太陽光発電導入がESGをすべて満たすことはない
2050年カーボンニュートラルや2030年CO2半減を宣言した企業が、自家消費目的の太陽光発電導入に殺到しています。しかしながら、太陽光発電の導入がESGを同時にすべて満たすことはありません。

xijian/iStock
ESGのEは「環境」です。太陽光パネルの製造段階や廃棄などライフサイクル全体におけるCO2排出量を考えると、製造する国や地域によって投入エネルギーのCO2排出係数が異なるため、計算の前提条件によっていかようにもなってしまいます。本当に環境に配慮しているとは言えない可能性もありますが、発電時にCO2を排出しない、という一点のみで導入する企業が多いことは明らかです。
当然ながら、カーボンニュートラルを宣言した企業はほぼ例外なくESGやSDGsに配慮していることを公表しています。また企業行動指針(CSR規範、サステナビリティ行動指針、コードオブコンダクト、ESG憲章、など名称は各社各様)も策定しています。こうした企業が太陽光発電を導入する際には注意が必要です。
太陽光発電は杉山大志氏いわく 「屋根の上のジェノサイド」です。中国製の太陽光パネルを利用するということは新疆ウイグル自治区で行われているジェノサイドに加担していることになりますし、ウイグル人の強制労働によってつくられた太陽光パネルから生み出された電力で事業活動を営み、利益を得ることになります。
これはESGのS(社会性)で重要な「人権」や「企業倫理」に反する行為ですし、SDGsで言われている「誰一人取り残さない」社会からも完全に逸脱しています。各社の企業行動指針には必ず「人権」の項目があり、「強制労働を行いません」などの宣言が書かれているはずですが、サプライチェーンは関係ないと言えるのでしょうか。
ウイグル問題については世界的に非難の声が上がっています。2021年10月に開催された先進7か国(G7)貿易大臣会合の閣僚声明で、新疆ウイグル自治区を念頭に「サプライチェーンからの強制労働排除」が表明され、具体的には農産物、太陽光発電、衣料品について不使用とすることが明記されました(※)。2022年6月から米国はウイグル由来の製品輸入差し止めを実行しており、2022年9月にはEUも同様の方針を表明しました。先進国で中国製太陽光パネルの輸入を継続しているのは日本のみとなってしまったのです。
こうした各国の動向を反映してか、近年は海外企業から日本のサプライヤー企業に対してウイグル関連の問い合わせが急増しています。現状では質問内容が新疆ウイグル自治区由来の原材料等に限定されていますが(これだけでも「いいえ」を証明することは至難の業ですが)、今後エネルギーにまで言及されたら回答に窮する日本企業が続出するのではないでしょうか。
これらの動きは特に海外企業からの新たな社会要請となりつつあり、安価な中国製太陽パネルを入れ続けた結果のビジネスリスクとして日本企業も真剣に考えざるをえない状況に来ていると言えます。
また、2012年に固定価格買取制度が開始され、毎月の家庭の電気料金から再エネ賦課金が徴収されています。2010年~2019年の10年間で、電気料金平均単価は家庭向けが約22%、産業向けが約25%も上昇しており、さらに2022年以降は資源価格の高騰から大手電力会社やガス会社が断続的に値上げを公表している状況です。
エネルギー価格の上昇は国民生活(特に生活が苦しい弱者)に多大な影響を及ぼし、また企業(特に中小企業)の国際競争力や雇用に直結します。これもESGのS(社会性)に反しますし、「誰一人取り残さない」社会とはとても言えません。
さらに、一般家庭でも企業でも太陽光発電システムの購入時には大量の補助金(つまり国民の血税)が投入され続けています。貧しい人からお金持ちへ富が流れる逆進性が顕著であり、格差助長につながるとの指摘も後を絶ちません。
ではESGに配慮する企業としては補助金を受け取らずにすべて自費で設置すればよいかとなると、そうとも言えません。高い買い物をするということは利益を圧迫するため今度は株主の利益に反することになり、これはESGのG(ガバナンス)として不適切となります。
つまり、企業が自家消費目的で太陽光発電を導入することは、いずれにしてもESGをすべて満たすことはない、と言えるのです。
※ ただし、2021年10月22日付経済産業省のニュースリリースでは、閣僚声明および附属文書Aの原文に「agricultural, solar and garment sectors」と記載されているものの日本語訳には載っておらず、新聞等の報道でもこの3品目への言及がありませんでした。詳しくは拙稿(2021.11.04付アゴラ記事)を参照
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