岸田首相の経済対策で光熱費がますます上がる本末顛倒

2023年11月05日 06:50
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

新しい資本主義実現会議で発言する岸田首相
首相官邸HPより

岸田首相肝いりの経済対策で、エネルギーについては何を書いてあるかと見てみたら、

物価高から国民生活を守る

エネルギーコスト上昇への耐性強化 企業の省エネ設備導入を複数年度支援▽中小企業の省エネ診断を推進▽断熱窓の改修や高効率の給湯器の導入支援▽クリーンエネルギー自動車などの導入促進▽自家消費型太陽光発電・蓄電池など導入支援▽原発再稼働や次世代革新炉の開発を推進

「自家消費型太陽光発電・蓄電池など導入支援」と書いてあるではないか。

既存の再エネ全量買い取り制度の上に、さらに補助金を積み増すのだろうか?

そうすれば、太陽光パネルを設置したり、蓄電池を設置した建築主は元が取れるから光熱費の削減になると言いたいのだろうが、国民にとっては再生可能エネルギー賦課金に加えて補助金原資まで負担が膨らむばかりだ。

そもそもいま光熱費が高騰している大きな理由が再エネ賦課金なのだ。

https://agora-web.jp/archives/230217005900.html

これでは「物価高から国民生活を守る」のではなく、「物価高で国民生活を苦しめる」だけではないか。

「断熱窓の改修」などの他の施策も、補助金を受け取る人だけの利益だけではなく、国民全体の利益をきちんと検討しなければならない。

無駄な投資を促進することは、単なるバラマキよりも国民の利益を損なう。

太陽光発電推進という本末顛倒の経済対策は取り止めるべきだ。

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • 前回報告した通り、6月のG7カナナスキスサミットは例年のような包括的な首脳声明を採択せず、重要鉱物、AI、量子等の個別分野に着目した複数の共同声明を採択して終了した。 トランプ2.0はパリ協定離脱はいうに及ばず、安全保障
  • 11月7日~18日にかけてエジプトのシャルム・アル・シェイクでCOP27が開催され、筆者も後半1週間に参加する予定である。COP参加は交渉官時代を含め、17回目となる。 世界中から環境原理主義者が巡礼に来ているような、あ
  • 2025年5月2日、ゴールデンウィークの最中、秋田市内の風力発電所でブレード(羽根)が折れ、一部が落下して近くを歩いていた男性に直撃し、死亡するという痛ましい事故が発生した。これを受け、他の風力事業者は自社設備に問題がな
  • 混迷のスリランカ スリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が軍用機で国外逃亡したというニュースが7月13日に流れた。 スリランカではここ数か月、電気も燃料も食料も途絶え、5月以来54.6%のインフレ、中でも食糧価格が80
  • 有馬純 東京大学公共政策大学院教授 今回のCOP25でも化石賞が日本の紙面をにぎわした。その一例が12月12日の共同通信の記事である。 【マドリード=共同】世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」は11日、地球温暖
  • COP28が11月30日からアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催される。そこで注目される政治的な国際合意の一つとして、化石燃料の使用(ならびに開発)をいつまでに禁止、ないしはどこまで制限するか(あるいはできないか)と
  • 運転禁止命令解除 原子力規制委員会は27日午前の定例会合において、東京電力ホールディングスが新潟県に立地する柏崎刈羽原子力発電所に出していた運転禁止命令を解除すると決定した。その根拠は原子力規制委員会が「テロリズム対策の
  • オーストラリアの東にあるグレートバリアリーフのサンゴ礁は絶好調だ。そのサンゴ被覆度(=調査地域の海底面積におけるサンゴで覆われた部分の割合)は過去最高記録を3年連続で更新した(図)。ジャーナリストのジョー・ノヴァが紹介し

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑