SDGsコンサルがなぜか言及しない世界最大の人権問題

2021年07月04日 07:00

日本のSDGsコンサルやESG投資の専門家の皆さんは、なぜかウイグル・チベット問題に対して触れたがりません。何年も前から折に触れて質問するのですがいつもはぐらかされます。近年で言えば香港や内モンゴルについても言及している人をほとんど見たことがありません。人権問題は、SDGsはもちろんのこと環境(E)・社会(S)・企業統治(G)のSで最重要テーマのはずですが。

新疆ウイグル自治区の人権抑圧に関しては、世界ウイグル会議日本ウイグル協会からたびたび悲痛な発信が繰り返されており、日本でも新疆綿や太陽光パネルに関する強制労働の疑いが知られるようになりました。米国では、昨年12月にトランプ政権(当時)が綿製品を、バイデン政権になった今年も1月にトマト6月には太陽光パネルを、それぞれ輸入禁止にしました。2021年6月のG7サミットでは国際サプライチェーンにおける強制労働の根絶へ連携を強化すると表明し、問題取引が多い分野として「農業、太陽光、衣料品」を挙げました(2021年6月15日付時事通信)。これらは現代における世界最大の人権抑圧に対抗する歴史的な動きと言っても過言ではありません。グレタさんを礼賛するSDGs/ESGコンサルの皆さんがこれらの行動に対して称賛の声を上げないのはなぜでしょうか。

rweisswald/iStock

日頃は、人権やエシカル消費などと言って日本企業にサプライチェーン管理を強化するよう指導したり、女性の役員や管理職が少ないなどと指摘したり、あるいはSNS上でTBM社のLIMEXJパワー社の火力発電、日本企業の生分解性プラスチックやCO2分離回収技術などを取り上げて「これはSDGsウォッシュじゃないか!」と指弾しているのに、強制労働による製品の輸入を禁止する米「ウイグル強制労働防止法案」を骨抜きにしようとロビー活動を展開したナイキ、アップル、コカ・コーラ等(2021年3月31日付ニューズウィーク日本版)を批判しないのは矛盾としか言いようがありません。いずれもウェブサイト上でSDGsやサプライチェーンにおける人権配慮などの方針を掲げています(ナイキアップルコカ・コーラ)。

SDGs/ESG投資では環境問題、なかんずく気候変動こそが最重要であって人権問題は重要ではないとでもおっしゃるのでしょうか。企業のCSR/サステナビリティ担当や学生の皆さん、SDGs/ESGコンサルの矛盾に気が付いてください。ウイグル・チベット・香港・内モンゴル問題の解決なくして、2030年に持続可能な社会、誰一人取り残さない社会なんて実現できるわけがないのです。逆に、社会課題は残り続けた方がコンサルビジネスの持続可能性にとって都合がよいのかもしれません。

ところで、私たち日本人もほぼ確実に強制労働由来の衣類を利用しています。筆者はもう3年ほどファストファッションの2社からは購入しておらず、服を買うのは主に大型スーパーやショッピングモールです。どの店舗やメーカーであってもタグを見て中国製の綿製品を避け続けた結果、ほとんどが化繊の衣類で一部日本製の綿製品のみを着るようになりました。高価で辛いのですが、外国製の綿製品が強制労働によって安いのだとすれば買い物かごに入れることはできません。

下記は2019年12月のSNS投稿です。

毎年12月に東京ビッグサイトで開催されるエコプロダクツ展。昨年はコロナの影響でオンライン開催だったため化繊メーカーの皆さんとお話しすることができませんでした。2年前よりは認知度が上がっているはずですので、今後開催されればぜひ意見を交わしたいです。

我が家の家計のためにも日本の化繊メーカーにはがんばっていただきたいのですが、衣料品に限らず強制労働から生み出される安価な素材や製品に技術革新で対抗するのは競争条件としてあまりにも不利です。米国のように日本でもウイグル由来の製品を輸入禁止にすれば日本企業へ追い風になるはずですが、対中非難決議すらできない我が政府では望むべくもないのでしょうか。

This page as PDF

関連記事

  • けさの日経新聞の1面に「米、日本にプルトニウム削減要求 」という記事が出ている。内容は7月に期限が切れる日米原子力協定の「自動延長」に際して、アメリカが余剰プルトニウムを消費するよう求めてきたという話で、これ自体はニュー
  • 6月22日、米国のバイデン大統領は連邦議会に対して、需要が高まる夏場の3か月間、連邦ガソリン・軽油税を免除する(税に夏休みをあたえる)ように要請した。筆者が以前、本サイトに投稿したように、これはマイナスのカーボンプライス
  • エジプトで開かれていたCOP27が終わった。今回は昨年のCOP26の合意事項を具体化する「行動」がテーマで新しい話題はなく、マスコミの扱いも小さかったが、意外な展開をみせた。発展途上国に対して損失と被害(loss and
  • 東京都は太陽光パネルの設置義務化を目指している。義務付けの対象はハウスメーカー等の住宅供給事業者などだ。 だが太陽光パネルはいま問題が噴出しており、人権、経済、防災などの観点から、この義務化には多くの反対の声が上がってい
  • 電力需給が逼迫している。各地の電力使用率は95%~99%という綱渡りになり、大手電力会社が新電力に卸し売りする日本卸電力取引所(JEPX)のシステム価格は、11日には200円/kWhを超えた。小売料金は20円/kWh前後
  • 東北電力原町火力発電所(福島県南相馬市)を訪れたのは、奇しくも東日本大震災からちょうど2年経った3月12日であった。前泊した仙台市から車で約2時間。車窓から見て取れるのはわずかではあるが、津波の爪痕が残る家屋や稲作を始められない田んぼなど、震災からの復興がまだ道半ばであることが感じられ、申し訳なさとやるせなさに襲われる。
  • 福島の原発事故から4年半がたちました。帰還困難区域の解除に伴い、多くの住民の方が今、ご自宅に戻るか戻らないか、という決断を迫られています。「本当に戻って大丈夫なのか」「戻ったら何に気を付ければよいのか」という不安の声もよく聞かれます。
  • 調達価格算定委員会で平成30年度以降の固定価格買取制度(FIT)の見直しに関する議論が始まった。今年は特に輸入材を利用したバイオマス発電に関する制度見直しが主要なテーマとなりそうだ。 議論のはじめにエネルギーミックスにお

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑