IPCC報告の論点㊹:アメダスで温暖化影響など分からない

2022年02月22日 07:00
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キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

現在運用中のひまわり8・9号のイラスト画像(気象庁提供)

以前、大雨の増加は観測されているが、人為的なものかどうかについては、IPCCは「確信度は低い」としていることを書いた

なぜかというと、たかだか数十年ぐらいの観測データを見て増加傾向にあるからといって、それを人為的温暖化のせいにすることは軽々には出来ないからだ。

図は、イタリアのボローニャでの200年間にわたる記録。一日雨量の年最大値が書いてある。青が毎年のデータ、緑は10年間での最大の雨量、赤は30年間での最大の雨量。

1950年ごろから現在だけ見ればなんとなく右肩上がりに見えるが、200年規模で見ると、それ以前にも雨量が多い年はいくらでもあったことが分かる。

気候は何十年もたつとずいぶん変わるのだ。

図 ボローニャの降水記録(論文

日本では、アメダスが整備された期間である1976年以降の45年間のデータだけを見せて、地球温暖化の影響で大雨が激甚化しているなどと主張する人々が沢山いる。

けれども、もっとずっと長期のデータを検討しないと、大雨が増えているなどと安直に結論してはいけない。まして、温暖化のせいにしてはいけない。

1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。

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IPCC報告の論点③:熱すぎるモデル予測はゴミ箱行きに
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IPCC報告の論点㉕:日本の気候は大きく変化してきた
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IPCC報告の論点㉙:縄文時代の北極海に氷はあったのか
IPCC報告の論点㉚:脱炭素で本当にCO2は一定になるのか
IPCC報告の論点㉛:太陽活動変化が地球の気温に影響した
IPCC報告の論点㉜:都市熱を取除くと地球温暖化は半分になる
IPCC報告の論点㉝:CO2に温室効果があるのは本当です
IPCC報告の論点㉞:海氷は本当に減っているのか
IPCC報告の論点㉟:欧州の旱魃は自然変動の範囲内
IPCC報告の論点㊱:自然吸収が増えてCO2濃度は上がらない
IPCC報告の論点㊲:これは酷い。海面の自然変動を隠蔽
IPCC報告の論点㊳:ハリケーンと台風は逆・激甚化
IPCC報告の論点㊴:大雨はむしろ減っているのではないか
IPCC報告の論点㊵:温暖化した地球の風景も悪くない
IPCC報告の論点㊶:CO2濃度は昔はもっと高かった
IPCC報告の論点㊷:メタンによる温暖化はもう飽和状態
IPCC報告の論点㊸:CO2ゼロは不要。半減で温暖化は止まる

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キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

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