SDGs関係者の皆様、猛暑は気候変動のせいなのですか
先週の木曜日、仕事で11時から15時頃まで外にいました。気温は35℃。熱中症にならないよう日陰を選び水分を補給しながら銀座のビル街で過ごしました。心の中では泣きそうでした。
さて、ここ数日の猛暑を受けて脱炭素やSDGs関係者のSNSでは「地球温暖化が!」「気候危機が!」等の声があがっています。毎年恒例です。

PraewBlackWhile/iStock
先週木曜日は埼玉県鳩山町で39.9℃、埼玉県寄居町で39.8℃を観測するなどとても辛い一日だったのですが、地球温暖化(平均で+1.1℃)がなかった場合、それぞれ気温は鳩山町38.8℃、寄居町38.7℃だったのであり、やっぱり過酷な猛暑日だったということです。筆者がヒーヒー言って半泣きだった都心の35℃(こちらはもちろん地球温暖化の影響込み!)よりも高い気温です。
猛暑の要因は、気候変動よりも気圧や気流などの自然変動と都市化です(杉山大志(2021)『「脱炭素」は嘘だらけ』P189-190)。たしかに地球温暖化は起こっています。人間活動(=CO2排出量)も気候に影響を与えています。しかし影響の程度は分かっていないか、ごく小さな影響のみです(スティーブンE・クーニン(2022)『気候変動の真実』P12、P86)。
報道等ではよく地球温暖化によって台風や豪雨が頻発化・激甚化していると言われますが、観測データでは発生数の増加も激甚化も起きていません。
将来の温暖化予測はシミュレーションによって行われますが、過去の観測データも再現できていないため様々なチューニング(モデルと観測データや予測を一致させるための辻褄合わせ)が介在してしまいます。このチューニングされた温暖化シナリオに沿って、理論上の豪雨化・激甚化が予測されています(この150年ほどで1.1℃の地球温暖化が起きていますが観測データでは豪雨も台風も横ばいです。ところがあと数十年で0.4℃温暖化したら破滅的な水害が頻発するとされています)。
将来のことなのでどうなるかは分かりません。少なくとも熱中症の危険は増すでしょうし水害がひどくなる可能性もあります。従って、気候変動への対応としては緩和策(CO2削減)よりも適応策(防災・減災、電力の安定供給などのインフラ整備)の方が重要だと筆者は考えます。
日本の年間CO2排出量は約11億トン、世界全体の3%程度です。杉山大志氏の試算によれば、日本の年間CO2排出量による気温上昇は0.000436℃、過去10年にわたる太陽光発電等の再生可能エネルギーの大量導入による気温の低下は0.000087℃、一日に500mmの豪雨の降水量低下は0.002616mmです。
国民生活や企業の国際競争力を破壊してまで緩和策(脱炭素政策)に莫大な予算を投じたところで、その効果は地球の大気全体で薄まり日本の影響はごくわずかとなります。一方で、適応策では投入したリソースがその場所・その地域ですべて効果として現れます。もちろん、現実には対策の遅延や不足、また想定を上回る自然災害が発生することはありますが、地球全体で効果が薄まることはありません。
緩和策は将来の技術革新に期待して可能な範囲で進めながら(あと8年でCO2半減や2050年にゼロなど無謀なことはやめて)、今の緩和策予算の半分でも3分の1でもよいので適応策に振り向けるべきです。現在は緩和策一辺倒であり、無理に再エネを増やしすぎた結果電力危機を招いてしまいました。この猛暑の中でもしも停電になったら命の危険すらあります。これが誰一人取り残さない政策と言えるでしょうか。
SDGs関係者の皆様、毎年猛暑に便乗して「気候危機で地球は破滅する!」「人間活動のせいだ!」なんて煽り立てても何の意味もありません。明日人類がCO2排出量をゼロにしても、現在の気温が30℃や25℃に下がることはないのです。
■

関連記事
-
11月23日、英国財務省は2017年秋期予算を発表したが、その中で再エネ、太陽光、原子力等の非化石予算を支援するために消費者、産業界が負担しているコストは年間90億ポンド(約1.36兆円)に拡大することが予想され、消費者
-
Caldeiraなど4人の気象学者が、地球温暖化による気候変動を防ぐためには原子力の開発が必要だという公開書簡を世界の政策担当者に出した。これに対して、世界各国から多くの反論が寄せられているが、日本の明日香壽川氏などの反論を見てみよう。
-
【概要】原子力規制委員会の原子力発電所の安全審査ペースが急速に鈍化している。2016年下期に本体施設3基を許可したのをピークに、その後、期ごとの許可実績が2、2、1、0、0基と減っている。 審査している原発が無くなったの
-
バイデン政権は温暖化防止を政権の重要政策と位置づけ、発足直後には主要国40ヵ国の首脳による気候サミットを開催し、参加国に2050年カーボンニュートラルへのコミットや、それと整合的な形での2030年目標の引き上げを迫ってき
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンク、GEPRはサイトを更新しました。
-
(見解は2016年11月25日時点。筆者は元経産省官房審議官(国際エネルギー・気候変動交渉担当)) (IEEI版) 前回(「トランプ政権での米国のエネルギー・温暖化政策は?」)の投稿では、トランプ政権が米国のエネルギー・
-
ただ、当時痛切に感じたことは、自国防衛のための止むを得ぬ戦争、つまり自分が愛する者や同胞を守るための戦争ならともかく、他国同士の戦争、しかも大義名分が曖昧な戦争に巻き込まれて死ぬのは「犬死」であり、それだけは何としても避けたいと思ったことだ。
-
「2年10ヶ月の懲役刑」というのが、ノートライン=ヴェストファーレン州のボッフム州立裁判所が7月1日に下した判決だった。被告は、医師であるハインリヒ・ハービク氏、67歳。裁判長ペトラ・ブライヴィッシュ=レッピング氏によれ
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間