ガソリン補助金延長は政府の脱炭素目標と矛盾する

2023年08月24日 06:40

NithidPhoto/iStock

2023年8月22日付アゴラ記事「ガソリン補助金が9月以降も延長 岸田首相の「ガソリンポピュリズム」」より。

岸田首相は、エネルギー価格を抑制している補助金が9月以降なくなることに対する「物価が上がる」という苦情を受け、補助金を延長する方針を示しました。

しかしなぜガソリンだけ優遇されるのでしょうか。全国民が負担する電気代も、9月から上がるのですが。

岸田首相の特徴は、アドホックに補助金をばらまき、それをやめる段階になると補助金をもらっている声の大きい人に負けてずるずると延長するなし崩しポピュリズムです。

アゴラ編集部のご指摘の通りです。そして、ガソリン補助金の延長は日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」「2030年にCO2排出量46%削減」という脱炭素目標や、GX実行会議で進められているカーボンプライシング、炭素税とも完全に矛盾します。以前も指摘しました。

2022年3月15日付アゴラ記事「政府は脱炭素など本気でめざしていない」より。

ウクライナ戦争以前から始まっていた世界的な脱炭素の流れで原油高になっているのに、CO2排出量の2030年46%削減を掲げている政府が補助金を出して価格抑制に走るというのは理解に苦しみます。

化石燃料の価格が上がって消費量が抑えられれば炭素税と同じ効果になりますが、

(中略)

補助金を出して右往左往しているということこそが、政府が本気で脱炭素なんてめざしていないということの表れです。

もしも本気で政府が脱炭素をめざすのであれば、補助金(=これも国民の血税です)を出して価格を抑制するのではなく、必要なコストを説明した上で国民に納得してもらわなければなりません。

GX実行会議や経産省、環境省の審議会などでは、脱炭素を進めるためにはエネルギー使用量を減らす必要がある、CO2排出量に応じて税金やペナルティを課すのだ、という方向で議論が進んできたはずです。つまり、ガソリンや電気を問わずあらゆるエネルギー価格を上げることで使用量を抑制すると言ってきたわけです。

補助金で化石燃料そのものであるガソリン価格を抑制することは脱炭素社会をめざすという政府の方針と完全に矛盾します。言葉は悪いですが二枚舌と言ってもいい。物価高から国民生活を守るためにガソリン補助金を延長するのであれば、産業界のコスト負担軽減や国際競争力維持のためにカーボンプライシングや炭素税も見直してほしいものです。

政府が脱炭素目標を一旦棚上げにすれば、ガソリン補助金はなんの矛盾もありません。加えて、原子力発電の再稼働、火力発電のフル稼働、無理な再エネ導入抑止、再エネ賦課金の廃止などでエネルギー価格を下げれば、内閣支持率も向上するのではないでしょうか。

『「脱炭素」が世界を救うの大嘘』

『メガソーラーが日本を救うの大嘘』

『SDGsの不都合な真実』

This page as PDF

関連記事

  • 今年7月末に「『気候変動・脱炭素』 14のウソ」という日本語の書が出版された。著者は渡辺正博士。全体は「気候変動」編と「脱炭素」編に分かれ、それぞれ7つの「ウソ」について解説されている。前稿の「気候変動」編に続き、今回は
  • 米朝首脳会談の直前に、アメリカが「プルトニウム削減」を要求したという報道が出たことは偶然とは思えない。北朝鮮の非核化を進める上でも、日本の核武装を牽制する必要があったのだろう。しかし日本は核武装できるのだろうか。 もちろ
  • 元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 先日、NHKのBS世界のドキュメンタリーで「地球温暖化はウソ?世論動かす“プロ”の暗躍」と言う番組が放送された。番組の概要にはこうある。 世界的な潮流に反してアメリカの保守派に
  • 【原発再稼動をめぐる政府・与党の情勢】 池田 本日は細田健一衆議院議員に出演いただきました。原発への反感が強く、政治的に難しいエネルギー・原子力問題について、政治家の立場から語っていただきます。経産官僚出身であり、東電の柏崎刈羽原発の地元である新潟2区選出。また電力安定推進議員連盟の事務局次長です。
  • 前回、「再エネ100%で製造」という(非化石証書などの)表示が景品表示法で禁じられている優良誤認にあたるのではないかと指摘しました。景表法はいわばハードローであり、狭義の違反要件については専門家の判断が必要ですが、少なく
  • シナリオプランニングは主に企業の経営戦略検討のための手法で、シェルのシナリオチームが“本家筋”だ。筆者は1991年から95年までここで働き、その後もこのチームとの仕事が続いた。 筆者は気候変動問題には浅学だが、シナリオプ
  • 私の専門分野はリスクコミュニケーションです(以下、「リスコミ」と略します)。英独で10年間、先端の理論と実践を学んだ後、現在に至るまで食品分野を中心に行政や企業のコンサルタントをしてきました。そのなかで、日本におけるリスク伝達やリスク認知の問題点に何度も悩まされました。本稿では、その見地から「いかにして平時にリスクを伝えるのか」を考えてみたいと思います。
  • 日独エネルギー転換協議会(GJTEC)は日独の研究機関、シンクタンク、研究者が参加し、エネルギー転換に向けた政策フレームワーク、市場、インフラ、技術について意見交換を行うことを目的とするものであり、筆者も協議会メンバーの

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑