メガソーラーのリサイクルは回らないという現場の声
「有害物質によって土壌や地下水汚染が起きるのではないか?」についての懸念について、実際のところ、太陽光パネルのほとんどは中国製であるため、パネル性状の特定、必要な情報の開示がなされているのか甚だ疑問であり、中国製廃棄パネルの寿命が来たり故障したりして大量に排出される場合、廃棄物処理の処理チェーンが破綻してしまうような気がする。
その場合、土壌や地下水汚染が起きる可能性が大きくなる。中国製パネルについては、パネルの製造過程や品質、フォローアップについても信頼がおけず、産廃処理の点からも問題が多々発生する可能性があるからである。
(中略)
この解体・撤去については、メガソーラーの場合も同じで、実際の事業者が二転三転して責任の所在がはっきりせず、不用となった設備が放置される恐れが指摘されている。
2022年7月から、10kW以上の太陽光発電設備のすべてに対して廃棄費用の積立が義務化されたが、実際に積み立てを行っている事業者は2割程度だといわれている。責任の所在が分からず設備が放置された場合、自治体が膨大な負担を強いられることになり、そこでも私たちの税金が使われることになるのであろうか!この積立制度が機能するよう、制度設計の見直しを要求したい。
この指摘は大変重要だと思います。技術的には可能でもコストの問題で普及しなかった製品・サービスなんて歴史上いくらでもありますし、性状の伝達が正確になされなければリサイクルはできません。 特に中国製太陽光パネルの場合、DfE(Design for Environment、環境配慮設計)や有害物質に関する情報伝達が機能するとは考えにくいのです。室中氏の指摘はまさに我が意を得たり、です。
そして、先日ある廃棄物処理業者さんへ行った際に社長から伺ったお話が衝撃でした。主な会話の内容です。
筆者:今後太陽光パネルが大量に出てきたら御社も大変ですよね。処理業者さんでパネルの大量保管はできないので、PCB(Poly Chlorinated Biphenyl、ポリ塩化ビフェニル)みたいにユーザー側で保管させられて何年も順番待ちになりませんか。
社長:わっはっは。我々は全く大変になりませんよ。巷間言われているようなパネルの大量処理問題は発生しません。
筆者:???
社長:悪質な事業者は逃げますから。企業さんの工場や店舗で持っているパネルや住宅の屋根のパネルは人が保管しながら徐々に出せるので処理可能でしょうけど、メガソーラーは山の中に置き去りにされます。つまりパネルの大量処理問題は起きないんです(笑)。
筆者:ええええ!?それでは土壌汚染になりませんか。
社長:なります。恐ろしいです。でも自治体は手を出せないでしょう。パネルの量が多すぎますし、事業者が逃げたら誰がコストを負担するのか。
社長:お金を積み立てて処分まで責任を持つ真面目な事業者がバカを見ることになりますし、自治体がやるとなったら逃亡する事業者がさらに増えます(笑)。
社長:汚染や火災を防ぐため、とにかくどこかに集めないと。でも、誰が回収して運搬してどこに保管するのか。太陽に当たると発電するのでPCBより保管も大変です。自治体がやるということは税金になります。回収や運搬なら費用を見積もれますが、処理費用は無理です。誰もはじけない。自治体がやるとしても回収・運搬まででしょうね。それも保管場所と管理体制が確保できたら、の話ですが。たぶん無理です。
社長:技術的にはリサイクル可能なのでおっしゃる通り、何らかの形で保管ができたらPCBのように順番待ちになる可能性はもちろんありますが、パネルのリサイクルには膨大なコストがかかります。事業者が逃げたら性状も分からないので含有物質の分析から始めることになる。さらに手間と時間とコストが必要。
社長:土地の問題はありますが、リサイクルせずに全部埋める方がまだ費用負担は軽いでしょうね。すると我々の出番はありません。太陽光がエコなわけがないです。
社長:どう転んでもメガソーラーのリサイクルは回りません。技術的な問題じゃないんです。コストと保管の問題なんです。
現場でリサイクルに携わっている処理業者の声は重い。冗談半分の雑談でしたが、途中から絶句してしまいました。
もちろん多くの太陽光発電事業者は逃げたりしないと思いますが、全国各地で太陽光事業者が様々なトラブルを起こしていることも事実です。こんな未来にならないことを願います。
■
6月14日に新刊が出ます。ぜひご覧ください。
『SDGsエコバブルの終焉』(宝島社)
関連記事
-
12月3日放送の言論アリーナ「米国ジャーナリストの見る福島、原発事故対策」に、出演した米国のジャーナリスト、ポール・ブルースタイン氏が、番組中で使った資料を紹介する。(全3回)
-
原子力規制、日本のおかしさ 日本の原子力規制には多くの問題がある。福島原発事故を受けて、原子力の推進と規制を同一省庁で行うべきではないとの従来からの指摘を実現し、公取委と同様な独立性の高い原子力規制委員会を創設した。それに踏み切ったことは、評価すべきである。しかし、原子力規制委員会設置法を成立させた民主党政権は、脱原発の政策を打ち出し、それに沿って、委員の選任、運営の仕組みなど大きな問題を抱えたまま、制度を発足させてしまった。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPR(グローバルエナジー・ポリシーリサーチ)はサイトを更新しました。
-
言論アリーナ「2050年の再エネと原発」を公開しました。 ほかの番組はこちらから。 経産省は2050年に向けてのエネルギー戦略を打ち出しました。そこでは再エネがエネルギーの中心に据えられていますが、果たして再エネは主役に
-
田中 雄三 国際エネルギー機関(IEA)が公表した、世界のCO2排出量を実質ゼロとするIEAロードマップ(以下IEA-NZEと略)は高い関心を集めています。しかし、必要なのは世界のロードマップではなく、日本のロードマップ
-
この原稿はロジャー・ピールケ・ジュニア記事の許可を得た筆者による邦訳です。 欧州の天然ガスを全て代替するには、どれだけの原子力が必要なのか。計算すると、規模は大きいけれども、実行は可能だと分かる。 図は、原子力発電と天然
-
かつて省エネ政策を取材したとき、経産省の担当官僚からこんなぼやきを聞いたことがある。「メディアの人は日本の政策の悪い話を伝えても、素晴らしい話を取材しない。この仕事についてから日本にある各国の大使館の経済担当者や、いろんな政府や国際機関から、毎月問い合わせの電話やメールが来るのに」。
-
ESG投資について、経産省のサイトでは、『機関投資家を中心に、企業経営の持続可能性を評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間