アメリカの気温観測データは温暖化を過大評価
米国海洋気象庁(NOAA、ノアと読む)の気温計測データについて最新の批判報告が出た。(報告書、ビデオクリップ)
気温計測する場合は、温度計を格納している通風筒を芝生の上に設置し、その周り100フィートには建物や木はあってはならない、というのが規則。他にもいくつか規則がある。
だがその条件を満たす観測所は全体の8%しかない、という。図でCRN ratingというのが観測所のランクづけ。CRN=1, 2 はまあ合格だが、CRN=3,4,5だと誤差が大きくなる。
下記の観測所では、もともとは芝生の中に気温計があったのだが、まわりが建て込んできて、いまでは舗装された駐車場に設置されている。これではアスファルトが熱を持つので気温はかつてより暑くなってしまう。
米国平均の気温上昇はNOAAの公式データだと10年あたり0.324℃とされているが、これは条件の悪い観測値が混入している。
「何年ぶりの猛暑」とか、「観測史上最高の気温」などとしばしば報じられるが、このような質の悪いデータに基づいている。
条件のよいCRN=1,2 だけであれば、気温上昇は10年あたり0.204℃となり、気温上昇のペースは6割程度になる:
米国では、地球温暖化観測所のネットワーク(US Climate Reference Network)が整備されて、そこでは理想的な気温観測をしている。2005年以降しかデータがないが、それを見ると今のところ有意な気温上昇にはなっていない。今後データが蓄積されるとどうなるか注目される。
更に詳しくは、ビデオクリップを見ると、分かり易く説明してある(英語だが、字幕が使える)。また報告書の末尾には、問題ある観測所の写真がたくさん載っていて、観測状況のひどさがよく分かる。
■
関連記事
-
「2年10ヶ月の懲役刑」というのが、ノートライン=ヴェストファーレン州のボッフム州立裁判所が7月1日に下した判決だった。被告は、医師であるハインリヒ・ハービク氏、67歳。裁判長ペトラ・ブライヴィッシュ=レッピング氏によれ
-
マサチューセッツ工科大学(MIT)の科学者たちによる新しい研究では、米国政府が原子力事故の際に人々が避難すること決める指標について、あまりにも保守的ではないかという考えを示している。
-
「もしトランプ」が大統領になったら、エネルギー環境政策がどうなるか、これははっきりしている。トランプ大統領のホームページに動画が公開されている。 全47本のうち3本がエネルギー環境に関することだから、トランプ政権はこの問
-
他方、六ヶ所工場に関連してもう一つ、核不拡散の観点からの問題がある。すなわち、はっきりした使途のない「余剰プルトニウム」の蓄積の問題である。
-
国境調整炭素税を提唱したフォンデアライエン次期欧州委員長 先般、次期欧州委員長に選出されたフォンデアライエン氏は今後5年間の政策パッケージ案において6つの柱(欧州グリーンディール、人々のために機能する経済、デジタル時代へ
-
COP27が終わった。筆者も後半1週間、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された国連「気候変動枠組条約」締約国会合であるCOPの場に参加してきたが、いろいろな意味でCOPの役割が変貌していることを痛感するとともに、
-
最近、放射線の生体影響に関する2つの重要なリポートが発表された。一つは、MIT(マサチューセッツ工科大学)の専門家チームが発表した研究成果(「放射能に対する生物学的解析の統合研究?ネズミへの自然放射線比400倍の連続照射でDNAの損傷は検出されず」(英語要旨)「MITニュースの解説記事」)である。
-
「原子力文明」を考えてみたい筆者は原子力の安全と利用に長期に携わってきた一工学者である。福島原発事故を受けて、そのダメージを克服することの難しさを痛感しながら、我が国に原子力を定着させる条件について模索し続けている。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間