議員先生、貴県は「CO2ゼロ」で経済が崩壊します

2021年05月17日 07:00
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

Hiroko Yoshida/iStock

日本政府はCO2を2030年までに46%減、2050年までにゼロにするとしている。

これに追随して多くの地方自治体も2050年にCO2ゼロを宣言している。

けれども、これが地方経済を破壊することをご存知だろうか。

図は、環境省がまとめた県別の産業活動によるCO2排出量である。図中で「特定事業所」とあるのは一定規模以上の事業所ということである。

CO2排出量は、日本の工業地帯である「太平洋ベルト」の都道府県で多い。千葉、愛知、兵庫、岡山、広島、山口、大分などだ。これらの地域では鉄鋼、石油、化学を始め、製造業が盛んだ。

既存の工場のCO2を安価かつ大幅に減らす魔法のような技術は存在しない。

日本の製造業は常に国際競争に晒されている。CO2を極端に減らすために莫大な出費をすれば会社が潰れてしまう。

太平洋ベルトは消滅する。

すでに多くの産業は海外に出ており、自動車も鉄鋼も海外に生産の重心は移ってしまっている

いまこの瞬間にも、日本政府の極端なCO2削減策を見た企業経営者の多くは、日本での生産を止めることを考えているのではなかろうか。

雇用が失われ地域経済が崩壊する。心ある政治家はこの現実を直視し無謀なCO2削減策に異を唱えるべきだ。

地球温暖化のファクトフルネス

This page as PDF
アバター画像
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

関連記事

  • (前回:再生可能エネルギーの出力制御はなぜ必要か) 火力をさらに減らせば再生可能エネルギーを増やせるのか 再生可能エネルギーが出力制御をしている時間帯も一定量の火力が稼働しており、それを減らすことができれば、その分再エネ
  • 「気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか」については分厚い本を通読する人は少ないと思うので、多少ネタバラシの感は拭えないが、敢えて内容紹介と論評を試みたい。1回では紹介しきれないので、複数回にわたることをお許
  • 4月15-16日、札幌において開催されたG7気候・エネルギー・環境大臣会合は共同声明を採択して閉幕した。 欧州諸国はパリ協定、グラスゴー気候合意を経てますます環境原理主義的傾向を強めている。ウクライナ戦争によってエネルギ
  • 以前紹介したスティーブン・クーニン著の「Unsettled」の待望の邦訳が出た。筆者が解説を書いたので、その一部を抜粋して紹介しよう。 スティーブン・クーニンは輝かしい経歴の持ち主で、間違いなく米国を代表する科学者の1人
  • BBCが世界各国の超過死亡(平年を上回る死者)を国際比較している。イギリスでは(3ヶ月で)新型コロナの死者が約5.2万人に対して、その他の超過死亡数が約1.3万人。圧倒的にコロナの被害が大きかったことがわかる。 ところが
  • 20世紀末の地球大気中の温度上昇が、文明活動の排出する膨大な量のCO2などの温室効果ガス(以下CO2 と略記する)の大気中濃度の増加に起因すると主張するIPCC(気候変動に関する政府間パネル、国連の下部機構)による科学の仮説、いわゆる「地球温暖化のCO2原因説」に基づいて、世界各国のCO2排出削減量を割当てた京都議定書の約束期間が終わって、いま、温暖化対策の新しい枠組みを決めるポスト京都議定書のための国際間交渉が難航している。
  • 美しい山並み、勢い良く稲が伸びる水田、そしてこの地に産まれ育ち、故郷を愛してやまない人々との出会いを、この夏、福島の地を訪れ、実現できたことは大きな喜びです。東日本大震災後、何度も日本を訪れる機会がありましたが、そのほとんどが東京で、福島を訪れるのは、2011年9月の初訪問以来です。
  • 広島高裁の伊方3号機運転差止判決に対する違和感 去る12月13日、広島高等裁判所が愛媛県にある伊方原子力発電所3号機について「阿蘇山が噴火した場合の火砕流が原発に到達する可能性が小さいとは言えない」と指摘し、運転の停止を

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑