今週のアップデート — 原子力の信頼回復に向けて(2014年4月7日)
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。
今週のアップデート
1)福島での被ばくによるがんの増加は予想されない– 国連報告書
福島原発事故をめぐり、UNSCER(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)が最終調査報告をまとめました。福島での放射線による健康被害の可能性は考えられないことを強調。一方で若年層の影響などで調査の継続が必要としています。福島にとって朗報です。
2)福島原発事故、人手不足の解消のために・その2 下請け構造の光と影
元日本原電勤務で、福島原発事故で被災した北村俊郎氏の論考です。原発事故作業で、原発事業における多層下請け構造が明るみに出て批判されました。それを現場経験から分析しています。全3回です。
GEPRの編集者石井孝明のジャーナリストの石井孝明の論考。原子力関係者から受けた、「閉鎖性」という印象と、その変化への提言です。
今週のリンク
澤昭裕 国際環境経済研究所(IEEI)所長の論考です。原子力学会誌2014年3月号の掲載文章の転載です。原子力をめぐる政治の関心の薄れを指摘。その変化の必要を訴えています。
環境省
温暖化問題に関する科学者の知見を集めたIPCC(国連・気候変動に関する政府間パネル)の第2作業部会の会合が横浜で開かれました。その概要を示しています。気候変動の影響が多面的に広がり、特に水の循環システム、生物の生息域が変わっていることを指摘しました。
函館市
函館市長の工藤壽樹氏のブログ。同市の津軽海峡を挟んだ対岸に電源開発の大間原発(青森県大間町)がほぼ完成しています。その建設差し止めを求めました。市長らの懸念は重いもので、原発事業は今後立地場所の周辺住民からも厳しい目にさらされそうです。ただし函館市の主張は、法律の上では正当性が厳しい主張のようです。日経4月3日記事「官房長官、大間原発「新増設には当たらない」」。
日経4月4日記事。原子力への技術供与を取り決め原発輸出の前提になるトルコ、アラブ首長国連邦(UAE)の原子力協定が衆議院本会議で可決されました。自民、民主が賛成、維新が反対する中で、各党で討議に従わない議員が続出しました。賛成にまわった維新の石原慎太郎議員などです。政治の原発への向き合い方は一律ではなく、揺らいでいます。
5)3期連続赤字、政投銀に頼る北海道電力–500億円の増資で債務超過転落を回避へ
東洋経済4月2日記事。産業の落ち込みによる需要減に加え、原発停止、再生可能エネルギーの接続対応で、経営危機に陥った北電の状況をめぐる解説です。外部要因の多くは政治の失敗によるもの。その是正を考えなければなりません。電力会社の経営負担は電気料金に転嫁され、消費者を直撃します。

関連記事
-
はじめに 読者の皆さんは、「合成の誤謬」という言葉を聞いたことがおありだろうか。 この言葉は経済学の用語で、「小さい領域・規模では正しい事柄であっても、それが合成された大きい領域・規模では、必ずしも正しくない事柄にな
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 6月30日に掲載された宮本優氏の「失われつつある科学への信頼を取り戻すには・・」の主張に、筆者は幾つかの点では共感する。ただし全てにではない(例えばコロナの「2類→5類」論には
-
パリ協定を受けて、炭素税をめぐる議論が活発になってきた。3月に日本政府に招かれたスティグリッツは「消費税より炭素税が望ましい」と提言した。他方、ベイカー元国務長官などの創立した共和党系のシンクタンクも、アメリカ政府が炭素
-
英国保守党のケミ・ベーデノック党首が、脱・脱炭素宣言をした。保守党のホームページに、スピーチ全文が掲載されている。 Kemi Badenoch: Net zero by 2050 “is fantasy politics
-
ゼレンスキー大統領の議会演説は、英米では予想された範囲だったが、ドイツ議会の演説には驚いた。 彼はドイツがパイプライン「ノルドストリーム」を通じてロシアのプーチン大統領に戦争の資金を提供していると、かねてから警告していた
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
地球温暖化の原因は大気中のCO2の増加であるといわれている。CO2が地表から放射される赤外線を吸収すると、赤外線のエネルギーがCO2の振動エネルギーに変換され、大気のエネルギーが増えるので、大気の温度は上がるといわれてい
-
過激派組織IS=イスラミックステートは、なぜ活動を続けられるのか。今月のパリでのテロ事件、先月のロシア旅客機の爆破、そして中東の支配地域での残虐行為など、異常な行動が広がるのを見て、誰もが不思議に思うだろう。その背景には潤沢な石油による資金獲得がある。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間