英国与党の国会議員団、エネルギー価格の高騰と脱炭素を批判

da-kuk/iStock
エネルギー危機が世界を襲い、諸国の庶民が生活の危機に瀕している。無謀な脱炭素政策に邁進し、エネルギー安定供給をないがしろにした報いだ。
この年初に、英国の国会議員20名が連名で、大衆紙「サンデー・テレグラフ」に提出した意見を紹介しよう。
日本もこれに倣って、国会議員の連名で声明を出してほしいものだ。
2022年、英国はインフレに直面し、それに伴って有権者の生活費が圧迫されることが明らかになっている。
この問題を、「あらゆる国の経済が直面している国際的なコスト圧力のせいだ」と片付けるのは簡単なやり方だ。だが英国は、環境のためと称する税金や賦課金によって、他の国よりもエネルギー価格をいっそう上昇させてしまった。エネルギー価格の高騰は、国内の暖房や輸送のコスト上昇という形で、最も賃金の低い人々にとって、特に痛手になっている。
これ以上エネルギー価格が上がると、多くの人々は生活の危機に直面する。そして貧しくて暖房のための燃料費すら払えないという「エネルギー貧困」と呼ばれる状態に追い込まれる。
私たちは、ボリス・ジョンソン首相に、エネルギーの価格上昇を少しでも抑えることを訴える。
まずは、国内のエネルギーに課されている5%の付加価値税を撤廃すべきだ。
また、企業のエネルギー消費への「気候変動税」は、英国企業の競争力を低下させている。これは事実上、すべての消費者の負担を増加させている。
政府は、消費者や企業に課税しておいて、それを原資に補助金として消費者や市場に還元しているが、これには意味がない。
エネルギー危機が拡大する中で、エネルギー企業がそのような要求をするのも無理はない。しかしそれでは、課税と補助の無駄だらけの循環に陥ってしまう。
英国政府の「ネットゼロ戦略」の実現の道筋においても、なお、天然ガスと石油は、今後数十年において我々のエネルギー利用の中で重要な役割を果たすことになる。
だが現在、国際市場では、天然ガスの需要が高く、他方で供給が限られているために、エネルギーの卸売価格は歴史的な高値になっている。
エネルギー需要を他国、特に(ロシアのような)敵対的な国に依存することのリスクは、今さら指摘するまでもない。
いま英国が直面しているエネルギー危機は、エネルギー安全保障に対する新しいアプローチの必要性を示唆している。
必要なことは、北海油田・ガス田の探査を拡大すること、そして、(米国では活用されているが英国では水質汚染などの環境問題を理由に事実上禁止されている)シェールガスの採掘を支援することだ。
米国の消費者が支払うガス代が、英国の10分の1で済むのは偶然ではない。
天然ガスを(ロシアから)輸入することで、エネルギー安全保障を脆弱にして、天然ガス価格変動のリスクを徒らに高め、また英国の国際収支に悪影響を与えて、しかも雇用を英国から海外に移転することは、どのような環境問題に配慮するにしても、まったく意味がないことだ。
クレイグ・マッケンレイ議員 (保守党)
エスター・マクベイ議員 (保守党)
ロバート・ハルフォン議員 (保守党)
スティーブ・ベイカー議員 (保守党)
ジュリアン・ナイト議員 (保守党)
アン・マリー・モリス議員 (保守党)
アンドリュー・ブリッゲン議員 (保守党)
デビッド・ジョーンズ議員 (保守党)
スコット・ベントン議員 (保守党)
ダミアン・ムーア議員 (保守党)
マーク・ジェンキンソン議員 (保守党)
アンドリュー・ルーア議員 (保守党)
カール・マッカートニー議員 (保守党)
マーカス・ファイシュ議員 (保守党)
リー・アンダーソン議員 (保守党)
フィリップ・デイヴィス議員 (保守党)
グレッグ・スミス議員 (保守党)
オファのリリー卿
アダム・ホロウェイ議員 (保守党)
クレイグ・トレーシー議員 (保守党)
■

関連記事
-
先日アゴラで紹介されていた動画を見ました。12月19日の衆議院国会質疑で、質問者は参政党北野裕子議員。質疑の一部を抜粋します。 日本の脱炭素政策に疑問! 北野裕子議員が電気料金高騰を追及 北野議員:2030年46%削減、
-
菅首相が昨年末にCO2を2050年までにゼロにすると宣言して以来、日本政府は「脱炭素祭り」を続けている。中心にあるのは「グリーン成長戦略」で、「経済と環境の好循環」によってグリーン成長を実現する、としている(図1)。 そ
-
2023年1月20日、世界経済フォーラム(World Economic Forum。以下、WEF)による2023年の年次総会(通称「ダボス会議」)が閉幕した。「世界のリーダー」を自認する層がどのような未来を描こうとしてい
-
エネルギー基本計画の主要な目的はエネルギーの安定供給のはずだが、3.11以降は脱炭素化が最優先の目的になったようだ。第7次エネ基の事務局資料にもそういうバイアスがあるので、脱炭素化の費用対効果を明確にしておこう。 「20
-
スマートジャパン 3月14日記事。環境省が石炭火力発電所の新設に難色を示し続けている。国のCO2排出量の削減に影響を及ぼすからだ。しかし最終的な判断を担う経済産業省は容認する姿勢で、事業者が建設計画を変更する可能性は小さい。世界の主要国が石炭火力発電の縮小に向かう中、日本政府の方針は中途半端なままである。
-
はじめに 原子力にはミニトリレンマ[注1]と呼ばれている問題がある。お互いに相矛盾する3つの課題、すなわち、開発、事業、規制の3つのことである。これらはお互いに矛盾している。 軽水炉の様に開発済みの技術を使ってプラントを
-
東電の賠償・廃炉費用は21.5兆円にのぼり、経産省は崖っぷちに追い詰められた。世耕経産相は記者会見で「東電は債務超過ではない」と言ったが、来年3月までに債務の処理方法を決めないと、純資産2兆3000億円の東電は債務超過になる。
-
東日本大震災から2年。犠牲者の方の冥福を祈り、福島第一原発事故の被害者の皆さまに心からのお見舞いを申し上げます。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間