誰も真面目にやっていないカーボンニュートラル
2050年にCO2ゼロという昨年末の所信表明演説での宣言に続いて、この4月の米国主催の気候サミットで、菅首相は「日本は2030年までにCO2を46%削減する」ことを目指す、と宣言した。
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2021/05/iStock-909895442-660x392.jpg)
Olivier Le Moal/iStock
これでEU、米国・カナダ、日本といった先進国は、軒並み2030年までにCO2をほぼ半減すると宣言した訳だ。
だが宣言はしたけれど、全然、政策の実体が伴っていない。
そう指摘するのは、欧州の環境NGOであるClimate Action Tracker(CAT)である。
CATは1.5℃という気温の目標を実現するためには「2030年CO2半減および2050年CO2ゼロ」という排出の目標を実現する必要があると考えている。
しかしながら、CATのホームページのマップを見ると、EU、米国・カナダ、日本のいずれも、1.5℃目標を達成する見込みの国はゼロだ。このことは、図中で、黄緑色の先進国が全く無いことから分かる。
![](https://agora-web.jp/cms/wp-content/uploads/2021/05/0003c411bf74d62e5f64c1c064ab4189-660x353.png)
図 気温目標を達成する見込み。図はCATによる。色分けは、黒:決定的に不足、赤:かなり不足、橙:不足、黄:2℃目標に整合、黄緑:1.5℃目標に整合、緑:理想的。
それどころか、1.5℃よりは緩い2℃という目標ですら、それに整合する先進国はゼロであることが、黄色に塗られた国が無い事から分かる。
この分析がどこまで正しいかは、今回は措いておく。
だがはっきり分かることは、
どの国も、威勢の良い目標を言っているだけで、全然真面目に達成しようとしていない。
ということだ。
だいたい、2030年半減とか、2050年ゼロなど、少し技術のことを知っていれば、不可能だということはすぐに分かることだ。
日本人は真面目なので、「2030年にCO2を46%削減しなければならない」と本当に思い詰めている人が多い。けれど、現実はこのようなものだ。よく世界を見渡して、貧乏くじを引かないように気を付けないといけない。
![This page as PDF](https://www.gepr.org/wp-content/plugins/wp-mpdf/pdf.png)
関連記事
-
福島第一原子力発電所事故の後でエネルギー・原子力政策は見直しを余儀なくされた。与党自民党の4人のエネルギーに詳しい政治家に話を聞く機会があった。「政治家が何を考えているのか」を紹介してみたい。
-
洋上風力発電事業を巡る汚職事件で、受託収賄容疑で衆院議員、秋本真利容疑者が逮捕された。捜査がどこまで及ぶのか、今後の展開が気になるところである。各電源の発電コストについて、いま一度確認しておきたい。 2021年8月経済産
-
新年ドイツの風物詩 ドイツでは、色とりどりの花火で明るく染まる夜空が新年の風物詩だ。日本のような除夜の鐘の静寂さとは無縁。あっちでドカン、こっちでシュルシュルの “往く年、来る年”だ。 零時の時報と共にロケット花火を打ち
-
おなじみ国連のグテーレス事務総長が「もはや地球温暖化(global warming)ではなく地球沸騰(global boiling)だとのたまっている。 “地球沸騰”の時代!?観測史上最高気温の7
-
連日、「化石燃料はもうお仕舞いだ、脱炭素だ、これからは太陽光発電と風力発電だ」、という報道に晒されていて、洗脳されかかっている人も多いかもしれない。 けれども実態は全く違う。 NGOであるREN21の報告書に分かり易い図
-
「海外の太陽、風力エネルギー資源への依存が不可欠」という認識に立った時、「海外の太陽、風力エネルギー資源を利用して、如何に大量かつ安価なエネルギーを製造し、それをどのように日本に運んでくるか」ということが重要な課題となります。
-
先の国会の会期末で安倍晋三首相の問責決議可決などの政治の混乱により、政府が提出していた“電気事業法変更案”が廃案になった。報道によると、安倍首相は「秋の臨時国会で直ちに成立させたい」と述べたそうだ。
-
アゴラ研究所の運営するネット放送「言論アリーナ」。 今回のテーマは「アメリカの環境政策と大統領選挙」です。 アメリカではグリーン・ニューディールという大胆な地球温暖化対策が議会に提案され、次の大統領選挙とからんで話題にな
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間