腐敗した気候科学を叩き直すトランプ大統領命令に日本も倣え

大統領令に署名するトランプ大統領
ホワイトハウスXより
5月23日、トランプ大統領は、 “科学におけるゴールドスタンダードを復活させる(Restoring Gold Standard Science)”と題する大統領令に署名した。
バイデン政権の下では、気候変動問題を筆頭として、公衆衛生問題や環境問題において、根拠が乏しくブラックボックス的なシミュレーション結果が「科学」の衣をまとって流布され、それに基づいて左翼リベラル的な政策を推進することが行われてきた。それを正そうとするものだ。
以下は大統領令からの抜粋である。
政府の機関は保有する以下の情報を公開する:
(A) 機関が作成または使用した科学的・技術的情報(機関が重要な公共政策または重要な民間部門の決定に明確かつ重大な影響を与えると合理的に判断した情報(影響力のある科学的情報))に関連するデータ、分析、結論(ピアレビューされた文献で引用されたデータを含む);および
(B) 影響力のある科学的情報を生成するために当該機関が使用したモデルおよび分析(該当する場合、当該モデルのソースコードを含む)。職員は、OSTP局長への事前通知を経て、当該機関の長から書面による承認を得ない限り、情報公開法の免除規定を根拠に、このようなモデルの開示を拒否することはできない。
シミュレーションについても、ブラックボックスは許されず、透明性を持って公開しなければならない、ということだ。
気候変動問題に関しては、非現実的に排出量の多いRCP8.5シナリオが「なりゆき」として使われていることを名指しで問題視している:
政府の機関は気候変動の「より高い」温暖化シナリオにおける潜在的影響を評価するために、代表的濃度経路(RCP)シナリオ8.5を採用している。RCP 8.5は、世紀末の石炭使用量が回収可能な石炭埋蔵量の推定値を超えるなど、極めて可能性の低い仮定に基づく最悪のシナリオです。科学者は、RCP 8.5を「可能性の高い結果」として提示することは誤解を招くと警告している。
この大統領令には、物理学者ウィリアム・ハパーとリチャード・リンゼンが実施した1か月前の4月28日付の政策提言が色濃く反映されている(この報告書は、ホワイトハウス、規制当局の全責任者、両党の政治指導者に提出されたとのこと)。
この政策提言も一部を抄訳しよう:
4. 機能しないモデル
モデルは理論の一種であり、物理的観測を予測するものである。科学的方法論では、モデルが観測で検証されるかどうかを確認するためにテストすることを要求する。 モデルの予測が、現象の観測結果と一致しない場合、そのモデルは誤っており、科学として使用してはいけない。気候危機の物語を支えるモデルは、予測する現象の観測結果と一致していない。代わりに、二酸化炭素(CO2)排出の温暖化効果を過大評価し、観測された値の2倍から3倍の温暖化を予測している。・・・
5. 選択的、捏造、改竄、または省略された矛盾するデータ
理論は観測で検証されるため、データを捏造したり、改竄したり、矛盾する事実を省略して理論を成立させようとすることは、科学的方法の重大な違反である。・・・
私たちの一人(リンゼン)は次のように指摘する:「誤った表現、誇張、選択的引用、または明白な虚偽といった行為は、ネットゼロ理論を支持するために提示されたいわゆる『証拠』のほとんどに該当する」・・・
要約すると、科学的知識とは、科学的方法論によって決定され、理論を観測で検証するものであり、政府の意見、コンセンサス、ピアレビュー、選択的引用、捏造、改竄、または矛盾するデータを省略するといったものであってはならない。
科学的手法とは、経験的なデータによる仮説の検証を重視し、真実の追求において絶対的な誠実さを要求する、何世紀にもわたる探求のアプローチである。
しかしながら、気候の研究では、この伝統的なプロセスが集団思考に取って代わられることがあまりにも多い。 いわゆるコンセンサスを形成し維持するために、科学的な議論は抑圧されてきた。 バイデン政権の下、米国の政府機関は、人為的な気候危機というシナリオを推進するために、虚偽で誤解を招くような偏った情報を流してきた。
日本においても、気候変動に関する科学は捻じ曲げられている。米国に見習って、科学のゴールドスタンダードを復活させねばならない。
■

関連記事
-
米国のテレビ番組配信会社のAXSテレビは米CBSの著名キャスターだったダン・ラザー氏をアンカーマンとする「ダン・ラザー・リポート」を提供している。11月の番組で10月末に米国東部を襲ったハリケーン・サンディでニューヨーク州とその周辺の電力復旧が長期化していることを伝えた。その理由を、被害を受けた多くの州で行われた電力自由化が影響していると指摘した。
-
IPCCの報告がこの8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。 前回の論点㉑に続いて「政策決定者向け要約」を読む。 今回
-
調達価格算定委員会で平成30年度以降の固定価格買取制度(FIT)の見直しに関する議論が始まった。今年は特に輸入材を利用したバイオマス発電に関する制度見直しが主要なテーマとなりそうだ。 議論のはじめにエネルギーミックスにお
-
脱炭素要請による下請けいじめを指摘する面白い記事を目にしました。「脱炭素要請は世界の潮流!」といった煽り記事ではなく、現場・現実を取り上げた記事が増えるのはとてもよいことだと思います。 「よく分かんないけど数字出して」脱
-
真夏の電力ピークが近づき、原発の再稼働問題が緊迫してきた。運転を決めてから実際に発電するまでに1ヶ月以上かかるため、今月いっぱいが野田首相の政治判断のタイムリミット・・・といった解説が多いが、これは間違いである。電気事業法では定期検査の結果、発電所が経産省令で定める技術基準に適合していない場合には経産相が技術基準適合命令を出すことができると定めている。
-
筆者は「2023年はESGや脱炭素の終わりの始まり」と考えていますが、日本政府や産業界は逆の方向に走っています。このままでは2030年や2040年の世代が振り返った際に、2023年はグリーンウォッシュ元年だったと呼ばれる
-
政府とメディアが進める「一方通行の正義」 環境省は「地球温暖化は起きていない」といった気候変動に関する「フェイク情報」が広がるのを防ぐため、20日、ホームページに気候変動の科学的根拠を紹介する特設ページを設けたそうだ。
-
(前回:温室効果ガス排出量の目標達成は困難①) 田中 雄三 トレンドで見る発展途上国のGHG削減 世界銀行の所得分類 GHG排出量に関するレポートは、排出量が多い国に着目したものが一般的ですが、本稿では、国の豊かさとの関
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間