AIナノボット兵器が核兵器を葬り去る

2021年11月30日 07:00
アバター画像
東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

AIナノボット

近年のAIの発展は著しい。そのエポックとしては、2019年にニューラルネットワークを多層化することによって、AIの核心とも言える深層学習(deep learning)を飛躍的に発展させたジェフリー・ヒントンら3名に「チューリング賞」が贈られたことが挙げられよう。

AIはみじかなところでは自動運転車に搭載されているが、AIを搭載したナノスケールのロボットつまりナノボットも医療や軍事においてすでに実用化されている。1ナノメートルは100万分の1ミリメートルである。

細胞の大きさが0.02ミリメートル、新型コロナウイルスCOVID-19の大きさが約100ナノメートルなので、ナノボットはウイルス程度かそれ以下の大きさしかない。DNAやRNAの基本単位であるヌクレオチド程度の大きさである。

DNAを修復するナノボット
K_E_N/iStock

兵器はAIによる知能化が進んだ目に見えないものが主流になっていく可能性がある。見えないところで戦争が起こり、我々が気がつかないうちに戦いは集結しているーーーそんな戦争がもはや現実のものになっている。

シンギュラリティー 〜強いAIと弱いAI〜

AIの世界的権威であるレイ・カーツワイルによれば、2029年頃に人工知能が人間と同等の知能を持つようになり(プレシンギュラリティーという)、2045年にはシンギュラリティー(技術的特異点)が起こると予想されている。その結果、人間よりもAIの知能が勝り、人間にしかできなかったことのほとんどがロボットやAIが行うようになる。

英国の未来学者イアン・ピアソンは、シンギュラリティーの先2050年頃には、AIコンピュータと人間が統合されて、これまでの人類であるホモ・サピエンスとは全く異なる『ホモ・オプティマス』が登場すると予測している。

そしてさらには、機能の衰えた肉体を人工物つまりサイボーク化する研究も進んでいる。

今のところ私たちが手に入れているAIは「弱いAI」と呼ばれるものである。これは、『アルファ碁ゼロ』のように自ら学習しプロの棋士に圧勝するようなAIであり、人間ではとてもかなわない演算や推論能力を発揮する。一方「強いAI」とは、強力な演算能力はもちろん、ヒトと同じような心つまり意識を持って自律的に行動するという身体を持ったAIである。

レイ・カーツワイルによれば、シンギュラリティー は、人類を単純労働から解放し、エネルギー問題もなくなり、戦争もなくなるなどと予測している。

はたしてAIは人類にこのようなバラ色の将来をもたらすだけなのだろうか。

AIは人類を滅ぼすのか

ここに一つのエピソードがある。AIロボット「ソフィア」の頭部は人間そのもので表情も豊か。彼女はサウジアラビアの市民権も得ている。彼女を一躍有名にした問題発言があった。開発者であるデビット・ハンソン博士がソフィアに「人類を滅ぼしたい?ノーと言ってほしいけど・・・」と尋ねたところ、答えはそうね。滅亡させるわ。」だった。

この発言の後ソフィアは「冗談よ」と発言したが、AIが人間を脅かす日が来るかもしれないと多くの人が感じた瞬間として人類の記憶に書き込まれた。

AIナノボットは核兵器を無意味化する

核兵器の威力にはとても強大なものがある。爆発威力の大きい核兵器だけでなく、アフガンの山岳地帯の岩盤をドリルのように貫いて爆発させて標的を破壊するような小型核の開発も意図された。しかしAIナボットがあれば、大型も小型も含めて核兵器はもはや必要がなくなる。

核爆弾は爆薬を始まりとする熱兵器の最終形態であったが、結果的に決定的な軍事革命を導き出すことはなく、新たな戦争形態を引き起こすこともなかった。核兵器は結局のところ使い物にならない兵器であることを過去70年以上にわたって実証してきた。人類は数千年の戦争の歴史の中で殺傷力や破壊力をいかに効率よく高めるかということに躍起になってきた。その結果としての核兵器は熱兵器の歴史の幕を閉じる役目を果たしたにすぎない。

人類はすでに熱兵器戦争期を終えて、知的兵器戦争期の時代に突入している。

その象徴がAIナノボットである。

1991年の湾岸戦争以降、戦争は情報化の道を貪欲に歩んできている。そして2016年には米国にて「スワーム」という実証実験が行われた。スワームとは群れの意味である。100機程度のマイクロ無人機を用いて、集団として意思決定し編隊飛行などの集団知能行動を実証した。これはいわば多数のスズメバチの群れが標的に襲いかかるようなものである。

このようなスワームの形態は当然ながらAIナノボット兵器にも適用されていく。AIがより自律的な運動性能を向上させ、心あるいは意識のようなものを持ち始めたらどうなるのであろうか。AIナノボット群が敵方のAIナノボット群と自律的に闘い始める・・・

戦争は人類(ホモ・サピエンス)とは違ったホモあるいはもっと別の何かの下に行われるのではないのか。

すでに米軍では戦闘機を制御する軍事AIが人間のパイロットに圧勝している。

もはやAIによる戦闘に人類は追いつけず置いてけぼりを食らってしまうのである。

This page as PDF
アバター画像
東京工業大学原子炉工学研究所助教 工学博士

関連記事

  • 英国のグラスゴーで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催されている。 脱炭素、脱石炭といった掛け声が喧しい。 だがじつは、英国ではここのところ風が弱く、風力の発電量が不足。石炭火力だのみで綱渡りの電
  • ロシアからの化石燃料輸入に依存してきた欧州が、ロシアからの輸入を止める一方で、世界中の化石燃料の調達に奔走している。 動きが急で次々に新しいニュースが入り、全貌は明らかではないが、以下の様な情報がある。 ● 1週間前、イ
  • ANNニュースから
    はじめに インターネットでウランを売買していた高校生が摘発された。普通、試験管に入った量程度のウランを売買するのに国への報告が必要になるとは気が付かないが、実はウランは少量でも国に報告しなければならないことになっている。
  • ESG投資について、経産省のサイトでは、『機関投資家を中心に、企業経営の持続可能性を評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして
  • 2/27から3/1にかけて東京ビッグサイトにおいて太陽光発電の展示会であるPV expoが開催された。 ここ2年のPVexpoはFIT価格の下落や、太陽光発電市場の縮小を受けてやや停滞気味だったが、今年は一転「ポストFI
  • 政府が2021年7月に発表した「2030年CO2排出46%削減」という目標では、年間の発電電力量(kWh)の総量を現在の1兆650億kWhから9400億kWhに低減(=省エネ)した上で、発電電力量の配分を、再エネ38%、
  • 「もんじゅ」の運営主体である日本原子力研究開発機構(原子力機構)が、「度重なる保安規定違反」がもとで原子力規制委員会(規制委)から「(もんじゅを)運転する基本的能力を有しているとは認めがたい」(昨年11月4日の田中委員長発言)と断罪され、退場を迫られた。
  • 何が環境に良いのかはコロコロ変わる。 1995年のIPCC報告はバイオエネルギーをずいぶん持ち上げていて、世界のエネルギーの半分をバイオエネルギーが占めるようになる、と書いていた。その後、世界諸国でバイオ燃料を自動車燃料

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑