IPCC報告の論点㊼:縄文時代には氷河が後退していた

2022年04月13日 06:50
杉山 大志
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

SeppFriedhuber/iStock

以前、海氷について書いたが、今回は陸上の氷河について。

6000年前ごろは、現代よりもずっと氷河が後退して小さくなっていた(論文紹介記事)。

氷河は山を侵食し堆積物を残すのでそれを調査した研究を紹介する。対象地点は下図の●。

下図が分析の結果。

折れ線(左軸)は、現在よりも氷河(正確には氷河および氷冠、Glaciers and Ice Caps, GICs)が小さかった割合。6000年前ごろ(図の中央付近で6ka。kaは千年の意味)はほとんどの氷河が現在より小さかったことが分かる。

氷河が小さかった理由は、気温がやや高かったこともあるが、太陽と地球の配置の関係で夏の日射量が多かったことが効いているという。

このころの夏季の北極圏の日射エネルギーはいまよりも1割も多かった。地球温暖化の効果はせいぜい日射エネルギーにして1%の程度だから、桁違いだった訳だ(下図)。

シロクマなど、いまの北極圏の生態系は、このような自然変動を潜り抜けてきた。したたかなものだけが生き残ってきた。

ちなみに6000年前ごろというと日本では縄文海進期と言われ温暖だったころだ。また改めて書くが、このころはシベリアや日本海も暖かったらしい。

IPCCの報告が2021年8月に出た。1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。

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杉山 大志
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

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