米国議会報告「欧州の官製エネルギー危機を見習うな」

da-kuk/iStock
昨年の11月に米国上院エネルギー・天然資源委員会(U.S. Senate Committee on Energy and Natural Resources委員長はJohn Barrasso上院議員、ワイオミング州選出、共和党)が「ヨーロッパのエネルギー危機:アメリカへの警告」と題する報告書を公表した。
要点は以下のとおり。
- 欧州のエネルギー危機は政策的なものだ。
- グリーンな政策の結果、風力発電と輸入天然ガスに極端に依存するようになったが、風力不足が原因で天然ガスが品薄・高価格になった。独占的なガス供給者となったロシアはガスの欧州向け販売量を抑制している。
- 欧州ではガス・電力価格が高騰し、需給はひっ迫している。
以上は今や様々なところで言われているものと同じだが、データを挙げながら詳しく記述してある。例えばオランダの市場でのガス価格の高騰、欧州諸国の電力価格の高騰、などである。
同報告は、「欧州の真似をすれば、米国でも同様なエネルギー危機が起きる」としている。温暖化問題への解決策としては、規制や税で強引に進めるのではなく、CCSや原子力などの技術開発を進め、安価、安定で規模拡大が可能な技術を実現することが重要だ、としている。
このような報告が議会から出てくることは重要だ。日本の議会でも、「欧州の官製エネルギー危機の真似をしてはいけない」という報告を出してはどうだろうか?
■

関連記事
-
8月に入り再エネ業界がざわついている。 その背景にあるのは、経産省が導入の方針を示した「発電側基本料金」制度だ。今回は、この「発電側基本料金」について、政府においてどのような議論がなされているのか、例によって再生可能エネ
-
前回書いたように、11月25日に、政府は第7次エネルギー基本計画におけるCO2削減目標を2035年に60%減、2040年に73%減、という案を提示した(2013年比)。 この数字は、いずれも、2050年にCO2をゼロにす
-
米国の第47代大統領就任式は、予想される厳しい寒さのため40年ぶりに屋内で行われる模様。その40年前とはあの第40代ロナルド・レーガン大統領の就任式だった。 中曽根康弘首相(当時)は1983年1月に初訪米し、レーガン大統
-
国際エネルギー機関(IEA)は、毎年秋にWorld Energy Outlook(WEO)を発刊している。従来バイブル的な存在として世界中のエネルギー関係者の信頼を集めていたWEOに、近年変化が起きている。 この2月にア
-
「いまや太陽光発電や風力発電が一番安い」というフェイクニュースがよく流れている。だが実際のところ、風力発電を大量に導入しているイギリスでは電気代の上昇が止まらない。 英国のシンクタンクGWPFの報告によると、イギリスの再
-
村上さんが委員を務める「大阪府市エネルギー戦略会議」の提案で、関西電力が今年の夏の節電期間にこの取引を行います。これまでの電力供給では、余分に電力を作って供給の変動に備えていました。ところが福島の原発事故の影響で原発が動かせなくなり、供給が潤沢に行えなくなりました。
-
「電力システム改革」とはあまり聞きなれない専門用語のように思われるかもしれません。 これは、電力の完全な自由化に向けて政府とりわけ経済産業省が改革の舵取りをしています。2015年から2020年にかけて3ステップで実施され
-
昨年11月の原子力規制委員会(規制委)の「勧告」を受けて、文部科学省の「『もんじゅ』の在り方に関する検討会(有馬検討会)」をはじめとして、様々な議論がかわされている。東電福島原子力事故を経験した我が国で、将来のエネルギー供給とその中で「もんじゅ」をいかに位置付けるか、冷静、かつ、現実的視点に立って、考察することが肝要である。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間