IPCC報告の論点㊶:CO2濃度は昔はもっと高かった

2022年02月14日 07:00
杉山 大志
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

Natalia Darmoroz/iStock

2021年8月に出たIPCCの報告の要約の図Figure TS.9を見ると、CO2濃度上昇し、過去200万年で最高の水準に達した、としている。こう言うと、まるで未曽有の危険領域に達したかのようだ。

要約の図 Figure TS.9

けれども、本文をひっくり返して図Figure 2.3を見ると、昔はもっとCO2濃度が高かったことが分かる。

本文の図Figure 2.3

図の上から順に(a)は過去4.5億年、(b)は過去5500万年、(c)は過去350万年。さまざまな点があるが、これは地層中の堆積物の同位体の分析による測定値。

かなり誤差が大きいが、総合的な推計値と誤差範囲も記してある。

これを見ると、過去の地球では500ppmや1000ppmになるのは当たり前であり、現在の410ppmや「産業革命前」とされる280ppmというのは、むしろ地球の歴史から見れば極めて低いCO2濃度であることが分かる。

じつは植物の立場からすれば、今の地球は未だ、CO2の飢餓状態だ。

だからこそ、CO2濃度を高めてやると、たいていの植物の生育は良くなる。写真はある実験例で、CO2濃度が高いほど光合成が盛んになって、植物がよく育っている。

もちろん、もしもCO2が急激な気候変動をもたらすといったことがあれば、それには害がある。だがその兆しはいまのところ全く無い。

CO2それ自体はむしろ植物を育て、生態系を豊かにするものだ。CO2濃度が増えるといっても、それ自体には、全く問題はない。

1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。

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杉山 大志
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

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