今週のアップデート - 福島の健康、本当の問題は?(2014年9月1日)
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
今週のアップデート
相馬中央病院の内科医で、公衆衛生学の専門家でもある、越智小枝先生に寄稿いただきました。避難の長期化による健康の悪化、そして甲状腺検査での地元の動揺など、多くの問題が福島の医療にあるようです。しかも関わる人の多くは善意で向き合っている状況。「地獄への道は善意に舗装されている」という難しい姿が示されています。
2) 原電敦賀2号機の破砕帯問題、科学技術的な審議を尽くし検証せよ
日本原電の敦賀2号機の下の破砕帯が活断層であるか。この議論が延々と続いています。北海道大学大学院の奈良林直教授が現状を解説。原電が提出する新しい資料に基づき、審議をしない現状はおかしいと指摘しています。
3) 蟷螂の斧–河野太郎議員の電力システム改革論への疑問・その1
原子力、電力業界批判で知られ、自民党本流のエネルギー政策に疑問を示し続ける、同党の河野太郎衆議院議員。国際環境経済研究所所長の澤昭裕氏が、河野氏の見識に敬意を示しつつも、その主張への疑問を3回に分けて述べます。
4)欧州のエネルギー・環境政策をめぐる風景感(5)政策転換はあるか?
日本貿易振興機構ロンドン事務所長の有馬純氏の解説、全5回の最終回です。5月発表のEUのエネルギー安全保障包括戦略案の解説です。温暖化・環境重視から経済とバランスの取れた現実主義的な姿へ、EUの態度も変化しているようです。
今週のリンク
駐日欧州連合代表部。5月28日公表。今回のコラム4)で公表されたEUのエネルギー安全保障包括戦略案のプレスリリースです。現在、この案に基づいて、各国のエネルギー政策が検討されています。(英文本文)
NHK8月28日報道。原子力規制委員会が、同委が活断層であると認定した日本原電敦賀2号機の断層の追加審査をしています。「原電の反論に根拠が乏しい」としています。原電は、さらなる調査を求める構えです。(日本原電8月28日付プレスリリース「敦賀発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合 第3回追加調査評価会合の開催」についてのコメント)今回の奈良林北大教授の寄稿の指摘のように慎重な審査を、規制委はするべきでしょう。
3)インドのモディ首相が30日来日へ、原子力協定の進展に期待
ロイター通信8月28日記事。インドの今年5月の総選挙でヒンドゥー至上主義の保守政党、人民党が勝利し、政権を担いました。ナレンドラ・モディ首相は初の外遊先に日本を選びました。現在のところ、打ち出す政策は穏健です。インドは核兵器開発の懸念から他国から原子力技術をなかなか得られません。発電用の技術の提供を日本に期待しています。
4)注目高まる安全な原発 日本がトップ独走、次世代型「高温ガス炉」 国が開発推進
産経新聞8月25日記事。日本原子力研究開発機構が行う「高温ガス炉」の紹介記事です。試験炉は20年前に建設されたものですが、冷却にガスを使い、安全に運転を止められる原子炉です。
日本経済新聞8月30日記事。福島原発事故処理で出た放射性廃棄物の処理施設について、県が正式に受け入れを表明しました。しかし県民の合意ができたと言い難く、用地確保のめども立っていません。

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テレビ朝日系列の「報道ステーション」という情報番組が、東日本大震災と福島原発事故から3年となる今年3月11日に「甲状腺がんが原発事故によって広がっている可能性がある」という内容の番組を放送した。事実をゆがめており、人々の不安を煽るひどいものであった。日本全体が慰霊の念を抱く日に合わせて社会を混乱させる情報をばらまく、この番組関係者の思考を一日本人として私は理解できない。
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【記事のポイント】1・一つのリスクを減らすと他のリスクが高まる「リスク・トレードオフ」という現象が起こりがち。2・「絶対反対」の主張を政治的な運動体は好む。しかし現実を動かさない。3・原発事故後に政府の対策はリスクの分析をせず、誰もが責任から逃げている。
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【要旨】(編集部作成) 放射線の基準は、市民の不安を避けるためにかなり厳格なものとなってきた。国際放射線防護委員会(ICRP)は、どんな被曝でも「合理的に達成可能な限り低い(ALARA:As Low As Reasonably Achievable)」レベルであることを守らなければならないという規制を勧告している。この基準を採用する科学的な根拠はない。福島での調査では住民の精神的ストレスが高まっていた。ALARAに基づく放射線の防護基準は見直されるべきである。
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「福島で捕れたイノシシのボタン鍋を食べませんか。肉の放射線量は1キロ当たり800ベクレルです」こんなEメールが東京工業大学助教の澤田哲生さんから来た。私は参加し、食べることで福島の今を考えた。
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この論文の中では、さらに「でも、スクリーニング効果で何十倍も発症率を上げるとは考え難い」という議論もなされています。しかし、例えは過去の韓国の論文によれば、一般人の甲状腺がんのスクリーニングが導入されたことで、甲状腺がんの罹患率が15倍に上がった、というデータがあります。これは10万人当たり約4人であったものが、約60人まで増加しています。
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原子力問題は、安倍政権が残した最大の宿題である。きのう(9月8日)のシンポジウムは、この厄介な問題に新政権がどう取り組むかを考える上で、いろいろな材料を提供できたと思う。ただ動画では質疑応答を割愛したので、質疑のポイント
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3月11日の大津波により冷却機能を喪失し核燃料が一部溶解した福島第一原子力発電所事故は、格納容器の外部での水素爆発により、主として放射性の気体を放出し、福島県と近隣を汚染させた。 しかし、この核事象の災害レベルは、当初より、核反応が暴走したチェルノブイリ事故と比べて小さな規模であることが、次の三つの事実から明らかであった。 1)巨大地震S波が到達する前にP波検知で核分裂連鎖反応を全停止させていた、 2)運転員らに急性放射線障害による死亡者がいない、 3)軽水炉のため黒鉛火災による汚染拡大は無かった。チェルノブイリでは、原子炉全体が崩壊し、高熱で、周囲のコンクリ―ト、ウラン燃料、鋼鉄の融け混ざった塊となってしまった。これが原子炉の“メルトダウン”である。
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