やはり言い続けよう、脱炭素には科学的根拠がないことを

2023年07月20日 07:00
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元静岡大学工学部化学バイオ工学科

日本国内の報道やニュースクリップ等々を見ると、多くの人は気候変動対策・脱炭素は今や世界の常識と化しているような気になってしまうだろう。実際には、気候変動対策に前のめりなのは国連機関・英米とそれに追随するG7各国くらいで、中露その他の国々は全く本気ではないのだが。その証拠に、COPで繰り広げられる「バトル」は、対策そのものよりも「カネ」をいくら分捕るかだけに集中していて、毎年毎年大騒ぎを繰り返しながら、具体策は何も決まらない。

一方で、国内報道は大手マスコミを中心に「脱炭素」一色で、そこには疑問など挿む余地は何一つなさそうに見えてしまう。しかし、堤未果氏の「ショック・ドクトリン」にも書かれている通り、この種の大政翼賛会的な「疑問の余地ナシ」は、実は危ういのだ。本当はどうなの?と、常に問い続ける必要がある。

NickS/iStock

筆者はすでに何度も、この種の疑問を書いてきた。最初は21年5月の「『50年脱炭素』法に意味はあるのか」で、以後も科学的思考の重要性を説き続けたが、少なくとも日本国内で大きな声には育っていない。

しかし国際的には、著名な科学者たちが人為的温暖化説への異議申し立てを始めている。

Nobel Physics Laureate 2022 Slams ‘Climate Emergency’ Narrative as “Dangerous Corruption of Science”

特徴的な言葉は「narrative」で、この語は物語、あるいは物語風の作品を意味する。つまり「気候危機」は「作り話」だと暗示している。

この記事は、早速日本でも翻訳されて紹介された。見出しには、ノーベル物理学賞受賞者含む300人の学者が「気候変動の緊急事態など存在しない。科学の危険な腐敗だ」と宣言/「風力、太陽光は完全な失敗で環境を破壊しているだけだ」とある。

日本国内では、この種の論説を書いても、奇人変人扱いされるのが常であったし、今でもそうである。しかし、300人ものノーベル賞受賞者を含む科学者たちが発言する意味は大きい。

この事態を、日本の科学者たちはどう見ているのだろうか? 具体的には、日本学術会議のメンバーは、人為的温暖化説をどのように受け止めているのだろうか? ぜひ、見解を伺いたい。その際の前提としては、上記、筆者が21年5月にアゴラに書いた内容を具体的な中身としたい。

すなわち、大問題として、

「人為的温暖化説」は、実際にどの程度正しいのか?

があり、その分枝として以下の諸問題がある。

・地球気温は実際に上昇し続けているのか?
・大気中CO2濃度変化変化の主な要因は、人類の排出するCO2なのか?
・地球気温と大気中CO2濃度は、本当に連動して変化しているのか?

その答として筆者は、概略以下のような事実を示す。

1)地球気温は、細かな上下を繰り返しながら、長期的には緩やかに上昇している。その上昇速度は、気象庁データで100年当り0.72℃、1979年以来の人工衛星観測データでは同1.4℃である。IPCCらの主張する今世紀末3〜5℃もの気温上昇は、これらのデータからは予測できない。

2)大気中CO2濃度上昇は毎年約2ppmで、これは炭素換算約4ギガトン(40億トン)に相当する。これは人類の発生するCO2総量の約半分に当たる。IPCCらは、この事実から、人類の発生するCO2の半分が大気に残留し、それが大気中CO2濃度上昇の原因であると主張するが、筆者の考えでは、それは誤りである。

なぜなら、地球上で自然界(陸と海)で交換されるCO2量は毎年200ギガトン以上あるから(この数字はIPCC報告書にも載っている)。つまり、全地球で放出・吸収される毎年200ギガトン以上のCO2のうち、人類由来は5%以下しかないから、残留する人為的CO2も5%程度、つまり2ppmのうちの5%だから0.1ppm分しか寄与がない。残りは、解明されていない自然変動と考えられる(そもそも、なぜ毎年の増加量が測ったように2ppmなのか、分かっていない)。

実際、人間社会での経済変動は、大気中CO2濃度変化のデータには何一つ反映されていない。例えば2009年のリーマンショックや2021年のコロナ不況で世界の化石燃料消費が激減した年、逆に2022年のウクライナ騒ぎで石炭消費が歴代一位になった年でも、大気中CO2濃度変化は常に規則的で、何らの変動もグラフに見えるほどには現れていないのである。

無理もない。人類全体で0.1ppm未満しか寄与がない以上、その20%増減したとしても変化量は0.02ppm未満なので、グラフには変化として記録され得ない。うんと拡大すれば見えるかも知れないが、その時にはその他のノイズも拾ってしまうだろう。

3)気温と大気中CO2濃度変化のデータを見比べれば、長期的トレンドでは共に上昇という共通項はあるが、細かく見ると両者の変動の仕方は、まるで違う。CO2濃度は季節変動による周期的かつ正確な上下振動しながら、毎年の平均値は驚くほどの一定速度で上昇している。この傾向は、世界のどこでも観測される(陸地の多い北半球で季節変動幅が大きい)。

一方気温は、世界平均で見ても毎日毎月激しく上下しながら、数年以上の長い周期で揺れ動いている。CO2濃度と気温が密接に連動しているとは、とても言い難い。このことは、数億年単位のデータでも言える。

以上、筆者の考えでは、これまで得られている観測データなどから推測する限り、人為的温暖化説のどれ一つとして成り立っていない。これに対して、学術会議の方々はどう答えて下さるのか、楽しみにしたい。その場合、ぜひ、具体的なデータでお示し願いたい。「IPCCなど、みんながそう言っている」では話にならない。科学は権威や多数決で決まるものではない。

地球温暖化問題は、いつの間にか気候変動問題にすり替わった。最近の大雨や山火事の頻発を報道は盛んに取り上げて、異常気象だ大変だと危機を煽る。その対策はと言えば、相も変わらず脱炭素ばかりで、CO2排出削減に偏重している。ここにも、大きな論理的飛躍がある。なぜなら、これらは次のような論理に基づくからである。

1)人間の出すCO2により大気中CO2濃度が上がる、2)大気中CO2濃度上昇と共に地球気温が上がる、3)気温が上がることにより、異常気象が頻発する=気候変動問題

3)から1)へ遡行することにより、気候変動対策=CO2排出削減=脱炭素、と言う論理構成となるのである。

しかし上で見たように、1)と2)は科学的根拠が乏しい。3)には、科学的な説明が出ていない。なぜ、温暖化すると異常気象が頻発するのか? 単に「温暖化の影響」では説明にならない。

大気中CO2濃度は地球上どこでもほぼ同じ(CO2排出量の多い都市部では無論高くなるが)である一方で、線状降水帯や竜巻のような非常に局所的かつ短時間に発生する現象とは、どう結びつくのか?説得的な説明に出会ったことがない。ましてや、山火事とCO2では。また干ばつも大雨も「温暖化の影響」と言われるが、両者は逆の現象だが、どう「影響」するのか?

温暖化すると海水温が上昇し、蒸発量が増えて大雨が降るのだという説明は、科学的でない。なぜなら、大気と海水では熱容量が1000倍も違う(無論、海水が1000倍大きい)ので大気温が少々上がっても、海水温は影響を受けないからだ。その逆は起こる。実際、太平洋や大西洋での海水温と大気温度の変動状況は、非常によく似ている。このように、地道にデータを突き合わせて何が本当なのかを調べて行くのが、科学の本道である。

筆者は、海外で科学者が積極的に発言しているのに比して日本の科学者の多くが沈黙しがちであることを残念に思う。TVなどに出て威勢よく人為的温暖化説の宣伝に努めている人たちは、本当に「科学の徒」なのだろうか? 10年も経てば、何が正しいか、事実が明らかにするだろうに。

また筆者は、このような科学的論争で「論破」して嬉しいのではない。科学的な根拠に基づかない政策に、貴重な税金を湯水のように使うことが許せないのである。総じて、今の日本で人為的温暖化説を信奉する、あるいはそのフリをする人々は、GX予算などの補助金にぶら下がる利権集団に属すると思う。マスコミもそのお先棒担ぎをしている例が多い。「○○ムラ」の類である。

この「脱炭素ムラ」も、予算額が大きくなるにつれて、次第に強大なものになりつつある。最近の報道状況を見ているとそれを痛感する。多くの人は、騙されていても気がつかない。

だからこそ、事実はどうであるのかを、たとえ無力であっても言い続けなければならないと、筆者は自らを鼓舞するのである。

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