電力値上げ6社目、中部電力の申請を分析=原発停止の影響を見る
東日本大震災による東京電力・福島第一原子力発電所の事故の煽りを受けて、日本の全ての原子力発電所が定期検査などの後に再稼働できない“塩漬け”状態が続いている。
それによる火力発電の増加に伴う追加燃料費の購入量の激増により、電気料金値上げに至ったのは既に6社。今日の「物価問題に関する関係閣僚会議」を経て、経済産業省は新たに中部電力の電気料金値上げを認可した。
申請内容は下の資料1の通り。東京電力以外の電力会社は、中部電力も含めて事故を起こしたわけでもないのに、原子力発電所の再稼働ができない。人件費などで大幅な費用圧縮を強いられていることには同情を禁じ得ない。
下の資料2のような査定の結果、家庭用など規制部門は3・77%の値上げ、産業用など自由化部門は7.21%の値上げとなる。
原価構成のうち、最重要なのは燃料費である。資料2にあるように、LNGについて、「原価算定期間中に価格改定される契約で最も安価なものと北米の天然ガス価格にリンクした価格を併用」とある。この査定方針は他の電力6社の値上げ認可の査定方針と同じような内容。非常に楽観的だが、今はこうした方針にならざるを得ない。
忘れてはならなのが、浜岡原子力発電所の動向に関して。下の概要資料には記載されていないが、詳細な査定方針では、「安全を確保しつつ地元の理解を前提として、原価算定期間において、浜岡原子力発電所3号機が平成29年(2017年)1月、同4号機が平成28年(2016年)1月から再稼働されることを仮定している」と記述されている。
浜岡原子力発電所では、1号機と2号機は廃炉が決定しているが、3号機(1987年~、110万kW)・4号機(1993年~、113・7kW)・5号機(2005年~、138万kW)は稼働可能だ。
この査定方針を見るに、3号機と4号機の“塩漬け”状態は今しばらく続く見込みだ。5号機に至っては、見通しすら立てられていない。中部電力管内でも、化石燃料代が徒らに国外逃避する事態はまだまだ続くことになる。
いつまでもこんなことを続けるべきではない。浜岡原子力発電所も含め、原子力発電再開に関する政府による英断が即刻必要である。

(2014年4月21日掲載)

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