ドイツ公共放送が報じた『高市首相=ウルトラ保守』の違和感

nisara Tangtrakul/iStock
2月8日の総選挙で、高市首相率いる自民党が歴史的な大勝を遂げた。ドイツの公共第2放送は、その夜(ドイツは8時間遅れなので、この時点で選挙結果はほぼ分かっていた)、7時の全国ニュースでそれをどう報道したか?
アナウンサーは眉間にしわを寄せ、事務的に高市大勝を報じたあと、「有権者は、国防強化と厳しい難民政策を進めようとする高市の国家主義的なコースを支持した」と深刻な懸念を匂わせた。そして、たったの23秒で高市ニュースは終わった。
この日はオリンピックのせいでニュース枠に時間の余裕がなかったことは理解できる。しかし一方で、ドイツではまるで盛んでないアメリカンフットボールの祭典、米国のスーパーボウルには、2分32秒もの時間が割かれていた。
その理由は、試合の休憩の間に挟まれる恒例のハーフタイムショーのメインゲスト、バッド・バニー。26年のグラミー賞で3冠に輝いたラッパーが、こともあろうにショーの最後をトランプ大統領の移民政策への抗議メッセージで締めくくったからだ。それを“woke”に凝り固まったバニーのファンや、メディアを含む反トランプ陣営が絶賛したことは言うまでもない。そして、やはりトランプ嫌いのドイツメディアもそこに乗っかった。
ただ、その後の報道によれば、バッド・バニー(プエルトリコ出身)は常にスペイン語で歌うが、その歌詞は過激なスラングであり、さらに、彼が怒鳴ったり、ささやいたりするため、スペイン語のネイティブでさえ大半はほとんど理解不能だという。しかし、理解したらしたで、今度はそれを後悔するほど下品で卑猥で女性蔑視の内容だというから、“woke”界隈の人たちの信条とは本来なら合わないはずだ。まあ、そこら辺のファン心理は私には分からないが。
今回、トランプ大統領はスーパーボウルを訪れず、ハーフタイムショーについて「最悪」「米国への侮辱」というコメントを発していたが、これは単なる悪口ではないかもしれない。
さて、話を日本の総選挙の報道に戻す。8日、第2放送のニュースの1時間後、8時には第1放送の全国ニュースが流れた。ちなみにドイツでは、この2種類の公共放送のどちらかを毎日見れば、一応、世界の出来事は把握できるはずと思って(実際にそれは間違っていない)、必ず見ている人が多い。そしてこの日、やはりスーパーボウルのハーフタイムショーについては長々と報じられたが、なんと高市ニュースは完全にスルー! これには驚いた。
日本は曲がりなりにもドイツと世界第3位を競う経済大国だ。いくら下降気味で、また地理的に遠いとはいえ、総選挙も無視、前代未聞の高支持率の政府が誕生しようとしていることも無視、しかも、ひょっとするとその政府が今後の世界政治に何らかの影響をもたらすことになるかもしれないというのに、世界の重要事項が取り上げられるはずのメインの時間帯のニュースで、それらがすべて無視されたのには恐れ入った。
その後、翌日の8時にはようやく1日遅れで報じられたものの、まず、そこで高市首相は「ウルトラ保守(Ultrakonservativ)で、第2次世界大戦についての公式見解に懐疑的で、同性婚を否定している」人物として紹介された。はたしてこれが正しい高市像なのか? 「ウルトラ保守」というのは、極右という言葉を回避しているだけで、この場合、ほぼ極右と同義語だ。
そしてそのあとは、戦艦上にトランプ大統領と並び、手を振りながらピョンピョンしているシーンが映し出され、「彼女は軍事費を早急に引き上げると言っているため、同盟者(もちろんトランプ大統領のこと)に気に入られている」とのコメント。ドイツの主要メディアが日本を嫌いだということには、私は20年も前から気づいていたが、今回はその嫌いな国の首相が、さらに嫌いなトランプ大統領とうまくやっているから、より一層気に入らないのだろう。
これらは、ドイツの公共メディアが日本メディアの書きぶりをそのまま報道しただけなのかもしれないが、何も知らないドイツ人がこれらのニュースに接すれば、日本は国を挙げて危険な軍国主義化に舵を切ったと思うかもしれない。日本で熱心にそういう分析を発信している人たちは、日本のイメージを「かつてのアジアの侵略者の復活」というところに持っていきたい国の人たちに格好の攻撃材料を与えていることになるが、それでいいのだろうか?
そういえば、2022年10月にメローニ氏がイタリア首相に就任した時、ドイツメディアは氏を極右と決めつけ、イタリアがファシズムに陥ると言わんばかりだったことを思い出すが、高市氏に対しても早くも印象操作やネガティブ・キャンペーンが開始されたと感じる。ただ、メローニ氏は今やEUの重鎮の1人にのし上がっているから、氏の開花ぶりを冷静に見れば、今、高市氏があたかも極右のような言われ方をしているのは、案外縁起の良いことかもしれない。
高市政権に関しては、一体この先どのように発展していくのか未知数の部分は多い。左派でないことは確かだが、だからといってそれほど右派であるとも、私には思えない。自民党の内部には高市首相の足を引っ張る政治家は山ほどいるだろうから、今後、公約がスイスイ実現されることもないだろう。ヘタをするとドイツのように、与党内の抗争で何も進まなくなる危険さえある。その時、「裏切られた」「失望した」と言って、まず支持者の第1陣が去っていくだろうから、正念場はそのあとだ。
左でないものにはすべて極右の烙印を押したがるドイツと日本のメディアだが、しかし彼らが見落としているものが一つある。国民はもう、主要メディアのキャンペーンなどには動かされないのだ。高市内閣を選んだ国民は、厳しい目でその政治を見続けながらも、一致団結で氏を応援している。日本の税金が本当に日本人のために使われるように、最強の内閣はこの千載一遇のチャンスを絶対に無駄にしないでほしいと心から願う。
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