今週のアップデート — 福島原発事故の収束に向けた専門家の声(2014年7月7日)
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今週のアップデート
日本原子力学会が今年3月、事故報告書を作成しました。(「福島第一原子力発電所事故その全貌と明日に向けた提言: 学会事故調 最終報告書」)その幹事として執筆に関わった元原子力技術者の諸葛宗男氏の寄稿です。学会事故調報告のポイントを紹介しています。原子力の専門家らは福島事故の反省の上で原発の安全性を高め、新しい原子力のあり方を模索しています。原子力をめぐりどのような考えにあろうと、この姿勢は評価してその意見を傾聴すべきでしょう。
米国のエネルギーコンサルタントであるレイク・H・バレット氏に寄稿いただきました。1979年のスリーマイル島の事故の収束活動にも参加しました。米国の事故とまったく同じように、福島の人々は不安に直面していたそうです。しかし、現実を見て、理解を重ねることによって、未来に希望が生まれるとしています。
3)高速炉の稼動で、ロシアでクリーンエネルギーの時代が始まる
ロシアメディアRT(ロシア・トゥデイ)の英文記事の翻訳です。ロシアで大型高速炉が稼動しました。その報告です。第四世代原子炉で、ロシアは世界で一番早く、商業化を実現しました。炉心溶融事故の可能性が少なく、燃料も世界に大量にあるウラン238を使える原子炉です。こうしたメリットの半面、核爆弾の原料になるプルトニウムを増やすことから、米国はその原子炉の研究を中止しています。
今週のアップデート
日本経済新聞7月5日記事。原子力規制委員会が、九州電力川内原発の安全審査で、審査を合格させる方向にあるそうです。しかし手続きが進んだ場合でも、今年秋に稼動はずれ込みそうです。
2)柏崎刈羽原発の再稼動、来年度以降の公算 東電値上げに政府の壁
ロイター通信7月3日記事。新潟の東電柏崎刈羽原発が新潟県の反対、そして規制委員会の審査の影響で、再稼動がかなり長引きそうな状況になっています。これは東電の経営、さらには東電の資金を支える国民負担の問題になります。
日経ビジネス7月3日記事。今年の7月1日でFIT開始2年が経過しました。電力自由化の発送電分離について、小売り自由化が分散型電源の普及にプラスとなるという意見です。しかし発電は大規模になり、現状では化石燃料、原子力を使った方が、太陽光などの再生可能エネルギーより安くなることは明らかです。現時点では発送電分離の再エネ普及への影響は不透明です。
ブルームバーグニューエナジーファイナンス。国際メディアの調査機関が、再エネの見通しを公開しました。2030年までに投資額は、2013年からの累計でアジア太平洋地域で2.5兆ドルになると予想。日本では電力需要は伸び悩むものの、再エネシフトが続くと見込んでいます。再エネには大きな可能性があります。のちほどGEPRではこの見通しの詳細を紹介します。
池田信夫アゴラ研究所所長のコラム。原子力と他電源の比較についての議論で、立命館大学の大島氏の考えの問題を指摘しています。批判はやや強いものの、正論です。大島氏らが、稼動によるコストと、これまでの投資のコストを混同し、発電コストを過剰に多く見積もっています。この種の間違いが繰り返されることは好ましいものではありません。

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