グローバルグリーニングによる地球冷却効果

Petmal/iStock
今回はマニア向け。
世界の葉面積指数(LAI)は過去30年あたりで8%ほど増えた。この主な要因はCO2濃度の上昇によって植物の生育が盛んになったためだ。この現象は「グローバルグリーニング」と呼ばれる。なお葉面積指数とは、土地の単位面積あたりの植物の葉の面積のことである。
これによって雨が植物に蓄えられ、蒸発散する量が増え、地表を冷却した。それによって雲も増えたが、これは地表を温める効果と冷ます効果の両方があった。下記はその模式図である(説明は略):

出典:Piao, S., Wang, X., Park, T., Chen, C., Lian, X., He, Y., Bjerke, J. W., Chen, A., Ciais, P., Tømmervik, H., Nemani, R. R., & Myneni, R. B. (2020). Characteristics, drivers and feedbacks of global greening. Nature Reviews Earth and Environment, 1(1), 14–27.
様々な効果を合計すると、蒸発散による冷却効果が卓越していた。その冷却効果は、地球平均で、10年あたりで0.24W/m2と推計された:

出典:Zeng, Z., Piao, S., Li, L. Z. X., Zhou, L., Ciais, P., Wang, T., Li, Y., Lian, X., Wood, E. F., Friedlingstein, P., Mao, J., Estes, L. D., Myneni, R. B., Peng, S., Shi, X., Seneviratne, S. I., & Wang, Y. (2017). Climate mitigation from vegetation biophysical feedbacks during the past three decades. Nature Climate Change, 7(6), 432–436.
この0.24W/m2というのはとても大きい。例えば40年間で合計すれば約1W/m2にもなる。IPCCによれば1750年以来のCO2の増加の効果が合計2W/m2だから、その半分を相殺することになる:

出典:IPCC AR6 Fig. TS.15
地球温暖化については、このように、まだよく分かっていないことがある。
■

関連記事
-
元静岡大学工学部化学バイオ工学科 松田 智 現状、地球環境問題と言えば、まず「地球温暖化(気候変動)」であり、次に「資源の浪費」、「生態系の危機」となっている。 しかし、一昔前には、地球環境問題として定義されるものとして
-
岸田首相が「脱炭素製品の調達の義務付け」を年内に制度設計するよう指示した。義務付けの対象になるのは政府官公庁や、一般の企業と報道されている。 脱炭素製品の調達、「年内に制度設計」首相が検討指示 ここで言う脱炭素製品とは、
-
いまだにワイドショーなどで新型コロナの恐怖をあおる人が絶えないので、基本的な統計を出しておく(Worldometer)。WHOも報告したように、中国では新規感染者はピークアウトした。世界の感染はそこから1ヶ月ぐらい遅れて
-
2021年8月に出たIPCCの報告の要約に下図がある。過去の地球の平均気温と大気中のCO2濃度を比較したものだ。これを見ると、CO2濃度の高い時期(Early Eocene)に、気温が大変に高くなっているように見える。
-
アゴラ研究所の運営するエネルギーのバーチャルシンクタンクGEPRはサイトを更新しました。 今週のアップデート 1)非在来型ウランと核燃料サイクル アゴラ研究所、池田信夫氏の論考です。もんじゅは廃炉の方向のようですが核燃料
-
以前、中国製メガソーラーは製造時に発生したCO2の回収に10年かかると書いた。製造時に発生するCO2を、メガソーラーの発電によるCO2削減で相殺するのに、10年かかるという意味だ(なおこれは2030年のCO2原単位を想定
-
先日、NHKが「脱炭素社会実現の道筋は」と題する番組を放映していた。これは討論形式で、脱炭素化積極派が4人、慎重派1名で構成されており、番組の意図が読み取れるものだった。積極派の意見は定性的で観念的なものが多く、慎重派が
-
菅首相の所信表明演説を受けて、政府の温暖化対策見直しの作業が本格化すると予想される。いま政府の方針は「石炭火力発電を縮小」する一方で「洋上風力発電を拡大」する、としている。他方で「原子力の再稼働」の話は相変わらずよく見え
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間