気象庁は気候危機だという印象操作を止めるべきだ

RapidEye/iStock
気象庁は毎年気候変動監視レポート(以下、レポート)を出している。これまでは冊子がメインだったが今年からウェブ版のみとなった。
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/index.html
このレポートは「気候変動に関する観測・監視をする」となっている。ところが、とにかく気候危機を煽りたいという印象操作が年々酷くなっている。
問題点①:データの切り取り
レポートは、やたらと「1980年以降」の大雨の増加を強調する。以下の図のような具合だ。

レポートがこういう書き方をすると、「45年間で豪雨が3.8倍になった」といった見出しが新聞を飾ることになる。そして、その背景には地球温暖化がある、として関連が深いかのように匂わせる訳だ。
だがこの「詳細はクリック」ボタンを押すと、必ず「注意事項・補足」でこのように書いている。

メディアはたいてい「地球温暖化が影響している可能性があります」までは記事にするが、その後、地球温暖化との関連性は確実に評価されていない旨については無視する。
実際のところ、この大雨の増加は、ほとんど全てが地球温暖化とは関係のない自然変動であってもおかしくない。なぜこう言うかは、以下の図を見れば分かる。

1980年頃から後だけ見れば、日本の年降水量自体が増えている。大雨が増えてもおかしくない。ところが、1950年代を見れば、いまと同じぐらいの雨量になっていて、この頃は、大雨の頻度も大きかった。
大雨が増えることには、クラウジウス・クラペイロン関係が寄与している可能性はあるが、それによる雨量の増大があったとしても1℃あたり6%程度に留まる。1980年以降に大雨の頻度が大きく増大しているならば、それは大半が自然変動であろう。
なおIPCCにおいても、大雨については人為的な影響は無かったか、有ったとしても自然変動の誤差の内である、とまとめててある。詳しくは拙著「データが語る気候変動問題のホントとウソ」を参照されたい。
問題点②:都合の悪いデータを隠す
「1980年以降の大雨」という、地球温暖化との関連があるかどうかもよく分からないデータについてはやたら詳しく載せた上で、台風についての記述はさらっとしている。頻発化も激甚化していないからだ。

しかし、台風が激甚化していない、というのはきわめて重要な情報だ。そして、以前の「レポート」では、そのようなデータははっきり示されていた(図中、「強い」以上とは、瞬間風速33メートル以上であることを指す)。
ところがこの大事な図が、2019年以降は掲載されなくなってしまった。台風が激甚化していないならしていないで、そのことを正確に読者に伝えるのがこのレポートの役目なのではないか?
やたらと気候危機を煽り立てるようなデータばかり見せて、気候危機説にそぐわないデータを隠してしまうというのは、不適切である。
問題点③:観測とシミュレーションの混同
レポートの冒頭で紙幅を割いて紹介されているのは石川県能登の大雨に関する「イベント・アトリビューション」の研究結果である。「詳細はクリック」を押すと、地球温暖化によって雨量が15%増加した、と書いてある。


しかしこれは、このレポートが本来実施すべき「観測・監視」ではない。シミュレーションの結果に過ぎない。「観測・監視」と混同した書き方は誤りである。そしてこのイベントアトリビューションという方法論には問題点が幾つもある。ここでは詳しくは書かないが、拙著「データが語る気候変動問題のホントとウソ」を参照されたい。
この研究について、特に1点だけ、問題を挙げるとすれば、雨量増加には海水温上昇が影響しているとのことであるが、いったいシミュレーションで海水温上昇を正確に表現できているのだろうか。多くの気候モデルの結果を利用したということであるが、大半の気候モデルは、過去の地球の海水温上昇が現実の倍ほどのスピードになっている。
この程度の再現性しかないモデルによるシミュレーションの結果を、観測データとごちゃまぜにして報告するのは、どう考えても誤りだ。
気象庁は、日々の気象を観測し、予報や警報を出すといった重要な仕事がある。そしてそれは、厳密な科学的手法に則って行うべきだ。気候危機説に迎合するために、誤解を招くデータを多く提示したり、都合の悪いデータを隠したり、シミュレーションと観測を混同して報告することは止めるべきだ。
トランプ米大統領は、「科学のゴールドスタンダードを復活」させる大統領令を出した。対象となった重要な機関の1つが、米国版の気象庁であるNOAAだ。NOAAも、本来の業務を逸脱して、気候危機説に迎合する活動をしてきたことが問題視されている。
■
関連記事
-
(前回:再生可能エネルギーの出力制御はなぜ必要か②) 送電線を増強すれば再生可能エネルギーを拡大できるのか 「同時同量」という言葉は一般にも定着していると思うが、これはコンマ何秒から年単位までのあらゆる時間軸で発電量と需
-
大寒波が来ているので、暑くなる話題を一つ。 2022年3月から4月にかけてインドとパキスタンを熱波が襲った。英国ガーディアン紙の見出しは、「インドの殺人的な熱波は気候危機によって30倍も起こりやすくなった(The hea
-
先日、フロリダ州がCDPとSBTiを気候カルテルに指定し調査を開始した件を紹介しました。 フロリダ州がCDPとSBTiを気候カルテルと指摘し召喚 ジェームズ・ウスマイヤー司法長官は本日、CDP(旧カーボンディスクロージャ
-
1. COP28開催 COP28がUAEのドバイで始まった。今年の会議で、化石燃料の未来に加えて大きな問題となっているのは「損害と損傷」であるが、10月21日の予備会合では成果もなく終わっている。 COPでは、毎回多くの
-
ジャーナリスト 明林 更奈 風車が与える国防上の脅威 今日本では、全国各地で風力発電のための風車建設が増加している。しかしこれらが、日本の安全保障に影響を及ぼす懸念が浮上しており、防衛省がその対応に苦慮し始めているという
-
政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、「2030年CO2排出46%削減」という目標を決めましたが、それにはたくさんお金がかかります。なぜこんな目標を決めたんでしょうか。 Q1. カーボンニュートラルって何です
-
東京大学大学院情報学環准教授/東日本大震災・原子力災害伝承館上級研究員 開沼 博 3.11以来、処分方針が定まらず棚上げされてきたいわゆる「処理水」(東京電力福島第一原子力発電所で発生した汚染水を多核種除去設備等で処理し
-
2024年6月に米国下院司法委員会がGFANZ、NZBAなど金融機関による脱炭素連合を「気候カルテル」「独禁法違反」と指摘して以来、わずか1年でほとんどの組織が瓦解しました。 今年に入って、7月にフロリダ州司法長官がSB
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間


















