蟷螂の斧―河野太郎議員の電力システム改革論への疑問(その2)・原発は優遇されているのか?

2014年09月08日 17:00
アバター画像
国際環境経済研究所所長 21世紀政策研究所・研究主幹

(IEEI版)
(その1)

原発の優先給電

河野太郎議員は2014年6月11日付ブログ記事「いよいよ電力の自由化へ」で、以下のようなことを述べておられる。

○これまでの電力連系は、電力会社をはじめとする電力系統利用協議会(ESCJ)という組織が「電力系統利用協議会ルール」というものを作っている。
○これを読むと、再生可能エネルギーよりも原発を優先していたり、電力会社間の融通を新電力よりも優先していたり、時代に合わなくなっているところが多々ある。
○こうした既存のルールを基に自由化後のルールを決めたのでは意味がない。
○そのためにも電力自由化後にどういうルールを適用するのか、非常に大切だ。

同議員は、300ページ弱にも上る専門技術的な文書である「電力系統利用協議会ルール」まで読みこなされているようで、非常に驚いた。私は到底その域まで達しない。

なので、このルールに詳しい関係者に、同議員の指摘部分について私が抱いた疑問を聞いてみた。議員が、電力系統利用協議会ルールが時代に合わなくなっている点として挙げておられる「再生可能エネルギーよりも原発を優先していること」についてだ。

「電力会社間の融通を新電力よりも優先している」とも指摘されているが、これはいわゆる「先着優先の原則」のことを指しているのか、全国融通のことを指しているのか、この文章だけでは趣旨が判然としないところがあるので、ここでは論じない。ただ、もしそれが明確になるようなご発言などを後に見かけたら、そのときには再度検討してみたい。

で、原発の優先給電問題である。例えば、連系線に混雑(連系線の利用希望が運用容量を超過すること)が発生した場合、超過分に相当する利用希望を順次抑制していく必要があるが、電力系統利用協議会ルールでは、その際の優先順位を次のように定めている。(該当部分は、第4章 第11節 3.抑制順位)

(1)連系線等の新規利用潮流
(2)認定を受けた既存契約等による利用潮流(認定を受けた長期固定電源および自然変動電源を原資とする連系線等の利用潮流を除く。)
(3)認定を受けた自然変動電源を原資とする利用潮流
(4)前日スポット取引約定による利用潮流
(5)全国融通による利用潮流
(6)認定を受けた長期固定電源を原資とする利用潮流

(注・ここでの「長期固定電源」とは原子力、水力(揚水式を除く)および地熱発電所の総称をいう)

原発のいわゆる「出力調整」問題の壁

このルールに基づく運用について、河野議員は「今は原発の稼働を優先して、再生可能エネルギーの出力を抑制しているが、それを逆にせよ」と主張しているのだろう。しかし、これを見て驚いた。こうした主張は、これまで政治的な問題にもなったいわゆる原子炉の出力調整を積極的に行うべきだということにつながってしまうからである。

原発は、固定費が大きく可変費が小さいので、出力一定で運転する方が経済性の面で望ましい。しかし、技術的には出力調整ができないわけではない。もともと、軽水炉は潜水艦という移動装備のエンジンに使われている技術であり、出力調整ができなければものの役に立たない。原子力発電の比率が高いフランスなどでは、通常の発電所でも出力調整が行われているくらいだ。にもかかわらず、日本でできないでいるのは、チェルノブイリ原発事故が出力抑制運転の試験中に起こった等々の理由で、反原発勢力が強硬に反対してきたからである。

再生可能エネルギーを原発よりも優先すべきとの主張は、昨今の日本の空気からすれば、誰も表立って批判できないだろう。しかし、「優先」というのは何を優先することを言っているのか。政府の支援だの民間投資環境の整備だの、経済的な支援については原発よりも優先的に適用し、再生可能エネルギーの導入を促進していくということと、系統運用の中で最適な給電指令を行っていくために、技術的観点でどの発電機を「優先」させていくのかということとは、次元が全く違う話である。

仮に、その技術的な面でも「優先」給電させようとすれば、「原発の出力調整運転の実現」という政治的に難しいアジェンダとセットになるのだ。議員がその先頭に立って、そのアジェンダを実現する役目を果たしていただけるのであれば、自らの「再生可能エネルギーを原発より優先」という主張と言行一致だと認めざるをえない。ぜひ、これまでの懸案だった本件について、電力システム改革の実現を契機に解決していただくことを望みたい。

(2014年9月8日掲載)

This page as PDF
アバター画像
国際環境経済研究所所長 21世紀政策研究所・研究主幹

関連記事

  • 小泉・細川“原発愉快犯”のせいで東京都知事選は、世間の関心を高めた。マスコミにとって重要だったのはいかに公平に広く情報を提供するかだが、はっきりしたのは脱原発新聞の視野の狭さと思考の浅薄さ。都知事選だというのに脱原発に集中した。こんなマスコミで日本の将来は大丈夫かという不安が見えた。佐伯啓思・京大教授は1月27日付産経新聞朝刊のコラムで「原発問題争点にならず」と題して次のように書いた。
  • 9月14日、政府のエネルギー・環境会議は「2030年代に原発ゼロ」を目指す革新的エネルギー環境戦略を決定した。迫りくる選挙の足音を前に、エネルギー安全保障という国家の大事に目をつぶり、炎上する反原発風に気圧された、大衆迎合そのものといえる決定である。産業界からの一斉の反発で閣議決定にまでは至らなかったことは、将来の国民にとって不幸中の幸いであった。報道などによれば、米国政府筋などから伝えられた強い懸念もブレーキの一因と いう。
  • 2015年11月24日放送。出演は鈴木達治郎氏(長崎大学核兵器廃絶研究センター長・教授)、池田信夫氏(アゴラ研究所所長)、司会は石井孝明氏(ジャーナリスト)。核兵器廃絶を求める科学者らの「パグウォッシュ会議」が今年11月の5日間、長崎で開かれました。鈴木氏は、その事務局長として会議を成功に導きました。また14年まで国の原子力政策を決める原子力委員会の委員長代理でした。日本の原子力の平和利用を考えます。
  • 日米の原子力には運転データ活用の面で大きな違いがある。今から38年前の1979年のスリーマイル島2号機事故後に原子力発電運転協会(INPO)が設立され、原子力発電所の運転データが共有されることになった。この結果、データを
  • 原発のテロ対策などを定める特重(特定重大事故等対処施設)をめぐる混乱が続いている。九州電力の川内原発1号機は、今のままでは2020年3月17日に運転停止となる見通しだ。 原子力規制委員会の更田委員長は「特重の完成が期限内
  • 大竹まことの注文 1月18日の文化放送「大竹まことのゴールデンタイム」で、能登半島地震で影響を受けた志賀原発について、いろいろとどうなっているのかよくわからないと不安をぶちまけ、内部をちゃんと映させよと注文をつけた。新聞
  • 新潟県知事選挙では、原発再稼動が最大の争点になっているが、原発の運転を許可する権限は知事にはない。こういう問題をNIMBY(Not In My Back Yard)と呼ぶ。公共的に必要な施設でも「うちの裏庭にはつくるな」
  • はじめに リスクはどこまで低くなれば安心できるのだろうか。泊原子力発電所は福一事故後7年も経ったのにまだ止まったままだ。再稼働できない理由のひとつは基準地震動の大きさが決っていないことだという。今行われている審査ではホモ

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑