今週のアップデート - リスクと原子力事故(2014年7月28日)

2014年07月28日 17:00

アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。

今週のアップデート

1) しきい値なしのモデルとリスク受容の課題

日本のリスク研究の第一人者である中西準子横浜国大名誉教授の寄稿です。福島の原発事故と放射線の被ばくについて、どのようにリスクを受け入れるべきか。中西氏は除染の具体的基準を示し、議論を呼びかけています。中西氏は「言論アリーナ」に出演いただき、その考えを紹介していただきました。「福島除染、年5mSv目標を新提案【言論アリーナ・本記】」。またこの論文は日本学術会議の機関誌『学術の動向』から転載させていただきました。

2) 「原子力文明国」と言えない日本の現状–議論の質的向上を

日本の原子力の安全研究者として著名な、宮健三東大名誉教授の論考です。福沢諭吉の名著「文明論之概略」を比較・引用しながら、現代の日本の原子力をめぐる議論について思索をしています。

3) 欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(その1)再エネ振興策の見直し

有馬純日本貿易振興機構ロンドン事務所長の論考です。経産省で温暖化・エネルギー政策に関係した方です。2008年と今を比べると、欧州が好景気から一転して不況に陥り、エネルギーも経済との両立が語られるようになったという指摘です。

今週のリンク

1)2015年度までの日本の経済・エネルギー需給見通し

日本エネルギー経済研究所。25日発表のリポートです。原発無稼働の場合に比べ、2015年度段階で19基稼働、稼働月9カ月以上の場合に8000億円、同32基稼働で1兆1000億円、GDPの押し上げ効果があると推計しています。参照、日経25日記事「原発19基再稼働ならGDP8000億円押し上げ エネ研

2)使用済み核燃料“ゴミとして処分可能”

NHK、7月25日報道。これまで核燃料サイクルを進めてきた日本原子力開発機構が、内部資料として直接処分をすることは可能という選択を示したと伝えています。直接処分を求める声を最近、政府が有識者会議などで取り入れるようになりました。政策転換の可能性がでています。

3)廃炉円滑化へ方策検討 経産省有識者委、年度内にも取りまとめ

産経新聞7月24日記事。福島原発事故以降、エネルギーと原発の重要論点である廃炉、電力自由化、原発の使用済み核燃料の処分について、議論がほとんど行われていませんでした。ようやく、議論が始まりましたが、まだ方向は見えません。

4)異次元緩和の「偽薬効果」は消えた

池田信夫アゴラ研究所所長。アゴラ7月25日記事。物価が上昇しています。それは円安と原発停止によるエネルギー価格の上昇によるものであることを分析。経済に厳しい影響がでつつあることを指摘しています。これはアベノミクスを脅かし、供給制約の形で日本経済にダメージを与えるかもしれません。

5)家庭における2011年夏の節電実態(再掲載)

電力中央研究所。2012年3月論文。2011年夏における個人の節電行動を分析しています。2700人への調査で大半が前年比節電10%以上を達成。エアコンの使用を見直したためとされます。今年は西日本を中心に電力不足が懸念されます。参考にしましょう。

This page as PDF

関連記事

  • 世界はカーボンニュートラル実現に向けて動き出している。一昨年、英グラスゴーで開催されたCOP26終了時点で、期限付きでカーボンニュートラル宣言を掲げた国・地域は154にのぼり、これらを合わせると世界のGDPの約90%を占
  • 「東京は、水素でおもしろくなる。」 「この街を動かすエネルギーが、水素に変わってきています。誰もが、あたりまえに水素を使う。そんな日常が、すぐそこまで来ています。東京が水素シティになったとき、そこにはどんな景色があって、
  • 5月25〜27日にドイツでG7気候・エネルギー大臣会合が開催される。これに先立ち、5月22日の日経新聞に「「脱石炭」孤立深まる日本 G7、米独が歩み寄り-「全廃」削除要求は1カ国-」との記事が掲載された。 議長国のドイツ
  • これを読むと、現状のさまざまな論点に目配りされ、「分析文書」としてはよくできている。ところが最近の行政文書によくあるように、何を実行したいのかが分からない。書き手が意図的にぼやかし、無責任に逃げようとしていることもうかがえる。
  • 前回、改正省エネ法やカーボンクレジット市場開設、東京都のとんでもない条例改正案などによって企業が炭素クレジットによるカーボンオフセットを強制される地盤ができつつあり、2023年がグリーンウォッシュ元年になるかもしれないこ
  • スマートジャパン
    スマートジャパン 3月14日記事。環境省が石炭火力発電所の新設に難色を示し続けている。国のCO2排出量の削減に影響を及ぼすからだ。しかし最終的な判断を担う経済産業省は容認する姿勢で、事業者が建設計画を変更する可能性は小さい。世界の主要国が石炭火力発電の縮小に向かう中、日本政府の方針は中途半端なままである。
  • 田中 雄三 排出量は中所得国の動向に依存 日本は2050年に温室効果ガス(GHG)排出を実質ゼロにする目標を公表しています。それは極めて困難であるだけでなく、自国だけが達成してもあまり意味がありません。世界の動向に目を配
  • 今年のCOP18は、国内外ではあまり注目されていない。その理由は、第一に、日本国内はまだ震災復興が道半ばで、福島原発事故も収束したわけではなく、エネルギー政策は迷走している状態であること。第二に、世界的には、大国での首脳レベルの交代が予想されており、温暖化交渉での大きな進展は望めないこと。最後に、京都議定書第二約束期間にこだわった途上国に対して、EUを除く各国政府の関心が、ポスト京都議定書の枠組みを巡る息の長い交渉をどう進めるかに向いてきたことがある。要は、今年のCOP18はあくまでこれから始まる外交的消耗戦の第一歩であり、2015年の交渉期限目標はまだまだ先だから、燃料消費はセーブしておこうということなのだろう。本稿では、これから始まる交渉において、日本がどのようなスタンスを取っていけばよいかを考えたい。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑