「30年代に原発ゼロ」を決めた「革新的エネルギー・環境戦略」の要旨
政府は内閣府に置かれたエネルギー・環境会議で9月14日、「2030年代に原発の稼動をゼロ」を目指す新政策「革新的エネルギー・環境戦略」をまとめた。要旨は以下の通り。
野田佳彦首相は「困難でも課題を先送りすることはできない」と述べる一方、「あまりに確定的なことを決めてしまうのは無責任」とも語り、見直しをする可能性も示唆しているが、問題だらけの文章だ。相互の政策が矛盾し、実現可能性を検証していない。
(参照・「支離滅裂な「革新的エネルギー・環境戦略」」アゴラ研究所 池田信夫所長)
政府の革新的エネルギー・環境政策は以下3つの柱を置く。
- 「原発に依存しない社会」の一日も早い実現。2030年代に原発ゼロを目指す。
- 「グリーンエネルギー革命」の実現として再生可能エネルギーの普及。
- エネルギーの安定供給。そのための火力の効率化、省エネ、次世代エネルギーの確保。
原子力発電については以下の原則で運営するという。
- 40年運転制限制を厳格に適用する。
- 原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ、再稼働とする
- 原発の新設・増設は行わない。
また他のエネルギーの確保の手段として、次の指針も定めた。
- 30年までに1割以上の節電、再生可能エネルギーを3倍にする。こうした工程表を年末までにまとめる。
- 電力システム改革の方法について年末をめどにつくる。
- 30年時点の温室効果ガスの排出量は90年比で2割減を目指す。
- 使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策は維持。
その他
- 内閣府の原子力委員会を、廃止を含めて見直し。
- 原発廃炉などに必要なため、技術の維持と人材の確保を行う。
- 高速増殖炉の「もんじゅ」は維持。ただし研究計画と成果を検証。
- 青森県に再処理関連施設が集まっているが、そこを使用済み核燃料と核廃棄物の最終処理地にしない。
GEPRの参考情報
アゴラ研究所 池田信夫所長
「エネルギーの本当のコスト」
GEPR編集部
「現実的な「原子力ゼロ」シナリオの検討−石炭・LNGシフトの困難な道のり」
GEPR編集部
「間違った情報で日本のエネルギーの未来を決めるのか?=「エネルギー・環境会議」選択肢への疑問 ― 誤った推定、経済的悪影響への懸念など試算は問題だらけ」
(2012年9月18日掲載)

関連記事
-
過激派組織IS=イスラミックステートは、なぜ活動を続けられるのか。今月のパリでのテロ事件、先月のロシア旅客機の爆破、そして中東の支配地域での残虐行為など、異常な行動が広がるのを見て、誰もが不思議に思うだろう。その背景には潤沢な石油による資金獲得がある。
-
1992年にブラジルのリオデジャネイロで行われた「国連環境開発会議(地球サミット)」は世界各国の首脳が集まり、「環境と開発に関するリオ宣言」を採択。今回の「リオ+20」は、その20周年を期に、フォローアップを目的として国連が実施したもの。
-
田中 雄三 国際エネルギー機関(IEA)が公表した、世界のCO2排出量を実質ゼロとするIEAロードマップ(以下IEA-NZEと略)は高い関心を集めています。しかし、必要なのは世界のロードマップではなく、日本のロードマップ
-
前回、改正省エネ法やカーボンクレジット市場開設、東京都のとんでもない条例改正案などによって企業が炭素クレジットによるカーボンオフセットを強制される地盤ができつつあり、2023年がグリーンウォッシュ元年になるかもしれないこ
-
GEPRを運営するアゴラ研究所は毎週金曜日9時から、アゴラチャンネル でニコニコ生放送を通じたネットテレビ放送を行っています。2月22日には、元経産省の石川和男氏を招き、現在のエネルギー政策について、池田信夫アゴラ研究所所長との間での対談をお届けしました。
-
小泉元首相の講演の内容がハフィントンポストに出ている。この問題は、これまで最初から立場が決まっていることが多かったが、彼はまじめに勉強した結果、意見を変えたらしい。それなりに筋は通っているが、ほとんどはよくある錯覚だ。彼は再生可能エネルギーに希望を託しているようだが、「直感の人」だから数字に弱い。
-
少し旧聞となるが、事故から4年目を迎えるこの3月11日に、原子力規制庁において、田中俊一原子力規制委員会委員長の訓示が行われた。
-
小泉純一郎元総理(以下、小泉氏)は脱原発に関する発言を続けている。読んでみて驚いた。発言内容はいとも単純で同じことの繰り返しだ。さらに工学者として原子力に向き合ってきた筆者にとって、一見すると正しそうに見えるが、冷静に考えれば間違っていることに気づく内容だ。
動画
アクセスランキング
- 24時間
- 週間
- 月間