ネイチャーは気候科学の嘘を撤回したが金融機関は大きすぎて潰せない

2025年12月07日 06:50
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キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

wildpixel/iStock

9月5日付の本コラムで、私はポツダム研究所の研究者がネイチャーに掲載した論文の欠陥騒ぎについて書いた。

気候科学の嘘が大きすぎてネイチャーは潰せない

気温だけで経済成長を説明しようとする無理筋のモデルで、「気候変動影響により2100年までに世界のGDPが6割減る」と騒ぎ立てていたのである。ちなみにこの論文は気候分野において2024年に世界で2番目に頻繁にメディアで取り上げられたものだいう。

その論文がついにネイチャーから正式に撤回された。著者自身が「単なる訂正では済まないほど誤りが重大だった」と認めざるを得なくなったからだ。それでも一部の報道や専門家のコメントは「数字はやや大げさだったが、気候変動が経済に深刻な損害を与えるという結論自体は変わらない」と、軽い“修正”で片付けようとするものだ。

しかし、ロジャー・ピールキ Jr.が強調するように、この論文は、単なる学術成果に留まらず、世界銀行やOECD、各国財政当局、そして何より世界の中央銀行からなるグリーン化ネットワーク(NGFS)がネットゼロ(CO2排出ゼロ)を推奨するにあたって科学的な基礎として使用されてきた。その論文が「致命的欠陥」で撤回された以上、本来ならNGFSのネットゼロ目標も、いったん白紙撤回して作り直すのが筋というものだ。

豪州の研究者ジョー・ノバは「そもそも、あれほどお粗末な論文がなぜネイチャーに掲載されたのか」と問い、ネイチャーの腐敗ぶりを指摘している。ウズベキスタンというたった一国の異常データによって世界のGDPの減少が2割から6割にもなっていたことに、編集部も査読者も誰も声を上げなかった。

気候危機物語に都合の良い“派手な数字”が好まれ、科学としての厳密さよりも政治的なインパクトが優先されてしまったのではないか、という疑念は拭えない。

ネイチャーはようやく撤回に踏み切ったが、NGFSは、当面は「この論文は撤回されました」と但し書きを付けるにとどめ、問題のあるネットゼロ目標は維持しつつ、次回(2026年末公表予定)から手法を見直すとするに過ぎない。

科学の側で誤りが認められても、金融の世界がどこまで軌道を修正するかは依然として不透明である。このような状態では、気候リスク評価や、ネットゼロ目標なるものへの信頼は当然に失墜する。今後のNGFSや各国当局の対応が見ものである。

なお本件は、ウォール・ストリート・ジャーナルを始め、海外では多くのメディアで報道されているが、日本ではほとんど報道されていないようだ。日本のオールドメディアとは一体何なのだろうか。

■

『データが語る気候変動問題のホントとウソ』

 

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