福島事故の放射線影響に関する国連科学委員会報告書

2017年11月08日 19:30

(GEPR編集部から)国連科学委員会がまとめた、「東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響に関するUNSCEAR2013年報告書刊行後の進展」の要約を以下に転載します。

要約

本要約は、第72回国連総会に提出された放射線の影響に関する国連科学委員会による国連総会報告書に基づくものである。

本委員会は、第64回年次会合(2017年5月29日~6月2日)において、2013年の第68回国連総会に提出された報告書およびそれを支持する詳細な科学的附属書に示されている、2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくと影響の評価を見返した。報告書では、全般的に線量は低く、それゆえ関連リスクも低いであろうと結論づけていた。原子力事故からの放射線被ばくに起因する可能性がある福島県の成人のがん発生率について、認識可能な増加は予測されなかった。しかしながら、報告書において本委員会は、福島県においては事故後の甲状腺への吸収線量がかなり低かったため、チェルノブイリでの事故後のような多数の放射線誘発甲状腺がん発生の可能性を考慮しなくともよいだろうが、放射線に最も被ばくした小児の間で甲状腺がんリスクの増加が理論的に推測し得る可能性があることを認識していた。出生時の障害や遺伝性疾患の発生について識別できるほどの増加は予測されず、また、がん発生率についての通常の統計変動に対してわずかな増加を確認することは困難であるため、被ばくによる作業者のがん発生率の増加は認識できないだろうという結論に至っていた。陸域および海域の生態系への影響は、一過的かつ局所的となるであろうと予測された。

評価の後、本委員会は、追加の関連情報が公表され次第、それらを遅滞なく把握できるようにフォローアップ活動を実施する仕組みを整えた。第70回および第71回国連総会にそれぞれ提出された本委員会の第62回および第63回年次会合報告書には、各年の当該時点までに実施されたフォローアップ活動によって得た知見が含まれていた。

本委員会は、2016年末までに利用可能となっていたさらなる情報の特定を続け、2013年報告書への影響を評価するために、関連する新規文献のレビューを体系的に実施した。これらの新規文献の大部分は、本委員会の2013年報告書の主な仮定および知見を改めて確認するものであった。2013 年報告書の主要な知見に実質的に影響を及ぼしたり、主な仮定に異議を唱えたりする文献はなかった。いくつかの文献については、さらなる解析や研究の追加によって、より確実な証拠を得ることが必要であると判断された。本委員会は、資料のレビューに基づき、現時点で2013年報告書の評価や結論に何ら変更を加える必要はないと判断した。しかしながら、本委員会が特定したいくつかの研究ニーズについては、まだ科学界において完全には取り扱われていなかった。

本委員会は、英語の非売品刊行物として知見をウェブサイト上で電子的に発行することを要請するとともに、利用できる資源に制限はあるであろうが、日本語でも公表することを促進した。

「東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響に関するUNSCEAR2013年報告書刊行後の進展」(PDFファイル: 約1.7MB)

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