太陽光発電による環境破壊、状況は悪化-山梨県北杜市

2016年09月27日 23:17
アバター画像
経済ジャーナリスト

山梨県北杜市(ほくとし)における太陽光発電による景観と環境の破壊を、筆者は昨年7月にGEPR・アゴラで伝えた。閲覧数が合計で40万回以上となった。(写真1、写真2、北杜市内の様子。北杜市内のある場所の光景。突如森が切り開かれ、ソーラー発電用地になり住民説明会もなかった。反対運動が発生した。)

太陽光発電の環境破壊を見る(上)-山梨県北杜市を例に

太陽光発電の環境破壊を見る(下)-無策の地方自治体

(写真1)

001

(写真2)

015

太陽光発電と環境の報道は、新聞の地方欄にはぽつりぽつりと出るものの、まとまった記事は少ない。北杜市では、規制に動かない北杜市の白倉政司市長が太陽光発電の工事会社の未公開株を保有していたことが報道で伝えられた。(フライデー記事「「太陽光パネルだらけ」北杜市長が保有する業者の未公開株」)また15年9月、太陽光パネルの乱開発が、鬼怒川の水害の一因になったもようだ。(「鬼怒川氾濫、太陽光発電の乱開発が影響した可能性」)しかし、適切な規制の強化の声が高まるのは一瞬で、なかなか問題は改善しない。

何も対策が行われない中で、北杜市では太陽光の開発が続き、環境破壊の状況は悪化しているという。現地の人から話を聞き、写真を提供してもらった。(写真1、2は筆者撮影)

悪化する業者の質

北杜市は16年度、官民共同事業と称して、別荘地清里地区の市有地の旧樫山牧場跡地を事業者に貸し出して10メガワットの太陽光発電所を誘致した。山の斜面を切り開き、太陽光パネルを置いた。市は太陽光の抑制ではなく、増加を後押しするという。「写真3」で示されたように、土台の工事をしっかりしていないと分かるずさんな工事だ。それを北杜市自ら行っている。

(写真3)

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%92-s

北杜市の太陽光発電で、FIT(再エネの強制買取制度)の認定件数は16年3月末で4792件、稼動件数は1241件と増加。仮に全部が稼動すると、541ヘクタール、東京ドーム115個分、市の面積の1%程度になるという。こういう数字も、市民団体が集計し市は把握していない。市の無策は続いている。

そして今問題になっているのが、事業者の転売で、太陽光発電の権利関係が分からなくなっていることだ。そもそも事業者の表示義務はないが、さらに小口で分割して権利を売って投資家を募る企業が増えている。昨年7月の記事で、太陽光発電施設は建築基準法の対象にならず、50kW以下の小口では電気事業法の対象にならないことの問題を指摘した。その規制は菅義偉官房長官が、鬼怒川水害の後で対応すると表明しながら、行われていない。そのために北杜市内では景観や環境に配慮しないずさん工事がさらに市内で増えているという。

「写真4」は北杜市内の別荘地の清里の光景。囲いもなく、別荘の隣の森林が伐採された。景観が壊れ別荘の資産価値は急落した。さらに照り返しが晴れの日はまぶしいという。囲いがなく、地元の人が自由に出入りする。治安のよすぎる日本以外の国ならば、パネルはすべて盗まれてしまうだろう。管理はいいかげんだ。

(写真4)

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%93-s

そして事業者の質も悪化している。事業者の倒産により、工事が突如中止されてしまう例が北杜市内で、いくつもあるという。帝国データバンクによれば、太陽光発電関連の倒産は2013年から15年まで全国で151件確認されている。「写真5」は放置された、市内の建設中の現場だ。

(写真5)

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%94-s

小口で分けられた販売箇所ごとに、パネルの電圧変換器を置く。そのために別荘地清里の入り口の国道141号線は変圧器と電柱が並ぶ異様な景観になっている。発電効率も悪い。(写真6)

(写真6)

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%95-s

ある会社は、太陽光パネル組み立てキットを販売し、個人に工事をさせ、そのパネルからの電気を買うと広告している。「写真7」はそれでできた太陽光発電設備だ。公道に張り出し、交通を妨げる違法な建築だ。また足場は鉄パイプでできた脆弱なもの。強い風によって一瞬で壊れるだろう。パネルは何十キロもある。周辺に強風などで飛ばされた場合に、人を殺傷したり、物を壊したりする可能性がある。

(写真7)

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%98-s

最近は、事業者の広告が派手になってきた。社名は伏せるが、2つの会社の広告を見てみよう。利益だけが書いてある。買い取り期間は20年だが、その間に太陽光発電設備が壊れるリスク、供給責任の義務などをまったく説明していない。これは投資広告として問題だ。また電力事業への責任、公的資金を受け取る責任は見えない。これらの会社は北杜市でビジネスを行っている。

(写真8)

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%96

(写真9)

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%97

再エネの支援金は、強制的に私たちや企業の電気代から徴収されるため、一種の税金のようなもの。しかし、そうした資金によって支援されることに、正当性があるとは思えない、責任のない事業者もかなり太陽光発電に参入している。

そして北杜市は行政が無策だ。現在は、住民間の対立が起こっているという。太陽光発電に反対しないのに景観と生活を守ろうと主張する市民を「アカ」呼ばわりする地元の旧住民がいるという。もちろん政治団体は関係ない。住民によれば、最近は反対運動が激しいために、夜に工事をして木を切り、朝に事業者が挨拶に来る例があったという。「私たちは太陽光発電の設置をやめろとは言っていない。社会に調和した規制を求めているだけです」と、北杜市の住民は話していた。北杜市では生活環境の維持に関心を集める人は別荘所有者や引退後に北杜市の自然に魅了されて引っ越した新住民が多い。自分の耕作放棄地や放置した森林を事業者に貸したり売ったりして、利益を得ようとする人が旧住民の一部にいるという。

国による早急な規制を

ちなみに、ドイツ、北欧では、再エネの開発によって景観を破壊しないこと、また伐採した分の木を植えるなど自然保護の規制が厳しい。日本の再エネ事業にはそうした配慮がまったく制度の上で行われていない。

再エネの支援策は、2011年の民主党政権時代に、反原発の流れの中で拙速に決まった。当時から、こうした環境破壊の懸念が示された。しかし、それは政治と行政に無視された。再エネの成長は重要だが、発電量が小さく、決して原発の代替にはならない。それなのに、「脱原発の手段」と民主党政権は繰り返した。それは間違いだし、さらに環境破壊の問題も起こっている。

こうした問題は日本の各所で起こっている。これは国による開発規制、ガイドラインをつくり、施行するしかない。このままでは、再エネによって日本の景観は破壊され続けてしまうだろう。早急な対策が必要だ。

This page as PDF

関連記事

  • 化石賞 日本はCOP26でも岸田首相が早々に化石賞を受賞して、日本の温暖化ガス排出量削減対策に批判が浴びせられた。とりわけ石炭火力発電に対して。しかし、日本の石炭火力技術は世界の最先端にある。この技術を世界の先進国のみな
  • 前代未聞の原発事故から二年半を過ぎて、福島の被災者が一番注意していることは仲間はずれにならないことだ。大半が知らない土地で仮の生活をしており、親しく付き合いのできる相手はまだ少ない。そのような状況では、連絡を取り合っている元の町内の人たちとのつながりは、なにより大切なものだ。家族や親戚以外にも従来交流してきた仲間とは、携帯電話やメールなどでよく連絡を取り合っている。仕事上の仲間も大切で、暇にしていると言うと、一緒に仕事をやらないかと声を掛けてくれる。
  • 漢気(おとこぎ)か? 最期っ屁か? 一連の報道を見て思う。フジテレビの経営首脳陣は、本当に「真の髄から腐っている」と言わざるを得ない。 顔ぶれを見れば、ほとんどが高齢の男性ばかり。ダイバーシティの欠片もなく、女性は不在。
  • 3・11の福島原子力事故は、日本のみならず世界の原子力市場に多大なる影響を及ぼした。日本では、原子力安全のみならず原子力行政そのものへの信頼が失墜した。原子力に従事してきた専門家として、また政府の一員として、深く反省するとともに、被災者・避難を余儀なくされている方たちに深くお詫び申し上げたい。
  • 9月24日、国連気候サミットにおいて習近平国家主席がビデオメッセージ注1)を行い、2035年に向けた中国の新たなNDCを発表した。その概要は以下のとおりである。 2025年はパリ協定採択から10年にあたり、各国が新しい国
  • ドイツでは、マスクの着用が感染予防のための止むを得ない措置として、各州で厳格に義務付けられていた時期があった。ただ、ドイツ人にとってのマスクは、常に“非正常”の象徴だったらしく、着用義務が解除された途端、ほとんどの人がマ
  • トランプ次期政権による「パリ協定」からの再離脱が噂されている中、我が国では12月19日にアジア脱炭素議員連盟が発足した。 この議連は、日本政府が主導する「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想をさらに推進させ、
  • ポルトガルで今月7日午前6時45分から11日午後5時45分までの4日半の間、ソーラー、風力、水力、バイオマスを合わせた再生可能エネルギーによる発電比率が全電力消費量の100%を達成した。

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑