米国11州による気候カルテル訴訟が本格化

Khanchit Khirisutchalual/iStock
筆者は昨年からたびたびESG投資を巡る気候カルテルについて指摘してきました。
- 米下院司法委が大手金融機関と左翼活動家の気候カルテルを暴く
- 気候カルテルの構図はまるで下請け孫請けいじめ
- 気候カルテルは司法委員会の調査から逃げ回る
- 「ESGに取り組まないと資金調達ができない」はフェイクだと米下院が暴露
- 気候カルテルの中にもいる頓馬さん
きっかけは2024年6月に米下院司法委員会が公表した報告書でした。上で紹介した通り、この報告書の中身はESG投資を巡るカルテル、共謀、独占禁止法違反などを指摘するものでした。具体的な組織名としてCA100+、GFANZ、ブラックロック、ステート・ストリート、バンガードなどが挙がっており、当局から「左翼活動家」「過激な犯罪者」などと呼ばれ企業や米国市民の敵だと指弾されています。
さて、昨年10月に書いた筆者の個人ブログでは以下のように指摘していました。
11月の大統領選でトランプさんが返り咲いたら動き出すかもしれない重要な内容なのに、日本語のメディアで報じられないので産業界で全く知られていません。メディアの報じない自由によって日本企業の意思決定が歪められています。
ついに、気候カルテルに対する大規模訴訟が動き出すようです。テキサス州ほか米国10州によって昨年11月に提訴されていたのですが、いよいよ本格化します。いまだにESG投資が世界の潮流などと言っている日本の産業界こそ注視すべき動向なのですが、相変わらず日本語メディアではまったく報じられていません。
ブラックロック、ステート・ストリート、バンガードの3社によるエネルギー市場操作の違法共謀罪で有罪判決
ケン・パクストン司法長官は、ブラックロック、ステート・ストリート、バンガードに対し、反競争的取引慣行を通じて石炭市場を人為的に操作しようと共謀したとして、大きな勝利を収めました。連邦地方裁判所の判事は、これらの資産運用会社による訴訟棄却申し立てを却下しました。これにより、訴訟はテキサス州および連邦反トラスト法、ならびにテキサス州の消費者保護法に基づき継続されます。
「ブラックロック、ステート・ストリート、そしてバンガードという、世界で最も強力な3つの金融企業が、投資カルテルを結成し、国内のエネルギー市場を違法に支配し、勤勉なアメリカ国民からより多くの金を搾り取ってきました」とパクストン司法長官は述べた。「本日の勝利は、彼らに責任を負わせるための大きな一歩です。私は、この違法な陰謀からテキサス州を守り、アメリカのエネルギー自立を守るために、引き続き闘っていきます。」
2024年11月、パクストン司法長官は、資産運用会社3社が石炭市場への影響力を利用して自社株を武器に、石炭会社に対し2030年までに石炭生産量を半減させるという「グリーンエネルギー」目標への対応を迫ったとして、訴訟を起こした。意図的かつ人為的な供給削減によって価格が上昇し、投資会社はアメリカの家庭の電気料金を引き上げることで莫大な収益を得ることができた。この共謀は、反競争的スキームや欺瞞的な取引慣行を禁じる複数の州法および連邦法に違反する。2025年5月、トランプ政権は、資産運用会社に責任を負わせようとするパクストン司法長官の取り組み を支援する法的措置を講じた。
(ケン・パクストン テキサス州司法長官事務所2025年8月1日 | プレスリリース)
海外のメディアではたくさん報じられており大騒ぎのようです。その中から一つだけご紹介します。この記事の最後のブラックロックのコメントは噴飯ものですね。典型的な「おまいう」です。
ブラックロックは次のように付け加えた。
「強制的なダイベストメントを追求することにより、司法長官たちはアメリカのエネルギー自立というトランプ政権の目標を損なっています。ダイベストメントを強制することは、石炭会社が資本にアクセスし、事業や雇用に投資する能力を損なうことになり、結果としてアメリカ国民にとってエネルギー価格の上昇につながる可能性があります。」
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