風止んで石炭で電気を灯す英国の国連気候会議COP

Mark Lowery/iStock
英国のグラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催されている。
脱炭素、脱石炭といった掛け声が喧しい。
だがじつは、英国ではここのところ風が弱く、風力の発電量が不足。石炭火力だのみで綱渡りの電力供給が続いている。ネット・ゼロ・ウオッチが伝えている。
図1は11月2日から3日にかけての英国の発電量で、30分毎のデータ。図中の2日朝以後(時刻13=朝の6時半以後)に、風力発電(青)が細くなっているのは、風が吹かなかったからだ。稼働率(正確には設備利用率)は僅か5%だった。
この図を見ると風頼みの脆さがよく分かる。
そのため天然ガス火力(CCGT、橙)など他の発電所をフル稼働し、フランス(緑)など周辺国から電気を買い集めたが、それでも足りず、結局、穴埋めをしたのは石炭火力発電(黒)であった。

図1:英国の発電量(公式公開データ)
図中の時刻35(=3日夕方6時半)の電力需要ビークには需給が逼迫し、電力卸売り価格は暴騰、MWhあたり4000ポンドになった(図2)。これは1ポンド156円で換算すると、1KWhあたり624円になる。これは通常の卸売り価格の100倍だ。このような高価格で電気を買い集めたりしたため、停電回避のための費用はこの1日で4470万ポンド、つまり70億円に達した。

図2:英国の卸売り電力価格(公式公開データ)
英国は2024年夏には石炭火力を廃止するとしているが、本当にこのまま突き進むのだろうか。電気代の高騰や停電の頻発が起きるのではないか。英国では与党保守党内でも異論が噴出している。
日本の政治家も早く再エネ幻想から目を覚ましてほしい。
■

関連記事
-
この4月に米国バイデン政権が主催した気候サミットで、G7諸国はいずれも2050年までにCO2ゼロを目指す、とした。 コロナ禍からの経済回復においても、グリーン・リカバリーということがよく言われている。単なる経済回復を目指
-
けさの「朝まで生テレビ!」は、3・11から7年だったが、議論がまるで進歩していない、というより事故直後に比べてレベルが落ちて、話が堂々めぐりになっている。特に最近「原発ゼロ」業界に参入してきた城南信金の吉原毅氏は、エネル
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 論点⑳では、「政策決定者向け要約」の書きぶりが針小棒大に
-
福島の原発事故から4年半がたちました。帰還困難区域の解除に伴い、多くの住民の方が今、ご自宅に戻るか戻らないか、という決断を迫られています。「本当に戻って大丈夫なのか」「戻ったら何に気を付ければよいのか」という不安の声もよく聞かれます。
-
国際環境経済研究所(IEEI)版 衝撃的な離脱派の勝利 6月24日、英国のEU残留の是非を問う国民投票において、事前の予想を覆す「離脱」との結果が出た。これが英国自身のみならず、EU、世界に大きな衝撃を与え
-
「ブラックアウト・ニュース」はドイツの匿名の技術者たちがドイツの脱炭素政策である「エネルギーヴェンデ(転換)」を経済自滅的であるとして批判しているニュースレター(ドイツ語、一部英語、無料)だ。 そのブラックアウト・ニュー
-
波紋を呼んだ原田発言 先週、トリチウム水に関する韓国のイチャモン付けに対する批判を書かせていただいたところ、8千人を超えるたくさんの読者から「いいね!」を頂戴した。しかし、その批判文で、一つ重要な指摘をあえて書かずにおい
-
シンクタンク「クリンテル」がIPCC報告書を批判的に精査した結果をまとめた論文を2023年4月に発表した。その中から、まだこの連載で取り上げていなかった論点を紹介しよう。 ■ IPCCでは北半球の4月の積雪面積(Snow
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間