EV補助金は1台750万円にも上るとの米国試算

Andrii Yalanskyi/iStock
電気自動車(EV)には陰に陽に様々な補助金が付けられている。それを合計すると幾らになるか。米国で試算が公表されたので紹介しよう(論文、解説記事)
2021年に販売されたEVを10年使うと、その間に支給される実質的な補助金は約50000ドル(図中の48698ドル)に上る。為替レートを1ドル150円とすると、約750万円だ。
内訳は、以下のとおり(図)。
- 政府や州による補助金や税控除など、納税者への負担によるものが8984ドル+(1318ドルの内数)、図中の黒色
- 追加の発電設備や送配電設備など、電気利用者への負担によるものが10515ドル+(1318ドルの内数)、図中青色
- 政府や州の燃費規制に基づいたクロス補助金など、ガソリン自動車利用者への負担によるものが4881+3322+19678= 27881ドル、図中水色
直接の補助金である8984ドル以上に、電気利用者への負担や、ガソリン自動車利用者への負担に基づくクロス補助金の方がはるかに莫大に上っていることが分かる。
これまではこのような制度によって強引に普及が進められてきたEVだが、ここにきて、失速気味との報道も聴かれる。
インフレや財政難に見舞われる中、政府はいつまでも莫大な補助を続ける訳にも行かないだろう。EVはどの程度生き残れるのだろうか。
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私は原子力発電の運用と安全の研究に、およそ半世紀関わってきた一工学者です。2011年3月の東京電力福島第一原発事故には、大変な衝撃を受け、悲しみを抱きました。自分は何ができなかったのか、自問と自省を続けています。
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