減が原子力規制の目的—規制委の誤った活動を憂う
東京大学の岡本孝司教授に、寄稿をいただきました。
エネルギー関係者の間で、原子力規制委員会の活動への疑問が高まっています。原子力の事業者や学会と対話せず、機材の購入などを命じ、原発の稼動が止まっています。そして「安全性」の名の下に、活断層を認定して、原発プラントの破棄を求めるような状況です。
しかし、これが日本経済には損を与え、また総合的にリスクを考えていないために安全確保のためにも役立たない可能性があります。岡本教授は今の原子力規制委員会の政策が安全を高め、国民に利益をもたらす「目的」から逸脱していることへの懸念を示しています。
環境ジャーナリストの石井孝明氏の論考です。多くの人は、地球温暖化がここ数十年進行したと指摘しています。しかし歴史を振り返ると、気温は上下に変化しており、それに人間は翻弄され、また適応してきました。それを絵画などから振り返っています。
東京工業大学の久保田宏名誉教授の論考。提携する国際環境経済研究所(IEEI)のサイトからの転載です。エネルギーの効率から考えた場合、メタンハイドレートは現時点で分かっている限りの情報では有望です。筋の悪い、補助金を中心にした太陽光発電補助政策を続ける理由が、さらにとぼしくなったのではないかという指摘を久保田教授は行っています。
今週のリンク
1)日本の電力システムを創造的に破壊すべき3つの理由(上)(下)
ダイヤモンドオンライン掲載の伊藤元重東京大学大学院教授の論考です。過去の途上国的な独占の是認、現時点の原発事故でみられた供給体制の不備、未来の産業創造という3つの点を考え、発送電分離を促進すべきという主張です。もちろん異論が出る内容です。GEPRは多様な視点から電力自由化問題を取り上げていきます。
2)【社説】原子力交渉での米国の態度は同盟国への礼儀に反する
朝鮮日報日本語版の4月19日記事。日本は核燃料の再利用と自主性を持った研究、開発などの運用ができることを、日米原子力協定の中で米国と確認しています。韓国は、「日本並みの処遇」を米国との関係で求めましたが、再改定交渉の中で米国は消極的です。朝鮮半島の緊張などの問題があるためでしょう。日本は原子力利用で、過去の蓄積による優位を維持するべきではないでしょうか。
3)「反原発派の受け狙い」「関西が勝手に騒いでいる」…大飯仮処分、地元の冷ややかな視線
産経新聞4月29日記事。近畿などの住民約260人が関西電力に大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを申し立てた仮処分で、大阪地裁は16日に「3、4号機は安全基準を満たしている」と申し立てを却下しました。その行動を、地元が冷ややかに受け止めているという記事です。
4)今夏の節電要請の議論は慎重に–景気回復の影響も考慮すべき
日経BP4月19日の柏木孝夫東京都市大学教授の論考。新聞などは今夏の需要増大期に、電力は足りていると報じました。しかし元資料をみると、予備率は3%。かなり危険な状況です。慎重な対応を柏木教授は訴えています。
関連記事
-
「ポストSDGs」策定にらみ有識者会 外務省で初会合 日経新聞 外務省は22日、上川陽子外相直轄の「国際社会の持続可能性に関する有識者懇談会」の初会合を開いた。2030年に期限を迎える枠組み「SDGs(持続可能な開発目標
-
2023年12月にドバイで開催されたCOP28はパリ協定後、初めてのグローバルストックテイクを採択して閉幕した。 COP28での最大の争点は化石燃料フェーズアウト(段階的廃止)を盛り込むか否かであったが、最終的に「科学に
-
混迷と悪あがき ロシアのウクライナ侵攻後、ドイツの過去10年に亘るエネルギー政策「エネルギーヴェンデ(大転換)」が大失敗したことが明々自白になった。大転換の柱は、脱原発と脱石炭(褐炭)である。原発と褐炭を代替するはずだっ
-
5月23日、トランプ大統領は、 “科学におけるゴールドスタンダードを復活させる(Restoring Gold Standard Science)”と題する大統領令に署名した。 日本語(機械翻訳)は
-
北朝鮮の野望 北朝鮮はいよいよ核武装の完成に向けて最終段階に達しようとしている。 最終段階とは何か—— それは、原子力潜水艦の開発である。 北朝鮮は2006年の核実験からすでに足掛け20年になろうとしている。この間に、核
-
直面する東京電力問題において最も大切なことは、1.福島第一原子力発電所事故の被害を受けた住民の方々に対する賠償をきちんと行う、2. 現在の東京電力の供給エリアで「低廉で安定的な電気供給」が行われる枠組みを作り上げる、という二つの点である。
-
世界はカーボンニュートラル実現に向けて動き出している。一昨年、英グラスゴーで開催されたCOP26終了時点で、期限付きでカーボンニュートラル宣言を掲げた国・地域は154にのぼり、これらを合わせると世界のGDPの約90%を占
-
CO2濃度を知っているのは10人に1人、半数は10%以上と思っている事実 2021~22年にかけて、短大生222人とその家族や友人合わせて計641人に、大気中の二酸化炭素濃度を尋ねた結果、回答者全体の約11%が0.1%未
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間
















