化石燃料調達に奔走する欧州

Roman Barkov/iStock
ロシアからの化石燃料輸入に依存してきた欧州が、ロシアからの輸入を止める一方で、世界中の化石燃料の調達に奔走している。
動きが急で次々に新しいニュースが入り、全貌は明らかではないが、以下の様な情報がある。
● 1週間前、イギリスのマイケル・ゴーブ住宅担当大臣が、同国で30年ぶりとなる新規炭鉱を承認する可能性が高いというニュースが流れた。この炭鉱は製鉄用の石炭を産出するものだ。
● 原子力発電所の廃止に追われるドイツでは、RWE、ヴァッテンフォール、シュタッグが2030年に予定されていた閉鎖期限をはるかに超えて石炭火力発電所を稼働させる準備を始めている。いまドイツの石炭会社は、ロシアがすべての天然ガスの供給を停止した場合に備えて、全速力で稼働する発電所を準備している。
● さらにドイツは、ワッデン海諸島の北20kmの北海でオランダ企業が行う天然ガスの掘削を許可した。そのために、ドイツ政府は自国領土での石油・ガス掘削に対する態度を緩めることを選択した。
● ドイツでは昨年、電力供給のほぼ30パーセントを2600万キロワット近くの石炭火力発電所から得ていた。しかし、これまで予備としてしか利用できなかった他の石炭火力発電所によって、この合計が3400万キロワットまで引き上げられる可能性がある。さらにそれ以上の送電網から外れている石炭火力発電所もある。
● ヨーロッパの電力会社にロシア産の石炭を売れなくなったため、ヨーロッパのバイヤーは南アフリカから石炭を購入している。南アフリカ、コロンビア、そしてアメリカからヨーロッパへの石炭の流れは、ここ数週間で増加している。歴史的に、南アフリカの石炭のほとんどは、インドや他のアジア市場へ流れていた。
● イタリアのドラギ首相は最近、同国の石炭火力発電所を再稼働させる必要があるかもしれないと認めた。
欧州連合(EU)のグリーンニューディール担当上級副総裁兼気候変動対策欧州委員会のフランズ・ティメルマンス氏は、ロシアの天然ガスに代わる石炭燃焼を計画しているとしても、EU諸国はEUの気候目標からは外れていないと発表した。
だが、いま起きていることは、なりふり構わぬ化石燃料の調達であり、それによる世界規模での化石燃料価格の高騰だ。これが現実、ということであろう。
■

関連記事
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 以前、「IPCC報告の論点③:熱すぎるモデル予測はゴミ箱
-
このところ小泉環境相が、あちこちのメディアに出て存在をアピールしている。プラスチック製のスプーンやストローを有料化する方針を表明したかと思えば、日経ビジネスでは「菅首相のカーボンニュートラル宣言は私の手柄だ」と語っている
-
電力需給が逼迫している。各地の電力使用率は95%~99%という綱渡りになり、大手電力会社が新電力に卸し売りする日本卸電力取引所(JEPX)のシステム価格は、11日には200円/kWhを超えた。小売料金は20円/kWh前後
-
けさの「朝まで生テレビ!」は、3・11から7年だったが、議論がまるで進歩していない、というより事故直後に比べてレベルが落ちて、話が堂々めぐりになっている。特に最近「原発ゼロ」業界に参入してきた城南信金の吉原毅氏は、エネル
-
日本のエネルギーに対する政府による支援策は、原発や再生可能エネルギーの例から分かるように、補助金が多い形です。これはこれまで「ばらまき」に結びついてしまいました。八田氏はこれに疑問を示して、炭素税の有効性を論じています。炭素税はエネルギーの重要な論点である温暖化対策の効果に加え、新しい形の財源として各国で注目されています。
-
マンハッタン研究所のマーク・ミルズが「すべての人に電気自動車を? 不可能な夢」というタイトル(原題:Electric Vehicles for Everyone? The Impossible Dream)を発表した。い
-
京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・名誉教授 鎌田 浩毅 富士山は日本を代表する「活火山」である。たとえば、『万葉集』をはじめとする過去の古文書にも、富士山の噴火は何度となく記されてきた。地層に残された噴火記録を調
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間