鳩山由紀夫氏の体内にもある「トリチウム水」
鳩山元首相が、また放射能デマを流している。こういうトリチウムについての初歩的な誤解が事故処理の障害になっているので、今さらいうまでもないが訂正しておく。
放射線に詳しい医者から聞いたこと。トリチウムは身体に無害との説もあるがとんでもない。トリチウムはDNAに付いてしまい、脳腫瘍、白血病、がんの原因となる。水質基準はEU指令は100ベクレル、米国は700余り、それに対して日本は6万ベクレルと甘い。薄めて海洋放出すれば安全とはとんでもないことだ。
— 鳩山友紀夫(由紀夫)Yukio Hatoyama (@hatoyamayukio) April 3, 2019
トリチウムは水素の放射性同位体で微弱なベータ線を出すが、これは水の中に一定の濃度で含まれているので、自然界にも存在する。トリチウムを含む水を「トリチウム水」と呼ぶなら、それは鳩山氏の体内にもあるのだ。

トリチウムの生物への影響(経産省の資料)
鳩山氏の書いているのは飲料水の水質基準で、これが問題になるのは原発の排水を人間が飲むときだけだ。福島第一原発の湾内のトリチウム濃度は数ベクレル/kgであり、そのまま飲んでも人体に害はないが、現実的な問題は魚に蓄積された放射性物質を摂取するリスクである。
トリチウムは水に溶けるので、海水から魚の体内に吸収されるが、水と一緒に排出されるので生物濃縮は起こらない。したがって原発から排出されるトリチウムが、魚を食べる人間の「DNAに付いて白血病を起こす」ことはありえない。
飲料水の水質基準と原発の排水は別の問題である。EU指令の100ベクレルも米EPAの740ベクレルも飲料水の水質基準(WHOの水質基準は1万ベクレル)だから、それを基準としても、福島の魚からそれ以上検出されない濃度まで排水を薄めて流せばいいのだ。
世界的には原発からのトリチウム排出は禁止されておらず、日本でも他の原発からは今でも排出されている。なぜ福島第一原発のトリチウムだけが危険なのか。
福島第一ではトリチウムを完全に除去できないため、トリチウム水が100万トンも貯まり、毎日5000人が人体に無害な水をタンクに入れる作業を続けている。元首相が放射能デマで恐怖をあおると、事故処理がおくれて福島県民が迷惑する。このツイートは削除して訂正すべきだ。

関連記事
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 IPCC報告では、産業革命が始まる1850年ごろまでは、
-
原発における多層構造の請負体制は日本独自のものであるが、原発導入が始まって以来続けられているには、それなりの理由がある。この体制は、電力会社、原子炉メーカー、工事会社、下請企業、作業者、さらには地元経済界にとって、それぞれ都合が良く、また居心地の良いものであったため、この体制は関係者に強く支持されてきた。
-
原発のテロ対策などを定める特重(特定重大事故等対処施設)をめぐる混乱が続いている。九州電力の川内原発1号機は、今のままでは2020年3月17日に運転停止となる見通しだ。 原子力規制委員会の更田委員長は「特重の完成が期限内
-
東日本大震災で発生した災害廃棄物(がれき)の広域処理が進んでいない。現在受け入れているのは東京都と山形県だけで、検討を表明した自治体は、福島第1原発事故に伴う放射性物質が一緒に持ち込まれると懸念する住民の強い反発が生じた。放射能の影響はありえないが、東日本大震災からの復興を遅らせかねない。混乱した現状を紹介する。
-
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から5年が経過した。震災と事故の復旧は着々と進み、日本の底力、そして日本の人々の健全さ、優秀さを示した。同時にたくさんの問題も見えた。その一つがデマの拡散だ。
-
風評被害: 根拠のない噂のために受ける被害。特に、事件や事故が発生した際に、不適切な報道がなされたために、本来は無関係であるはずの人々や団体までもが損害を受けること。例えば、ある会社の食品が原因で食中毒が発生した場合に、その食品そのものが危険であるかのような報道のために、他社の売れ行きにも影響が及ぶなど。
-
サントリー、水クレジットの認証組織 資源の再生量評価 サントリーホールディングス(HD)は、地下への水の浸透量を増やすことで創出する「ウオータークレジット」など生物多様性クレジットの仕組み作りに乗り出した。 (中略) 水
-
福島における原発事故の発生以来、世界中で原発の是非についての議論が盛んになっている。その中で、実は「原発と金融セクターとの関係性」についても活発に議論がなされているのだが、我が国では紹介される機会は少ない。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間