コメ代が下がっても再エネの負担爆増で家計は炎上する

Golden Sikorka/iStock
令和の米騒動が勃発し、参院選でも重要争点になりそうだ。
コメの価格は生活に直結するから、国民が敏感になることは理解できる。
ところで、日本国民はコメを年間に何円買っているか。総務省家計調査によれば、世帯あたりのコメの購入代金は年間27196円だった。これに世帯数5622万を掛けると、総額は1.5兆円となる(数値はいずれも2024年)。
これは確かに大きいが、同じ家計に直結する光熱費に起きていることに比べると、桁違いに小さい。図を用いて説明しよう。
火力や原子力に比べて割高である再エネを推進する費用として、電気代に上乗せされて徴収されている「再エネ賦課金」は年間2.7兆円に上る。これは、家計と企業の両方が負担するが、企業が負担するということは、結局、物価高や給料減となって家計が負担する。
いま小泉大臣は米の値段を大幅に下げるとしているが、それよりも、「再エネ最優先」というエネルギー政策を止めて、この再エネ賦課金を無くす方が、はるかに家計に対して効果がある。
だが政府は、ますます再エネにのめり込むという、真逆のことをやっている。
この5月に、脱炭素を推進する「改正グリーントランスフォーメーション(GX)推進法」が衆参両院でほぼオール与党(自民、公明、立憲民主、維新、国民民主など)によって可決された。
この法の下、政府は、今後10年間で150兆円、つまり年間15兆円の官民のGX投資を規制と支援(=補助金)によって引き起こす、としている。投資というと聞こえはよいが、原資は国民が負担する。国民にとって儲かる投資ならよいが、コストのかかる再エネなどに投資しても、儲かるはずがない。
そして、日本政府は2030年には2013年比でのCO2排出量を46%削減するとしている。このためには、年間約30兆円のGDP損失が生じる、と経済産業省系の研究機関RITEでは試算している(資料p8)。GDPとは、国民の所得の合計だから、それだけ、国民の所得が減少することになる。
政府は、コメ価格の引き下げに続いて、光熱費の引き下げにも真剣に取り組んでほしい。
そして各党には、参院選に向けて、光熱費についての真剣な論戦を期待したい。累計12兆円の電気代・ガソリン代補助金は、右から左にお金を移すだけで、問題の根本的な解決からは程遠かった。
いまの日本はオール与党状態で、コメ代を遥かに凌駕する莫大な国民負担のかかる再エネ最優先政策に邁進しているが、これは異様な光景である。
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