CO2ゼロのための禁止リスト!あなたは耐えられますか?

2021年04月30日 00:54
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

イギリスも日本と同様に2050年にCO2をゼロにすると言っている。それでいろいろなシナリオも発表されているけれども、現実的には出来る分けが無いのも、日本と同じだ。

katerina_Simonova/iStock

けれども全く懲りることなく、シナリオが1つまた発表されたが、これはもはや爆笑モノだ。

レポートを読むと、まず現時点では夢物語の技術が並んでいる。なんでも電化するとかリサイクルするとか。ここまではもうあちこちで見飽きたので細かくは紹介しない。

傑作なのは「ライフスタイルの変更」だ。

曰く、技術だけではなく、ライフスタイルを変えなければ、CO2ゼロは達成できないそうだ。

それで、並んでいるリストを見ると:

  • 飛行機禁止
  • 船舶禁止

いずれも化石燃料を使うから、まずは禁止しないとダメなんだそうだ。下図の「ロードマップ」で、上から3行目と4行目のところに「進入禁止マーク」があるが、2050年までに飛行機と船舶を禁止するそうだ。

ちなみに電車は許されていて、ユーロトンネルを使って大陸と行き来はできる。

これだけでも恐ろしいが、なんと

  • 肉食禁止

たしかに、いま温室効果ガス排出の3分の1は食料に関するものだといわれ、肉食はとくに温室効果ガスの排出が多い。飼料穀物を大量に必要とするからだ。

トラクター、トラック、食品加工、冷蔵、冷凍など、エネルギーを多く使ってCO2が出る。肥料も農薬も製造時にエネルギーを大量に使う。牛や羊はゲップやオナラをしてメタンガス(これも温室効果ガスの1つ)を出すし、肥料は分解されて亜酸化窒素ガス(これも温室効果ガスの1つ)を出す。

しかしだからと言って、イギリスの国民食である牛肉も羊肉も禁止とは!2050年にはベジタリアンになったイギリス人が、海外旅行も物資輸入もユーロトンネルだけに頼ってほそぼそと暮らすらしい。穴に住むピーターラビットじゃあるまいし。

これを政策にしたら、さすがに暴動が起きるだろうね、きっと。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 昨年12月にドバイで開催されたCOP28であるが、筆者も産業界のミッションの一員として現地に入り、国際交渉の様子をフォローしながら、会場内で行われた多くのイベントに出席・登壇しつつ、様々な国の産業界の方々と意見交換する機
  • 青山繁晴氏は安全保障問題の専門家であり、日本の自立と覚醒を訴える現実に根ざした評論活動で知られていた。本人によれば「人生を一度壊す選択」をして今夏の参議院選挙に自民党から出馬、当選した。  政治家への転身の理由は「やらね
  • 時代遅れの政治経済学帝国主義 ラワースのいう「管理された資源」の「分配設計」でも「環境再生計画」でも、歴史的に見ると、学問とは無縁なままに政治的、経済的、思想的、世論的な勢力の強弱に応じてその詳細が決定されてきた。 (前
  • 今年も例年同様、豪雨で災害が起きる度に、「地球温暖化の影響だ」とする報道が多発する。だがこの根拠は殆ど無い。フェイクニュースと言ってよい。 よくある報道のパターンは、水害の状況を映像で見せて、温暖化のせいで「前例のない豪
  • 日本政府は第7次エネルギー基本計画の改定作業に着手した。 2050年のCO2ゼロを目指し、2040年のCO2目標や電源構成などを議論するという。 いま日本政府は再エネ最優先を掲げているが、このまま2040年に向けて太陽光
  • 東日本大震災を契機に国のエネルギー政策の見直しが検討されている。震災発生直後から、石油は被災者の安全・安心を守り、被災地の復興と電力の安定供給を支えるエネルギーとして役立ってきた。しかし、最近は、再生可能エネルギーの利用や天然ガスへのシフトが議論の中心になっており、残念ながら現実を踏まえた議論になっていない。そこで石油連盟は、政府をはじめ、広く石油に対する理解促進につなげるべくエネルギー政策への提言をまとめた。
  • きのうの言論アリーナでは、東芝と東電の問題について竹内純子さんと宇佐見典也さんに話を聞いたが、議論がわかれたのは東電の処理だった。これから30年かけて21.5兆円の「賠償・廃炉・除染」費用を東電(と他の電力)が負担する枠
  • 猪瀬直樹氏が政府の「グリーン成長戦略」にコメントしている。これは彼が『昭和16年夏の敗戦』で書いたのと同じ「日本人の意思決定の無意識の自己欺瞞」だという。 「原発なしでカーボンゼロは不可能だ」という彼の論旨は私も指摘した

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑